【毎週ショートショート】題:ルールを知らないオーナメント 7
冬の風鈴か。
このお題、これで足りるだろう。
年の瀬になって、窓際の風鈴を外そうとした時、
「私はオーナメントではございません」
風鈴が鳴った。「どうせ今夜、私をネタにして何か書こうと仰るのでしょう?」
「よく知ってるな」
「というか、あなた様が私をここにお吊るしになった時、予知してた」
リンと鳴る。「きっと大晦日までお忘れになり、外す時、私をネタに『ルールを知らないオーナメント』という題のお話をお書きになることを」
リリンと鳴る。
「どうしてそんなことが?」
「そのくらいの予知、風鈴ならばお茶の子さいさい。だけど私、あなた様がお考えになっているようなお飾りじゃないの。ちゃんと暑気払いのお仕事がございますから」
リリリン。
「今はもう暑くないし、冬だから外しますよ」
「夏が終われば取るのがルールですのに。あなた様こそ――」
「私こそ?」
外すと鳴るのを止めた。
夏が終われば外すのルールを知らなかったわけではないが。
了。
410字
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?