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クサギの花

昔の金鉱山跡を探していたら、坑道の近くでクサギ(臭木)の花が咲いているのを見つけた。クサギは日本全国のどこでも見られるありふれた低木である。現代の分類法ではシソ科クサギ属に入れられている。気の毒な名前の通り、葉に独特の臭いがある。しかし、長いおしべを突き出している花は、甘い香りがして意外に美しい。よく大型のチョウやガが訪れている。


秋に熟する果実はもっと美しくて、赤い萼の上に藍色の丸い液果を乗せている。赤とブルーの対比が美しい。この実は染料になり、これで絹糸を染めると鮮やかな空色になるらしい。以前、草木染をやっている友人から大量に集めて欲しいと頼まれたが、なにせ高い枝先に実っているものだから希望に沿うことはできなかった。

面白いのは、クサギの臭いに対する反応である。僕は植物観察会などで、参加者に黙って臭いを嗅がせる。すると、高年齢になるほど顔をしかめて「嫌な臭いだ」という。しかし、若い人は「香ばしい」と言って、それほどキライではないという。一度、外国人のグループに嗅いでもらったら、全員が嫌ではないと言っていた。この違いは食生活の違いからくるのかもしれない。香辛料やハーブ類と日常的に接している人々にとってはクサギの独特な臭さは気にならないのだろう。今度、クサギと出会ったら、自分はどちらに属するか試してほしい(笑)。


ところで、
ついに探していた金鉱山跡は見つかった。これは約400年前の天正年間に、佐竹義宣が豊臣秀吉の命を受けて領地内で金を採掘した坑道跡である。

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