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メルマ旬報連載「人のミックスを笑うな」第50回『今日僕は叶えよう 君のため虹が降る』

メルマ旬報での連載が50回を迎えました。本家サイトの非会員向けプレビューだとちょっと物足りないなと思ったのでときどきnoteにも部分的に載せようと思います。文末のリンク先に全文が読めるメルマ旬報の連載ページへのご案内があります(毎月500円です)。書籍化したいなあ。

第50回『今日僕は叶えよう 君のため虹が降る』

近況
・オーディオギャラクシーがYouTubeに移行しました。

・「おやすみ。」リミックス リリースしました。


・テレビ東京ドラマ「おしゃ家ソムリエおしゃ子!」放送中。
オープニングテーマMV公開されました。


・フジテレビでドラマ「シックスティーン症候群」放送中。
https://ramrider.com/news/fujitv-sixteen-syndrome200722/
詳しくは
http://ramrider.com/

人のミックスを笑うな 第50回
『今日僕は叶えよう 君のため虹が降る』

子供の頃から手品が好きだった。

初めてテレビで観たマジックは2代目 引田天功(現プリンセステンコー)の遊覧船からの大脱出。両手に手錠をした状態で透明の棺に入り、幾重にも蓋をした船底に閉じ込められる天功。脱出の段取りに手間取ったスタッフに怒号が飛び交う。「失敗だ!失敗!」「ダイバーは潜れ!」。本人が姿をあらわさないまま大爆発、炎上する遊覧船。泣き出す女性タレント。船から少し離れた海中から気絶したまま救出されるも本人は無傷!

脱出はとりあえず成功?

マジックとの出会いは忘れられないインパクトを残した。

80年代は海外のマジックショーを特集した番組も多く、それらを録画しては繰り返しスローモーションで再生してその仕組みを暴こうと必死になった。

当時親戚の家から近かった池袋東武デパートにはマジックコーナーがあり、マジシャンを兼ねた販売員が手品のデモンストレーションをしながら商品を売っていた。そこで自分でもやってみたい、と親に頼み込み、初めて購入してもらったのがマジックグッズの大手テンヨーから出ている「8の手品」という子供向けのセットだ。2000円たらずで8つものマジックが手に入れられる驚きのパッケージ。スポンジの犬が増えたり減ったり、コインが左手から右手に飛び移ったり。解説書を読みながら何度も鏡で練習し、親戚の集まりで酔っ払った叔父などを相手に披露した。

90年代に入ると単身渡米し成功した引田天功に代わり、日本のテレビ界ではMr.マリックが「ハンドパワーです。」の名台詞で一躍スターとなった。引田天功や海外のショーのような大掛かりなセットを使ったマジックと違い、マリックはクローズマジック(テーブルなど近距離での演目)に定評があり、予算的にも安くあがるためテレビ局からの評判も良かったそうだ。

ブーム後にも様々なキャラクターを名乗り活躍したMr.マリックだが、そのネーミングは「マジック」と「トリック」に由来する。

「マジック」と「トリック」

直訳すると「魔法」と「仕掛け」といったところだろうか。トリックには「人を騙す」「欺く」といった意味もある。その彼は自身のパフォーマンスに「超魔術」と名付けた。「マジック」はもちろん「手品」のような手軽なものでもなければ「超能力」といったオカルティックな能力でもない。どちらかというと古めいた「奇術」のような怪しい香り。タネも仕掛けもないとは言わないが、普通の人間には到底真似できない。それが「ハンドパワー」だった。

その後もデビッド・カッパーフィールド、セロ、DAIGOなど様々な肩書のマジシャンがテレビを賑わせる。そして大人になるにつれ僕の興味はマジックの仕掛け自体からそもそもの演出や彼らの口ぶり、手振りに移っていった。実際マジックに長年興味をもっていると多少仕掛けにも詳しくなってくる。「ここまではわかるんだけど最後だけわからないなあ。いや、それにしてもうまいな。」といった猜疑心と感心の入り混じった不思議な感情でショーを眺めた。

僕はこれらのマジックブームが起こるたびに様々なマジックアイテムを買い集めた。テレビで観た魔法としか思えないマジックと同じ商品を通販で購入すると、届くのは透明なプラスチックの板やただの細い糸と雑にコピー印刷された解説書だったりした。もちろん詐欺商品などではない。これが魔法の正体だったというだけのことだ。

マジックはそのタネを知ってしまえばどれも笑ってしまうほどシンプルな仕掛けで成り立っていることが多い。左手から右手にコインが移動するのであれば、たいていそれはもう手のひらを閉じて念じる前に移動は終わっている。あるいは最初からコインは一枚ではないのかもしれない。勘違いされがちだがマジックで大事なのはこの「タネ」の部分ではない。観客のイマジネーション、常識、人として備わってる認知能力を利用して、本来は起こり得ない現象を信じさせることが重要なのだ。

A.左手にコインがある
B.両手を握りしめて念じる
C.右手からコインが現れる

このうちマジシャンが視覚的に提示するのはAとCだけだ。観客は結果をみて彼の手振りや口ぶりから勝手にBで何が起きたのかを想像し、脳内で補完する。つまりマジックで本当に重要なのはBの「本来は何も起きていない時間」なのだ。マジシャンは目の前で起こった現象を観客が脳内で補完するため様々なイメージを提供する。息を吹きかけたり、握りしめた拳をひとつづつ震わせたり。ということはコインは透明になって腕を自らすり抜け移動したのか?それともSFアニメのワープのような瞬間移動だったのか?

そこに魔法が生まれる。僕はこの瞬間がたまらなく好きだ。

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RAM RIDERのnoteだよ。
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