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アビス

もう何年になるだろうか。小屋の中に緑が欲しくて、テーブルの上でアビスを育てている。一年を通して瑞々しい緑の大きな葉を広げている。
 アビスというのは、常緑多年草の着生シダ「シマオオタニワタリ」の園芸種である。シダであるから小屋の中のような半日陰でも良く育つ。でも、故郷が東南アジアであるから寒さに弱い。熱帯雨林の深い森の中、樹上の窪みなどに着生している。

 四季の無い熱帯が故郷だからだろうか。この冬の最中だというのに、初々しい緑の新葉が首を上げていた。

 シダ類の芽は地表を破って出てきた古代の動物を連想させる。毛むくじゃらだとなおのことそう思う。原始的な生命が植物の形をまとって出現したように感じる。それが僕を強く惹きつける。

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