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ハロルド作石/7人のシェイクスピア(5)

理不尽が本巻のテーマだ。
というわけではないのだけれど、
幾つもの理不尽が主人公を襲う。
真摯に生きていようと、
自堕落に生きていようと、
そうしたこととは関係なく、
他者の思惑は他者の論理で動く。
そのターゲットとなってしまえば、
あっさりその手中に落ちる。
手練手管の曲者の当たれば、
何も知らない少年なんてあっけないものだ。

スケープゴートが必要な場合もある。
何かを収めるため、
違う何かに視点を向けるため、
生贄が必要となる場合もある。
こちらも同じくそのターゲットになれば、
もう抜け出すことはできない。
組織や権力によって張り巡らされる罠は、
どんな抜け道もない。
地獄までまっしぐらだ。
注意深く生きていても、時に理不尽は襲い掛かる。
首を垂れよの教えは、
他者の嫉妬や意地悪の対象にならないためといえる。

シェイクスピアは見事にその罠にはまる。
理不尽の網に囚われ、
もがいてももがく分だけ絡みつくだけだ。
身体と心の自由が奪われ、絶望の淵に立つ。
このマイナスの地平から、絶体絶命の場所から、
いかにしてシェイクスピアは
シェイクスピア成り得るのか。
地獄で何を得るのか。

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