『舞台は廻る』

ホームドラマチャンネルで『舞台は廻る』1948を。笠置シヅ子が「ラッパと娘」などを歌いまくる映画です。監督が田中重雄(『永すぎた春』に『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』)で、作曲家役に小津映画の常連斎藤達雄が出ていて、それも興味深かったです。

冒頭にNHKが街頭で市民の声を聴くラジオ番組をやっていて、そこで、古い価値観をしめす作曲家(斎藤)と、その隣人で新しい価値観を示す若い女性(三條美紀)が意見を戦わせる場面が出てきました。戦後の「声」を考えるうえで興味深いものがありました。現在NHKがやっている朝の「法務」ドラマよりも考えさせられました。

久生十蘭が原作と出てきて驚きましたが、確認したところ「月光曲」で隣の家のピアノがメッセージを告げているという箇所をもらっただけのオリジナル脚本でした。『新青年』的メンタリティを戦後にどのように復活あるいは継承するかは課題だったわけですが、こういう接続もあるのだと思わされました。久生十蘭は従軍日記も残しています。

田中重雄は大映の重鎮で『香港攻略 英國崩るゝの日』1942はキネ旬1位をとりました。『秦・始皇帝」1962はいわずもがなですが、『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』1966が戦中の南方でのオパールの入手に関わるという設定も考えさせられます。

酔客として映画内に顔を見せ、映画の音楽を担当した服部良一についても似たことが言えるわけです。NHKが確立した「ブギウギ」史観は、戦中の映画の主題歌である「蘇州夜曲」や「風は海から」などのチャイナメロディの存在を見えにくくする可能性もあるわけです。

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