『ナイル殺人事件』の感想書く

あらすじ

アガサ・クリスティ原作“世界一の名探偵”ポアロが挑む、エジプトの神秘ナイル川をめぐる極上の《ミステリー・クルーズ》。大富豪の美しき娘の新婚旅行中に、クルーズ船内で起きた連続殺人事件。容疑者は、結婚を祝うために集まった乗客全員…。豪華客船という密室で、誰が何のために殺したのか? そして、ポアロの人生を大きく変えた≪衝撃の真相≫とは? 愛と嫉妬と欲望が複雑に絡み合う、禁断のトライアングル・ミステリーの幕が開く。

20thcenturystudios.jp/movies/nile-movie

はじめに

ここ数ヶ月自分の鑑賞する映画が邦画、もしくはアニメ映画に偏っている事に気付き、ふとバチバチの洋画を観たくなって足を運んだのがこの映画。(洋画は2021年の10月に『メインストリーム』『007』『DUNE』を3連チャンで観て以来)

この他にも多くの映画が現在公開されているが、この作品を選んだ目立った理由が実はある訳ではない。上映作品のリストをぼやーっと眺めて目に留まったのがこれだった。

エルキュール・ポアロ

言うまでもないかもしれないが、この作品はアガサ・クリスティの『ナイルに死す』を原作とした映像作品だ。1978年にも全く同じ題名で映画化がされており、今回が映画になるのは2回目という事になるのだろうか。(1978年版は未視聴)
また同時に、2017年に公開された『オリエント急行殺人事件』の続編とも言える。(エルキュール・ポアロと監督を同じケネス・ブラナーが務めている)

以前どこかで「世界三大探偵はシャーロック・ホームズ、エラリー・クイーン、エルキュール・ポアロの3人である」という文章を読んだことがある気がする。勿論この点に関しては色々と意見もあるだろうが、自分はそういう認識で生きてきたし、そんなポアロの推理を映画で観られるというのは正直ワクワクする部分があった。

一時期ミステリ作品を読んでいた時期があったのだが、かなり昔のことで『ナイルに死す』を読んだことがあるかどうかの記憶は正直一切なかった。ので映画鑑賞時にはストーリーも何も知らず、純粋に楽しむことが出来た。(鑑賞後に原作は改めて読んだ)

感想の前に

前置きが長くなってしまった。ではここから感想を書いていきたい……のだが、ミステリ作品という事もあって事件の核心などを明記するのは流石に控えておこうと思う。

ナイル川という舞台

自分が洋画を観る際の理由は当然様々な物がある。だがその中でも大きい理由の一つが「海外の景色を楽しむことが出来るから」というものである。
海外で撮影されているから言うまでもなく当然なのだが、それでもやはり普段観ることが出来ない景色を、映画館の巨大なスクリーンで楽しむことが出来るのは最高だ。
特に海外旅行も難しいこのご時世なら特に貴重な経験となるのではないだろうか。

今回の作品の舞台は勿論ナイル川、つまりエジプトである。
巨大なピラミッドやアブ・シンベル神殿、広大なナイル川とそこに浮かぶクルーズ船。その映像を見ることが出来るだけで、内容いかんに関わらず心が踊りだす。正直、この点だけでもお金を払って劇場に足を運ぶ価値はあると感じた。(ぶっちゃけCGが気になる部分もあるが)

余談になるが、アガサ・クリスティは実際にナイル川でクルーズ船に乗船したことからこの『ナイルに死す』の着想を得たそうだ。そのクルーズ船は今も運行されており、「アガサ・クリスティが止まった部屋」の予約に関してはなんと2年待ちなのだと言う。


原作との相違点

基本的に小説が映像化されるにあたって、大なり小なり改変は行われるものである。この作品に関してもそれは例外ではない。
ただ主題である殺人事件に関するストーリーの骨子部分に関しては基本的に原作のそのまま。変更点があったのは多少の舞台設定と、登場人物に関してであった。(特に後者に関しては大胆な変更であったように思う)

ただ流石に冒頭に白黒映像で、ポアロの若かりし頃が描かれたのは面食らった。髭周りの描写など、彼の描かれ方については新しい観点の切り口であっただろうか。(賛否が分かれそう。個人的にはあまり好意的ではない。というか物語全体を通してみた時の蛇足感が否めない)

ポアロの話で言えば、推理パートの彼は必要以上に威圧的であったように感じる。ポアロにそこまで詳しくなかったためそんなものなのかなと鑑賞時は感じたものの、原作を読んだ際には彼に対してそういうイメージは一切湧かなかったので、恐らくこの映画独自のキャラ付けなのだと思う。
ポアロの尋問の場面に関してはどちらかというと不快であったのが悪印象。

映像作品として

既に色々と述べてしまったが、全体としては割と綺麗に纏まっていた。基本的には原作が丁寧に映像化されていたように思う。原作で殺人事件が起こるまでが非常に長い所まで、厳密に再現されている。

恐らく多くの人が楽しむことができる映像作品だ。事件が起きるまでが少し冗長かな? という気もするが、それは原作でもそうであるし、その部分での丁寧な描写が後半にしっかりと繋がっている。(とはいえ冗長な前半の割に事件後の描写が駆け足過ぎるとも思うが)

良く言えば完成度が高い、悪く言うなら無難な映画。

原作との一番の相違点で言えば「愛」が明確なキーワードになった点だろう。勿論原作においても起きた殺人事件に「愛」が関わっていたのは言うまでもないが、この映画においてはことさらそれが強調されていたように思う。
それはメインの事件もそうだし、事件を取り巻く登場人物たちにも、ひいてはポワロ自身に関してもこの「愛」に大きく振り回されていた。やはり大事なのは愛なのだろうか。It's love.

強烈な愛プッシュもあって、この映画はミステリ作品というよりかは、ヒューマンドラマを描いた作品なのではないかという思いが正直強い。

(LGBTその他に関する配慮に関してはもはや突っ込んだら負けなのだろうか)

総評

先程も少し述べたが、正直飛び抜けて面白いという作品ではないと思う。ただ映像は綺麗だし、有名作品をベースにしているだけあって物語自体も一定水準には面白い。本当に無難な作品だと思う。

ただやっぱり、このご時世の中で海外の景色を楽しむことが出来たのは本当に評価したい。お手軽に旅行気分を味わうことが出来た。その点には本当に感謝をしている。

最後に、エマ・マッキー演じるジャクリーンがめちゃめちゃ美人だった。

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