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佐川光晴/駒音高く

棋士を目指す少年少女
そうした息子や娘を持つ親御さん
その頑張りに刺激を受ける大人たち
を主人公にした七つの物語。
それぞれの物語に登場する人物は、
将棋教室の先輩後輩だったり対戦相手だったりと、
時に直接、時に緩やかな関係でつながっている。
それもそのはず、将棋の世界で頂点を目指せば、
皆、行き着くところは同じだからだ。

僕はテニスをやっている、
テニスコートに近づくと、
ボールを打つ音が段々聞こえてくる。
テニスをやる日は、
その音にやる気を掻き立てられる。
偶然、通りかかったときにも、
コートからテニスにかける熱意や想いを
感じて胸が熱くなることがある。

この物語で鳴り響くのは、
将棋盤に駒を指す際の駒音だ。
各地の将棋教室で、道場で、街角で、
そして東京と大阪にある将棋会館で、
今日も駒音が鳴り響く。
将棋をしない人からすれば、
気づかず通り過ぎてしまう場所かもしれない。
でもある人たちにとって、
そこはかけがえのない場所であり、
戦いの場であり、聖地であり、
意味を持った場所になる。
そうした場所を持つ人生は、
立体的だし豊かに思う。

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