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こざき亜衣/あさひなぐ(19)

戦いの場では、誰もが孤独だ。
ふと迫る背後に谷を感じ、恐怖が宿る。
目の前も谷だ、いつの間にか左も右も深い谷。
逃げ場所はない。
頼りになるのは自分だけ。
同じ場所に相手もいる。
広い世界の中で孤独な二人。
じりじりと追い詰められる。
そんな時、大きな声がかかる。
仲間の声だ。
大丈夫だよ。いつもと同じだよ。
その声が平常に戻してくれる。
独りではないと教えてくれる。

追い詰められて人は真価を発揮する。
自分の実力を出すには、
実力を越えて成長するには、
自分の殻を破る必要がある。
自分が壊れてしまうのではないか、
と思うような経験がいる。
見てみたいような、
見たくないような自分がそこにいる。
むき出しの自分が自分を変える。

仲間が変わる姿は、仲間もまた変える。
伝染するようにチームが変わっていく。
チーム全体が内側から
殻を破ろうと大きく揺する。
ひびが入り亀裂が大きくなり、
それでも割れないこともある。
真っ二つに割るのは、ライバルの存在だ。
にっくき敵、顔を見たくない奴ら、
自分たちの行く手を阻む壁。
でもその壁こそが自分たちを育てる。
激しく揺さぶり殻を破らせる。

個と個、チームとチーム。
そのぶつかり合いが大きなうねりとなる。
胸が激しく打たれる。

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