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ハスの花

茨城県は、レンコンの生産量が日本一である。霞ヶ浦に近づくにつれ次第にハス田があちこちに目立つようになり、湖畔近くになると見渡す限り一面のハス田が広がる。夏、今頃は花の季節。白やピンクの花や蕾が、濃緑の大きな葉の間から首をもたげている。時折吹く風が葉をそよがせて、葉裏の薄緑色をチラリとのぞかせる。

白い花が多い

ハスは、魅力的で神秘的な植物である。原産地はインド亜大陸とその周辺で、それが中国を経由して日本に帰化した。ハスの葉が濡れないのは葉にミクロの突起があって水滴との接触面を小さくしていて、突起の間の空気がクッションになって葉の表面と接するのを防いでいるからである。中国の成句に「蓮は泥より出でて泥に染まらず」」というのがあるが、古代インドでも「聖なる植物」であり、「世俗の欲にまみれず清らかに生きる」ことの象徴だった。その思想がヒンドゥー教そして仏教にも引き継がれて仏の象徴となり極楽浄土に咲く花となった。こうした先入観があるせいか、ハスの花をじっと見つめていると高貴な感じがしないでもない。

よく世間で早朝にハスの花が咲くときに、「ポン」と音がすると言う。大きな固く締まった蕾が朝日を浴びて、あちこちで「ポン、ポン」と弾けるように開くと言われる。これは、いかにも事実のように聞こえるが、今日、それが思い込みだと判った。僕がカメラを持って近づいたら、カエルが水に飛び込んだかドジョウが水面で跳ねて、あちこちで「ポン、ピシャ」と音がするのだ。蕾の開く音はカエルが飛び込む水音なのだと思う。でも確かに、ハスの蕾にはそう信じさせるだけの迫力がある。

先に、ハスは「聖なる植物」の象徴とされてきたと書いたが、では、「態度や動作が下品で慎みがなく、また浮気で色めいた淫らな女性」のことを「蓮っ葉」というのはどうしてだろうかと思って調べたら、お盆に使う蓮の葉を売って歩く商人を「蓮葉商い」と呼んで、短い期間に役に立たないものを売る商人という意味から転じて、客のために一時的に接待させる女性のことを「蓮葉女」と呼んだことから始まったらしいと判った。僕は、てっきり少しの風でもユラリユラリと大きな葉をなびかせ、時折、葉裏をチラリと見せるからだと思った。(俗まみれの発想でごめんなさい)

しかし、古代インドではハスは高貴な女性の象徴で、その最高位は「蓮女(パドミニ)」と呼ばれた。ヒンドゥー教では、最高位の女神として「蓮女」のラクシュミーが崇拝されている。
やはりハスは聖なる女性だったのだ。


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