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ヤツデ

これまでヤツデ(ウコギ科)を誤解していた。この木は、大きく広がっている葉の形が面白いものの、日陰のジメジメしたところにひっそりと生えている脇役だと思っていた。いわば日陰者の木だと。
しかし、今朝、その思わぬ美しさに気が付いた。まだ、夜の暗さが残っている部屋で朝のコーヒーを飲んでいたら、窓辺のヤツデの葉が美しく輝いている。今春に出たばかりの若葉に朝日が当たって、葉の裏側に抜けた光がみずみずしい緑を放っていた。

ヤツデの魅力は葉ばかりでない、晩秋から冬の初にかけて咲く花も味わい深い。花が少ないこの時期に濃い緑色の葉の中で白い塊になって咲く花はよく目立つ。これから冬を迎える昆虫にとっては、これが蜜を集められる最後のチャンスなのだから必死だ。天気の良い日の朝などは、多くのミツバチやハナアブなどが訪れて、花の周りを飛び回ったり花の中に潜ったりと忙しい。僕は子供の頃から、その様子を眺めるのが好きだった。生き物が徐々に姿を消していくこの季節でも、まだ活発に動き回っている昆虫たちがいるのを知って安心した。

ヤツデは、漢字で「八つ手」であるが、八枚の切れ込みのあるものは無い。3、7、9と奇数である。九裂のものが一番多い。「八つ」とは、単に「多数」で「縁起が良い」という意味だろう。今度、公園などで見かけたら数えてみて欲しい。


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