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五十嵐貴久/コヨーテの翼

東京オリンピックの開会式は、
1年延期の上、無観客で行われた。
選手にとっても、観客にとっても、
何とも味気なく寂しい開会式となった。
コロナ禍で開催そのものが
危ぶまれたことを考えれば、
それでも行われただけ
まだマシだったのかもしれない。
有観客で開会式が行われていたら、
さぞかし盛り上がったろう。
チケットが当たった人は、
一生の思い出となったことだろう。

その裏でほっと胸をなでおろす人がいたとしたら、
それは警備を担当する人たちかもしれない。
何もなくつつがなく終了することが当たり前。
何かひとつでも問題が起きれば、
その責任を問われる。
世界中の要人が一堂に会した瞬間を、
無粋な振る舞いで盛り下げることなく、
それでいて平穏無事を確実に守り抜く。

オリンピックが予定通り行われていたら、
開会式はテロの標的になっていたかもしれない。
いったん依頼を受ければ、
その契約を絶対に完遂する凄腕のスナイパー。
ターゲットを亡き者とするプロの殺し屋。
攻める者は自由だ。
自分の思う通りの方法、都合の良い時間、
思うがままの対象を選ぶことが可能だ。
相手の出方を見て、
途中で計画を変えることもできる。
一方、守る方は大変。
どこから襲い掛かって来るか分からない敵に備え、
万が一の可能性にも目を光らせる必要がある。
果たして勝つのはどちらか。
スナイパーと警備担当者の戦い。

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