『うそつき、うそつき』感想(2024/05/22)

久々の読書。
「嘘をつくと光る首輪」は噓と言う概念に対して問いかける設定。
ハーモニーもそうでしたし、成る程、SFらしさはこういうものなんですね。
(対象を処刑する首輪。どことなくeuphoriaを想起させます)

現在編と過去編のエピソードが交互に出てくる構成。
クリスティー賞と身構えていましたが、ミステリ的な強い驚きの展開ではなく、主人公の心理描写にフォーカスを当てています。
説明や回想、人物が話の流れで上手く出されるのではなく、話の必要で置かれている感覚が不思議でした。

「嘘さえも許されなくなった」ディストピアの中で、数奇な運命に翻弄されつつも懸命に生きる主人公。読後は感想もあまり浮かびませんでしたが、
サクラノの最期をはじめ、結局なにもかも叶わなかった中で、たった一つ、誰にも左右されない自分だけの「生きたい」という欲を見つけたこと。そしてその成長の象徴であるラストに思いを馳せると、なかなか悪くない小説だったような気もしてきます。

SFやミステリ。自分が魅力をわからない領域に突入していく。
純文学至上で凝り固まった自分の世界を拡張できているようで、良い体験でした。今後とも人のおすすめは読んでいきたいもの。涼しい風が部屋に入り込む。読書日和の5月の夕方でした。

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