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ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド 〜汚れなき瞳〜

奇しくも新型コロナウィルスの感染拡大時期に重なり公演の大幅縮小の煽りを受けた演劇のひとつである。その時期には数多くの劇場が閉鎖され数多の上演作品が中止や延期または運良く上演にこぎ着けたとしても突然の千穐楽を迎えなければならないまでに追い込まれていた。それは1年経った今も余り変わらない様に思えるのは、もともと演劇に対して関心を持っていない生活を送って来たからその違いに気付けないだけなのだろうか?
劇場やスタッフ始めとするカンパニーは、『新型コロナウィルス』と云う難敵に対して色んな出来得る限りの努力を余すことなく取り組んで来られた様に感じるのに…行政はただ中止や閉鎖を通達するだけで業界に対して歩み寄った話をしてこようとしているようには思えないのは素人の浅はかな思い込みだろうか?二度目の夏を迎える前に次なる一手を討たなければ、演劇界のみ為らず映画界にも第二波が押し寄せている。(2020年を第一波と例えて)最初のつまづきは有ったにしても、日本のエンターテイメント業界は上手くその波を乗りこなして大波をくぐり抜けてきているように思える。当初小さなアングラ劇団などによるクラスターが続き一気に風向きが悪い方向へ変わろうとしていたが、大規模な劇場や劇団による安全面でのアピールや対策の徹底が図られ世間を味方に付ける事に成功した。その間もスタッフやキャストによる感染が伝えられ降板や公演中止など苦しい局面にもオープンに対処して信頼を得て観客も安心して劇場へ戻って来た。
無観客での配信や観客動員数の削減への対応として同時配信まで踏み切ったカンパニーさえ有った。コロナ禍に於いて何が正解なのかはまだ結果は出ていない様だが、あらゆる手立てで観客離れをフォローする工夫が為された。

業界全体で取り組み、提供する側も受ける側も一緒に支え合った一年だったと思える。日本での感染拡大が世界的にみて後発だった事もあって各国の対応を参考にする余裕があったのかもしれない。

演劇界と一言で言っても、地下劇場や公共施設などで行われている小さな劇団や地方巡業を生業とする大衆演劇の一座など…まだ大きな劇団や有名俳優による演劇ほどには復活が叶っていないものもたくさん残されているのではないだろうか?彼らはバイト等で生活費を稼ぎながらエキストラに参加するなど役者の広い世界を支えている数多くの無名の人達がほとんどと思われる。(わたし自身のイメージが昭和過ぎて今どきの事情とは相違があるかもしれません。)お笑い演芸なども似たような環境だと思うのだが?底辺から底上げしてくる力強さを期待するよりも、資金力のある大きな劇団などから世間にアピールして勢いを付けて広く拡散して元気を取り戻す事が真の復活だと思う。それにはやはり、行政から業界への一方通行では無くてこちら側の声も聴いて貰わないと良い方向へは進まないと考える。業界としても各立場での要望も違いが在るだろうから、擦り合わせも必要だろう。それぞれが少しずつ前進出来るようにして行かなければ歯車は上手く噛み合っていかないだろうと思う。富や権力と云うものはこんな時にこそ有効活用して戴きたいものだ。持っているものを出し惜しみせずに是非使って欲しい!弱者を守ると云う事はそういう事だと思う。大きな組織が元気良く回転していかないと下部まで潤滑していかない。適材適所の経済的フォローが為されていけば止まった間の穴埋めが廻っていくと思う。商売をしているとつくづくそう感じる。ただ補助金を出すだけではズル賢い人達が得をするだけで本当に必要な所には届かない。ばら蒔き方にも工夫が必要だ。焼石に水の補助ならばそれを補う何かをコチラからも発信して何故必要なのかを訴えるべきではないだろうか?
新設のシアターのコロナウィルス対策に付いての記事を見掛けた。映画館も新たな取り組みがスタートしている。活動中止に立ち向かえる対策が改めて考えられ始めてるのだ。

観客を守ると云う事が敷いてはスタッフやキャスト…上演作品をも護る事にも繋がるのだと思う。

話しがだいぶん横道に逸れてしまった…(;゜∇゜)

1年2ヶ月前に全国ツアーの始まりであったハズの東京公演が延期により3/20からスタートした…と思った途端、後1日を残しての27日に突然の千穐楽公演!観客の前で一度も披露する事無く解散するカンパニーに比べれば11回でも板に載れただけ良いのかもしれない。(地方公演を含む全54公演中11回上演)昨年の春は初めての試練とも言えるコロナ禍での相次ぐ中止や延期で小さな子役の子どもたちから主演を勤める座長まで、毎日今日のこの舞台の幕が開かないかもしれない…と云う不安と闘いながら暗中模索の日々であったことだろう。それでも、次に控えた舞台の為に心身を研ぎ澄ませ台詞を頭に入れていく。与えられるハズの喝采に、受けられるはずのスタンディングオベーションを心に描いて…
そうやって数多の劇場で限られたカンパニーが、ギリギリの状態で板を踏み続けた結果与えられたのは…不謹慎だと云う言葉と中止するべきだと言う非難の声であった。不要不急の括りに入れられてしまったのだ。一年後その結果、芸能を含むエンタメが不急では無いが不要では無い事を訴える声が思い思いに上げられ始めた。我慢をし過ぎたその先に必要な潤滑油としてのエンターテイメントが高らかに反逆のノロシを上げた。それだけでは無い。自分たちなりの対策を劇場を含むスタッフ、カンパニーで徹底し、観客と自分たちを守る術を提示した。一年前から進歩していないのは監督する行政の方では無いだろうか?感染が拡大する度に口を開けば「不要不急!自粛!」大切な事なのかもしれないが、去年と変わっていないのだ。新たな打開策はそちら側からは提示されている様には思えないのだが?気のせいなのか?そのニュースをチェックしわすれたのだろうか(-_-;)

そしてこの千穐楽の日に語られた座長・三浦春馬の言葉。今となっては有名過ぎるぐらいに、まるで最後の遺言の如く語られている。

たくさんの笑顔と無邪気さをくれて、いつも勇気づけられた、そんな毎日だったなと思います。ありがとう   (まず最初に子ども達へ掛けられた感謝の言葉)
本日は本当にありがとうございました。私ごとですがこの状況になってから、ある公演を見させていただきました。そして僕は、1人の男として、俳優として、このエンターテインメントで生きさせてもらっている人間として、その演劇からもらうエネルギー、元気というものにとても胸が熱くなりました。
(この舞台が後にイリュージョニストの代役を勤められた海宝直人さんの舞台らしいと言われています)

僕はその時に、エンターテインメントというものは、もしかしたらこの状況における一番不必要なものかもしれない、だけどこれから先、みんなに余裕ができて、そしていつの日か、このエンターテインメントが皆さんの気持ちを少しでも軽くするようなお手伝いができたら、そういうことを信じて走っていくべきなんだと思わされました。
モチベーションを保つことがどの産業においても難しい時期なのかもしれません。ですけど、やっぱり僕たちが演劇を信じること……僕はこの産業は、とても血の通った仕事だと自負しています。この血の通った仕事がいつか、皆さんの気持ちを高めてくれるんじゃないかなと信じて、もっともっと、皆さんがエンターテインメントに触れる時に、そのエンタメがもっと質の高いエンタメとして皆さんのもとに届けられるように、僕たちは一生懸命にその日まで色んなスキルを身につけて皆さんに感動をお届けできればいいなと強く思います。
 なので、また会える日を願って、皆さんの健康を、これからの健康を願って、お別れの言葉とさせていただきます。本日は本当にありがとうございました。

以上『文春オンライン』の記事より一部抜粋して書き出しました。全文はリンクよりご覧下さい。

舞台の幕が上がるまでの待機の時間にどれだけの事を考えて、どんな絶望感を感じながらも希望を持とうとこの先に訪れるはずの日々を想ってモチベーションを保とうとしていたか…彼はただいつもの様に自分のスキルを磨きながら来るべき初日に向けて敢えて淡々と過ごしてだけなのかもしれない。彼が何を感じ、何を考え、何を想って来たのか、そして何を見ようとしていたのかは今となってはこの千穐楽の日に語られた言葉以外知る術は無い。まことしやかに勝手な想像を膨らませて彼の夢を語る人も居るが…わたしは彼自身が発した言葉、彼が口にした気持ち以外は信じない。最後の選択で彼の役者としての人生の全てを評価するのでは無く、人間・三浦春馬が遺した軌跡は随所に見る事が出来る…その言葉を噛み締めながら想いを馳せたい。彼へのインタビューはどのライターさんに於いても本当に真摯に文章を起こして下さっているなと感じるので信じるに足ると思っている。それは彼自身が本当の想いを口にしている事が相手に伝わり期待に応えたものと成っているのだろうと思う。書き手の考えた文章の記事では無くてインタビュー記事に是非着目して三浦春馬と云う人を感じて欲しい。そこに存在する彼が語る言葉を聞いて欲しい。それが彼が演じ作り上げて来た作品に向き合い共に歩んで来た軌跡でも在るのだから…

最後の舞台となってしまった『whistle down the Wind』…彼に相応しい作品だったのかもしれない。
その舞台を観る事の叶った一部の方たちにより各所で語られている言葉を見る限り、いつもと同じ様に取り組み向き合いながら生きていた彼を感じる。どこかのタイミングで全部を記録した録画が存在して、いつの日か公開されないか…と期待しているのだが叶わない期待なんだろうか?舞台での彼に出逢いたかった…


#WDTW  

#HARUMA MIURA 

エンターテイメント


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