坂井希久子/愛と追憶の泥濘
壮絶、すごい物語だ。
表面的な狂気だけでも、食べ応えがある。
結婚したい主人公は依存度が高い妙齢の女性。
恋人の高スペックな男にはある秘密が・・・。
友人がおらず周囲から浮いてしまう女子高生に、
図書室通学を続ける線の細い男子高生。
やる気のないバツイチの高校教師。
それぞれがそれぞれの欠落を抱える。
お互いが支え合う瞬間もあるけれど、
どこかマウントを取り合う。
自分より下がいる、
その憐みでもって自分を保っている感じ。
嫌だなと思いながら、
そういう部分が自分にもあると思わされる。
でもそれが人間、反省しながらも、
頑張って生きようと前向きになる。
この物語が恐ろしいのは、
そこからもう一皮剥けるところ。
人間の汚い部分弱いところがむき出しになる。
踏み止まっていたぎりぎりのところを失うと、
その醜さはもうカバーのしようがない。
それでも生きていかなくてはいけないのか、
とちょっとした絶望を味わう。
汲汲とそれほどまでに窮屈に、
生きる必要があるのか。
それほどまでにこの世で生きねばならぬのか。
人生の泥濘に落ちず生きることは、
可能なのだろうか。
可能だと思ってもう少し歩いていきたい・・・。
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