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#5 グルテン網の形成条件
今回は「麺のコシ」の主役である「グルテン網」について考察する。
グルテン:粘りと弾力の構造
グルテン網は、弾力のあるグルテニンと、粘りのあるグリアジンという2種類のタンパク質から構成されている。この異なる2つの性質が網の目上となり、粘りと弾力という稀有な力学特性が生まれている。
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鍛えるほどグルテンは形成される?
このグルテン網は麺のコシを生む最も重要な構成要素である。しかしこのグルテン網については誤解も多い。
「麺帯を鍛えれば鍛えるほどグルテンが形成される」
というのはその誤解の最たるものだ。
実はグルテン網は、小麦分子が水和(水分子と結合すること)で自然と形成される。
このため小麦粉に対して適切な水回しと適度な圧延を行ったあとは、時間を置くことが最も重要だ。
この時間を置く過程は「熟成」と呼ばれるが、この熟成期間の意味は、水和された小麦分子の中で自然とグルテン網を形成することにある。
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白い網状がグルテン網。丸い粒はデンプン
これはパンの製造においても「オートリーズ」と呼ばれ捏ねずにグルテンを形成される手法として知られる。この手法ではパン生地を捏ねずに熟成期間という時間の経過と共にグルテン網が形成される。
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30分ほど寝かせるだけでグルテンの膜が形成されている
千切れたグルテン網は時間をかけて休ませると自然に復元される
麺帯を強く捏ねることはグルテン網にとっては百害あって一利なしとも言える。素人が手打ち麺を作る時に、コシのある麺を作ろうと力一杯捏ねたにも関わらず、茹でるとブツブツ切れる麺になることがあるのはこの理由だ。
うどんでも体重かけて踏み込んだ麺帯ほど寝かす時間を長くする必要があると言われるのは、踏み込んで千切れたグルテン網が、水和によって時間とともに再びグルテン網が形成されるのに「寝かせる時間」が必要ということだ。
熟成時間ゼロでもグルテン網を形成させる職人技
八重洲七彩のように注文を受けてから手打ちする麺は熟成する時間はほぼないにも関わらず、しっかりとしたコシ(グルテン網)が形成されているのは下記理由によるものと考えられる。
使用している小麦がグルテン成分が多めのものを使用している
加水が高いことで水和が起こりやすい
バランスの良い水回しと丁寧な圧延という職人技
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カウンターの向こう側で麺を打っている様子が観られる。
人気店でもブチブチ切れる?
(グルテンの多い)北米産小麦を使用したプロの製麺所の麺は、充分なグルテン網の中華麺がほとんどである。また国産小麦を使用した手打ち麺でも八丁堀七彩や大井町麺壱吉兆など素晴らしいコシを実現する名店もある。
しかし中には、どんぶりから麺を持ち上げるだけで麺がブチブチ切れてしまう(グルテン網が不充分としか考えられない)手打ち麺の店もある。それだけ自家製麺は奥が深く難しい世界なのだろう。
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スープは懐かしい醤油味で滋味深い無化調
自家製手打ち麺に挑戦される方へ
読者の中には素人ながらも自家製麺に挑戦したいという方もいるであろう。しかしもし茹で上がったあとブツブツ切れる麺になる場合は、グルテン網がきちんと生成されていないということだ。そんな場合は下記を見直すと改善されるかもしれない。
中力粉よりは強力粉のようなグルテンの含有が多い小麦粉を選ぶ。
水回しを丁寧に満遍なくを心がける。
強く捏ねない。鍛えすぎない。
熟成期間(グルテン網の生成期間)を長めにとる。
また下記動画「麺や七彩 打ち立て麺 の実技公開!」は手打ち麺における「水回し」と「圧延」過程について特に非常に参考になる。手打ち麺を試行錯誤される方には必見である。