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人形歴史スペクタクル 『平家物語』

NHKのBS4Kで吉川英治原作の「人形歴史スペクタクル 平家物語」の再放送を真夜中にやっています。川本喜八郎の人形の造形が印象的で、清盛を必要以上に美化していないのにも納得がいきます。

冒頭の2回に、芥川龍之介の小説でも有名な「袈裟と盛遠」のエピソードが扱われて、若き清盛と盛遠(文覚上人)との交友や、さらに西行とのすれ違いが描かれていました。

これは『光る君へ』の第1回とも共通します。その後歴史の中で絡み合う人物を若い頃に出会わせておいて、あとで効果的に使う趣向です。偶然見比べてしまいましたが、印象はずいぶんと異なるものでした。

「袈裟と盛遠」は、盛遠が自分が恋しいと思う袈裟御前を殺してしまうという悲劇的な話であり、しかも生首まで登場します。トラウマを与えるような話ですが、人形劇という表現媒体と、主人公清盛が直接手を下したものではないので、直接的な記憶を視聴者に与えません。

原作の吉川英治なりの計算もあったはずです。傍らに、藤原氏から出てきた清盛の母の驕慢なふるまいと離別、さらに清盛と時子との出会いを置くことで、相対化されるからです。このことは物語を語る上で大きな働きをするはずです。もちろん、そこに清盛の出自に関する疑いが入り込むことで、主人公のトラウマが増幅するのです。視聴者のトラウマと主人公のトラウマは別でしょう。

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