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藤谷治/ニコデモ

一人の男の誕生から、
その最期までを描いた壮大な物語。
大河ドラマのシリーズを、
最初から最後まで見終わったようなため息が出る。
男は100歳を超え寿命を全うする。
のほほんと長閑な時代もあれば、
茨の時もやって来る。
華やかな光を浴びて表舞台に立つ時代、
日の当たらない場所で地道に生きる時代も。

光の世界が男の満足をもたらすかと思えば、
そうでもなく、
地道な暮らしが不幸せかというと、
そうでもないのが面白いところだ。
その時々、男はあるがまま、
時に激しく翻弄され、時に自ら道を切り拓き生きる。
どの人生もいい時ばかりでなく悪い時もある。
人生って哀しいものだなあと思わされる。
楽しいものだとも思う。

しかも男はただの男ではない。
音楽の神と悪魔が彼をめぐって覇権を競い、
ある取引を交わすのだ。
とんでもない運命を生き抜いた男。
音楽に愛されるとはいかなることか。
音楽に狂わされるとはどういうことか。
音楽とともに生きるとはと考えさせられる。
僕は音楽をやらないけれど、
音楽は人生を変えてしまう偉大さを持ち、
同時に人生を失わせる魔物でもありうるのだろう。

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