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竹内真/図書室のキリギリス

図書館があったのは隣の学区だった。
大人にとってはなんてことない距離だけれど、
子どもにとってはちょっとした距離だ。
自転車に乗って20分くらい。
いつの頃からか忘れたけれど、
週末になると僕は図書館に通うようになった。
はっきりと覚えているのは小学校の高学年、
たぶん2~3年生くらいから通っていたのではないか。
ちょっとした距離が気にならないくらい、
図書館は喜びにあふれた場所だった。

寝っ転がれるスペースで漫画や本を眺めたり、
時には上映される映画や音読会に参加したり。
そして何といっても、たくさんの物語と出会った。
お気に入りの作家さん、
お気に入りのシリーズの棚を回った後も、
面白い本を探して書棚の周りをぐるぐると巡る。
どこにどんな本が置いてあるか、
ほとんど記憶していたから、
本の大きさがデコボコの違う以上に、
僕にとって各書棚は立体的に見えた。
作家さんが描く物語の世界が、
本から吹き出ているような印象。
どこにどんな本があって、
このコーナーはこんな物語たちで、
こっちにはちょっと毛色が違うこんな物語があって、
なんて今でも鮮明に思い出すことができる。

マガーク探偵団シリーズ!
だから作中でそのタイトルが出てきたとき、
僕の頭には子どもの頃通った図書館の姿が蘇った。
黄色を基調とした本の感じ、あの特徴的なイラスト。
作者は1970年代生まれ、なるほど同世代。
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズは、
はらはらドキドキさせられた。
アルセーヌ・ルパンシリーズは、
ちょっと大人になった感じを味わった。
マガーク探偵団シリーズは、
同じくらいの子どもたちが、
日常のちょっとした事件を解決していくんだよな。
小林少年のような完璧さでなくて、
欠点も弱点もある個性的なメンバーが集まり、
それぞれの長所を活かすところもよかった。

他にも本好きにはたまらない逸話が溢れる。
図書館の物語は、やっぱり面白い。

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