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小野一起/よこどり 小説メガバンク人事抗争

大銀行の人事抗争の物語。
騙したり騙されたり、
組織を思うが儘に振り回したかと思えば、
あっさり組織に切られる。
野心、野望、嫉妬、プライド・・・
どろどろした情念が渦巻く。
最後の一人になるまで勝ち続けるのは難しい、
そう分かっているのに、
なぜだか男は出世物語が好きだ。
権力を思いのままにしたいという欲望が、
どこかにあるのだろう。

では、一体勝ったのは誰だろうか。
権力を手に入れたとしても、
絶えずその座を追われることを恐れ、
あらゆる手を尽くす必要がある。
いつ追い落とされるか分からない、
不安に駆られる。
誰もが信じられず、
頂きに登るほど孤独は深まる。
勝者なき戦い。
なぜ、それを求めるのだろうか。

ある種のゲームなのかもしれない。
人生を賭けた、壮大で長時間にわたるゲーム。
ゲームに一度乗ってしまうと、
途中で降りると挫折感にかられる。
敗北感に包まれる。
いや本当に望んだものでない、
といくら強がっても空虚に響く。

本来は皆が喜ぶゲームなんてない。
それぞれの喜びのポイントは、
それぞれであるはずなのだ。
けれど自分の喜びを見失わないようにするには、
大変な労力がいる。
強い意思と絶え間ない意識がいる。

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