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葉室麟/潮鳴り

羽根藩シリーズの2作目。
1作目「蜩ノ記」は「隠密の花」がテーマ。
表舞台ではなく、誰にも評価されぬ、
それどころか無実の罪にて切腹が決まった中で、
誠実に清廉に生きる男の姿を描く。
対して2作目は「落花を咲かす」がテーマ。

一度落ちた花は、咲くことがない。
それでも、もう一度咲かそうという物語。
人生をやり直す、再起を果たすことは可能なのか。
人は挫折から立ち直ることができるのか。
堕ちるところまで墜ち、ボロボロとなっても、
そこから這い上がることが出来る。
そんな強いメッセージを感じる。

もちろん簡単ではない。
自分だけでなく、他者にも認めさせる必要もある。
信頼を失った者が、それを取り戻すのは至難の業。むしろ周囲は足を引っ張ろうとする。
引っ張られても仕方ない過去もある。
それでも変わろうと思えば変われる。
困難に立ち向かい、
どんなに笑われようとも自分を貫き続ける。
そうすれば、ひとつずつ変わっていく。
いくしか味方になる者も出て来る。

正直者が報われ、悪は討たれる。
その陰で犠牲となる者が出る。
正義の途上で、舞台を去る者もいる。
その哀しみの上に、花は咲く。
最後まで諦めなければ、いつか叶う。
そう信じたい。

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