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ヨルシカライブ2023「月と猫のダンス」 セトリ と あらすじ

2023年4月~6月に公演が行われたヨルシカライブ「月と猫のダンス」、その追加公演が演出を新たにして2024年4月に開催されます
前回の公演からどのような変化があるのかが気になるところですので、おさらいのために以前Twitterにアップしたセトリとあらすじをnoteにも上げてみることにしました
(…上げ忘れてたのを思い出しただけなのはナイショ)

筆者には音楽的知識は一切ないので演奏への評価などはほぼ無し、ライブ中に展開される物語のあらすじを中心に内容をまとめています
しかも記憶力も良くないので台詞などはほとんど憶えていません、あくまでもあらすじになります、ご了承下さい


≪概要≫
「月と猫のダンス」ではn-bunaさんによる曲間のpoetryや朗読は、なんと一切無し
ヨルシカメンバーに加えて役者の男性一名が舞台に上がり、ヨルシカによる演奏と役者の朗読劇が交互に行われる形式の公演、時間は2時間強
芝居パートは前回の「前世2023」でのn-bunaさんの朗読以上に長く、公演時間の4割~5割程度は朗読劇パートであったように感じられた
物語は主人公である画家の青年による独白劇で、少しだけある他の登場人物の台詞も役者が一人で演じ分けて物語を進める

舞台のセットイメージは画家のアトリエで、背後には雑然と並べられた画材、左右の白い壁の窓から見える景色は海辺、そして中央にはイーゼルとアップライトピアノ
物語のシーンごとの大幅なセットの変更はほぼ無く、演奏中は舞台中央上部のスクリーンに各曲のライブオリジナルMVが映し出される
演者は3名の方が居られ、各公演場所によってその中の1名が出演され、演者によって声や演技の印象はかなり変わる上に、同じ演者でも公演ごとに演技や台詞のアドリブは多め
仙台・札幌公演の演者が最も若い雰囲気らしく(筆者は見ていない)、大阪・名古屋公演の演者は壮年の雰囲気で演技が舞台俳優らしい大仰な印象、東京・福岡・沖縄公演の演者は年齢の印象としてはその中間で演技も自然な感じ

suisさんの衣装は暗めの色のジャケットにゆったりとしたパンツルックで、髪は後ろで束ねて長いリボンで結んでおり、髪色は公演によって金髪だったり緑だったり様々
n-bunaさんの衣装は概ねシャツにネクタイ・ジャケットだが、公演によって多彩にアレンジされていた


≪朗読劇1:プロローグ≫
ライブが始まり暗い舞台の中央にスポットライトが当たると、画家の男がイーゼルに向かっている姿がそこに現れ、「花瓶の花が枯れていた」の第一声から男の独白が始まる
男は長らくスランプに悩んでおり、ここしばらくはなにも描くものが思いつかず画家としての仕事に行き詰まっていた
男はアトリエの窓から空を羽ばたく小鳥を眺め、人間とは異なり働くこともなく生きていけるその自由さに羨望の言葉を漏らす
かつての男には明確に絵に描きたいものがあった、何故か頭の中に克明に想像することのできる様々な見たこともない風景、以前はそれを絵にすることに夢中だった
しかしそんな絵は男のかつての恋人に「つまらない絵」だと酷評された
自身では絵を描かないが芸術を見る目は確かで、街の画家たちのプロモーターを営んでいる元恋人、そんな彼女に言わせれば男の絵はただ正確に描かれているだけで面白みに欠けるものとの事だった
売れる作品には人を楽しませる面白さが不可欠だが男の絵にはそれが無い、そんな彼女の言葉を思い出してますます陰鬱な気分に落ち込む男
そんなネガティブな感情を晴らすために男はいつもの気分転換をすることにした、それはピアノを弾くこと
アトリエの大家に借りているというアップライトピアノに向かい、音楽については素人同然の男がたった一曲だけ弾くことのできる曲を演奏する
ヴェートーベンのピアノソナタ、通称「月光」
大仰に両手を振り上げ、慣れた手つきで月光のイントロを弾き始める
だがその途端に、ふとどこかから猫の鳴き声が聞こえたような気がして手を止める
しばし耳を澄ますが何も聞こえず、気のせいだったことにして改めて月光のイントロの演奏を開始したところで舞台は暗転する


<楽曲1:ブレーメン>
背景映像は絵本にあるような切り絵風のタッチのコミカルな動物たちがゆらゆらと踊るシーン
動物たちが集まって踊るシーンは陽気な歌詞や曲調と相まって楽しげ
ライブの一曲目らしい軽快さに溢れている

<楽曲2:又三郎>
実写モノクロ映像で、又三郎を思わせる少年が草原や高架下で激しく伸びやかなダンスを踊る
後半から時々油絵風のCGに切り替わったりカラー映像に変わったりする場面が印象的
又三郎特有の曲の緩急をイメージどおりに盛り上げていた


≪朗読劇2:カナリア≫
月の明るいある夜のこと、相変わらずスランプに悩む男が気晴らしに開けた窓から一羽の黄色い鳥が舞い込んでくる
まるで吸い込まれるような、月光を映し出す黒い瞳をした一羽のカナリア、不思議なことに男が近づいても逃げる様子もなく身じろぎ一つせず窓枠に留まっている
ずいぶんと人馴れをしている鳥なのか、男が目の前で手を振っても逃げる素振りを見せない
不思議に思いながらも気晴らしにいつものピアノ演奏を開始すると、それまで何をしても動かなかったカナリアが急に羽を広げる
驚いた男が演奏を止めると、カナリアも動きをピタリと止めてその姿勢を変えない
ふたたびカナリアを追い払おうと目の前で何度も手を振り払うが生きていることに疑問を抱くほどにカナリアは微動だにしない
そんな様子に思わずおどけて「生きてるよな!?」と問いかけるも、もちろん反応は無し
戸惑いながらも男がピアノ演奏を再開すると、その動きに合わせてまたゆっくりと羽を広げて動かし、まるで奇妙なダンスを踊っているような姿を見せる
あまりにも不思議な光景を目の当たりにし、思わずその姿をスケッチに収める男、それを描き終えた頃にカナリアはどこかへ飛び立っていく
翌朝、アトリエの窓から見える海辺の風景を眺めながら、昨夜の奇妙な出来事を思い出し、あのカナリアが大海原の向こうを自由に飛んでいる姿に思いを馳せる


<楽曲3:老人と海>
ボートに乗った麦わら帽子の男が大海原を揺蕩う、力強く開放的な実写映像
サビでのsuisさんの声量と、n-bunaさんの大胆なギターアレンジに圧倒される

<楽曲4:さよならモルテン>
絵本の挿絵のような淡い色使いのの風景画の中を、白いガチョウがどこまでも飛んでいく
伴奏中のsuisさんのセルフハミング部分や独特な「パッパッ」という音は音源の模様


≪朗読劇3:カエルとカメレオン≫
一匹の牡鹿がこちらを見つめている、男は赤い花のなる木の下に佇んでおり、手には小さな1つの木箱を持っている
男はこの光景が夢であることを自覚している、そして男は目を覚ます
子供の頃から人より器用で絵を描くことは得意であった、そんな男がずっと描きたかったものは頭の中にある不思議な景色、克明に思い出せるのに一度も訪れたことのない場所の風景
木漏れ日の道、異国の街並み、教会、雨のカフェテラス、鮮明に頭の中に描くことができるそれらの景色を形にしたくて絵を描くことを志したのであった
タバコを吸おうと窓枠に触れた男の手のひらに伝わるぬるりとした感触、驚いた男の視界に入る緑の小さな物体に不快感を露にする、窓枠に居たのは小さなカエルであった
あまり嬉しくはない来訪者を追い払おうとカエルの目の前で手を振りかざす男
カエルはまったく逃げるそぶりを見せず、男は以前にもこんな事があったと、カナリアの来た夜を思い出す
男があきらめてピアノに近づくと、いつのまにか移動していたカエルがピアノの上に乗っており思わず驚き飛び退く男
追い払っても逃げないカエルに戸惑いながらも月光を演奏すると、このカエルも男の演奏に合わせて奇妙な動きを見せる
男の演奏に合わせてゆっくりと立ち上がりペタンと尻もちをつく、そんなカエルの奇妙な姿をスケッチに収めた後に、カエルをそっと窓の外へと逃がしてあげる
その後再びピアノの前に戻った男は、さらに信じられないものを目撃して困惑する
特徴的で奇妙な姿をした生き物、カメレオン、こんなもの動物園でしか見たことがない
ピアノの上から鍵盤にだらりと長い尻尾を垂らし、まるでピアノを弾こうとしているかのように見える
このカメレオンもやはり男のピアノに合わせながらゆらゆらと尻尾を揺らす
男はそれも絵に収めながら、これはもしかして面白い作品のネタになるのではないかと考え始める


<楽曲5:都落ち>
背景MVは無くスポットライトの演出のみ、都落ちらしいピンクのライトが桜のよう
suisさんの咳払いもちゃんとあります、ありがとうございます

<楽曲6:パドドゥ>
異国の石畳の上や草原でワルツを踊る男女の足元が映し出される実写映像
ラスサビ前の弦楽器はさすがに音源です、いつかここも生の弦楽器演奏で聴きたい
音源だと徐々に小さくなっていくアウトロがライブでは大きくアレンジされていた

<楽曲7:チノカテ>
カーテンの揺れる窓辺から海辺の景色をずっと映し出している実写映像
「あっ夕日」で赤い照明、サビでスポットライトが白い花の形状に光るのが印象的


≪朗読劇4:ウサギ≫
アトリエの外、窓枠の下に小さな毛玉のようなものが見える、ウサギだった
アトリエの中に入りたそうに無言で訴えているウサギを無視する男
男がピアノを演奏するとこのウサギもまた反応を見せる、厄介なことに外壁を齧って
何度もそれを繰り返すウサギに男は癇癪を起こし、手を振り上げ窓から身を乗り出してウサギを叱ろうとし、思わず硬直する
たまたま窓の外に居合わせた大家と目が合ってしまい、気まずく愛想笑いをしながら借りているピアノを褒めるなどして誤魔化す
大家が去った後に観念した男はウサギをそっと抱え上げてアトリエへと招き入れる
床を飛び跳ねてピアノへと近づくウサギ、男がピアノを弾くとゆっくりと前足を持ち上げて踊るような姿になる
それを絵に収める男は、これまでの動物たちの様子からなにかの物語を連想するが、それが何かは思い出せない


<楽曲8:月に吠える>
ちゃんとn-bunaさんの咳払いで始まります、安心して下さい
芝居の途中からいきなり咳払いをはじめるので一瞬何事かとドキっとする
黄色と黒のコントラストが印象的なアニメ、月光にもスポットライトにも見える
黄色いサークルに映し出される動物のシルエットがクールでかっこいい

<楽曲9:451>
MVは燃え盛る本のページがゆっくりとめくられる映像だがたぶん誰も見ていない
だってn-bunaさんが腰をクネクネ、ジャケットを投げ捨てて右に左に揺れながら踊って歌うのよ?真っ赤なライトに照らされて
今ライブでの最熱シーンは間違いなくココ、何度見ても本当に飽きない
というか公演ごとにどんどんn-bunaさんの歌唱力が上がっていく
そして公演ごとにどんどん動きが大胆になっていく、曲に合わせて客席を指差したりするし、からかうように手を振ったりするんだよ…?ヨルシカのライブで…n-bunaさんが…


≪朗読劇5:コウモリ≫
これまでの動物たちの奇妙な話とそこから作られた絵について、男がかつての恋人に電話で話すシーンから場面は始まる
女の見解ではこれまでの男と動物たちのエピソードはまるで宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」のようであるとのこと
だがそれを普段は真面目な男が珍しく話す冗談だと思っているようで、作り話としての面白さは評価するが実話として信じる様子はない
むきになって最近の出来事の詳細を伝えようとする男、それによると先日訪れた動物はコウモリだったらしい
天井から逆さになるのではなく、窓枠にそっとたたずむコウモリの姿はなんだかスマートでかっこよかったという男の感想
それなら今度見に行こうかしら?という女の言葉、彼女への未練を完全に断ち切れていない様子の男は戸惑い、思わず「あ、いや、そう頻繁に来るわけではないから…」と弁解する
そんな余裕のない反応に対して、男が嘘を誤魔化していると誤解した女はますます男の話を信じなくなった様子
冗談なんて言わない人間だと思っていた男の奇妙な話に、「絵本作家にでもなったらどうか」と女は揶揄する
文章も書けないのに絵本など描けるものかと返す男に、世の中には文字がなく絵だけで自由に想像させる絵本もあるのだと説明する女
そして女が語る「絵は時に言葉よりも雄弁である」「全ての創作物は形を変えた言葉である」という言葉、それに感銘を受ける男、そんな男に呆れて女は言う、「あなたの言葉よ」と
それはかつて、若き日の男が発した言葉だった
以前の、創作にまっすぐな情熱を燃やしていた頃の自らの言葉を忘れてしまっていた男に女は「変わってしまったのね」と寂しそうに言う
ばつが悪くなって話を逸らそうとする男は、先ほど女が語った「セロ弾きのゴーシュ」の結末について問う
そこで女の声色の印象が変わり、動物たちが訪れなくなってしまった後に「もっと優しくしてあげるべきだった」と後悔して話は終わると説明する
その結末の内容に女が自分たち二人の関係の結末を重ね、暗に男を責めているのだと気づく
女との電話を終えた後に、別れるという結末に至った自分たち二人の過去に思いを馳せる


<楽曲10:いさな>
幻燈の同曲の絵を再現したような、部屋の中を魚が泳ぐ静かで透明感のあるMV
次の雪国と静かな曲が続くが、この2曲は静かさの中にある歌声の力強さに心揺さぶられる

<楽曲11:雪国>
電車の車窓から見える雪国の景色を写し続ける静かで寂しげな映像
この曲だけが持つ静寂の重厚さに圧倒されて、曲後にだれも拍手できない公演が多かった


≪朗読劇6:フクロウとハムシとシカ≫
男のアトリエに「キィー!」と鋭く鳴く生き物が飛び込んでくる、フクロウだった
このフクロウも男のピアノに合わせて大きく羽を羽ばたかせる、男はそれを絵にする
その次に訪れたのは大きなアゴを持つ小さな羽虫であった
アゴを器用に持ち上げ音に合わせてそれを開閉させる、その姿もやはり男の絵となる
次はいったいどんな動物が訪れるのかと期待する男、そこにアトリエの壁をコツコツと鳴らす音が響く
男は窓の外に立っていたものの姿を確認してさすがに狼狽える、そこには立派な角を携えた一頭の大きな牡鹿
いくらなんでも鹿をアトリエの中に招き入れることはできないので、男は鹿に諦めて帰るよう促す
しかし鹿は立ち去ろうとはせず、しつこく窓の外でコツコツと角を鳴らす
物音を立てることに注意をする男、それでも鹿は諦めず今度は野太い鳴き声を上げる、いたちごっこである
最後は男のほうが折れ、鹿におとなしく演奏を聴くことを念押ししてピアノを弾き始める
窓の外で音楽にあわせてゆっくりと首を振ったり口を開閉させたりする鹿、男が弾ける月光のイントロ部分が終わってもまだピアノを催促する
仕方なく同じところを繰り返し演奏する男、何度かの演奏の後に窓の外を見ると牡鹿は静かに眠りについている、それをそっと絵に描く男

そんな日々が続いていた男に朗報の電話が入る
プロモーターである元恋人の協力で、個展を開くことができるらしい
このところ精力的に絵を描いていた男、そんな彼の作品を面白いと感じた元恋人が、ビルの一室を改装した小さな会場を用意してくれるとのこと
踊る動物たちをモチーフにして描いた連作画、男はその1枚目は人間をモチーフにした絵にしたいと言う
人間も動物の一種だからという少し無理のある主張に「モデルは誰なのか?」という質問を返す女、そしてそれを気まずそうに言葉を濁してごまかす男
男は女にこれまで訪れた動物たちを順番に読み上げて聞かせる
※ツアー途中、名古屋あたりからここで何故かマサック氏のシンバルを叩くアドリブが入るようになる
最後に訪れた動物については特に大仰に言って聞かせる「鹿だ」と
※これもツアー途中から平畑氏のスキンヘッドを撫でながら語るアドリブが入る、さらにその前に2人で見つめあう謎アドリブも
※公式からの「演出の妨げにならない範囲での声出しOK」指示があったこともあり、公演によってはここで笑いが起こる
※沖縄の最終公演では平畑氏が自分で頭に手をやって鹿のモノマネをするというまさかの一発ギャグまで出てしまった
電話を終え個展の開催に向けて意気揚々とする男


<楽曲12:第五夜(inst)>
平畑氏のピアノソロから始まるインスト、舞台は暗くsuisさんは捌けておりMV映像も無し
公演によってsuisさんは中央のピアノ近くの暗がりのあたりに残ってリズムを取っていた

<楽曲13:夏の肖像>
これも平畑氏のソロから始まる、と言ってもピアノではなく指パッチンリズムをとるアレンジ
映像はカラフルなタイルのような背景の中を歩く白猫と黒猫を交互に映す
最後に2匹の猫は出会って一緒に踊り戯れる

<楽曲14:靴の花火>
木版画のようなモノクロイラストとレトロなタッチの文字が味のあるMV
ラストシーンは宇宙空間に浮かぶ地球の周りに上がる花火
隣に「靴の花火」の文字、「みんなのうた」感


≪朗読劇7:ネコ≫
男が電話で誰かに謝罪するシーンから始まる
相手はアトリエの大家のようで、動物たちが集まっていることに対して餌でも与えているのではないかかという苦情
自身の個展の件に話を逸らしてごまかそうとする男、それによると開催は間近な模様
電話を終えピアノに近づくとそこに1匹の黒猫
大家からのクレームについて黒猫にぼやく男、餌など与えてはいない、音楽を聴かせているだけだと
それはそうと、動物たちのおかげで個展まで漕ぎつけられた事について猫に感謝を述べる男
動物たちは自分のピアノを聴きたくて訪れていたのであろうことを黒猫に問うが、答えは無い
ピアノを弾くと黒猫も他の動物たちのように音に合わせて両手を上げてダンスを踊るようなしぐさを見せる
その深い闇のような瞳を見ているうちに男はなにかを思い出しそうになる
その時、なぜか男の頬を伝う涙、そんな男の頬にキスをするように鼻で触れて去っていく黒猫
それが動物たちの姿を彼が見た最後の瞬間だった


<楽曲15:.左右盲>
シュールな印象画で積み木のような記号を組み合わせて描かれた部屋と人物、コーヒーと猫
窓の外は宇宙空間で無重力の中にそれらが浮かび積み木が崩れるように離れていく
後半ではそれらが合わさり宝石の形になってまた散らばる、奇妙な光景だが涙を誘う不思議な映像

<楽曲16:アルジャーノン>
ラストはもちろんこの曲だが、イントロ部分がアレンジされているので最初そうだとわからなかった
机の上に置かれた真っ白いノート、ページがめくれると青いインクの歌詞が少しずつ書き込まれている
そして今までの実写系映像を振り返るハイライト的な映像
ゆっくりと去っていく者を見守るように少しずつ客席のほうへ延びていく光線の演出
ラスサビでは舞台背景の空中一面にキラキラと星が浮かぶようなスポットライトが煌めく
曲の盛り上がり•歌詞•舞台演出すべての相乗効果でとても感動的


≪朗読劇8:エピローグ≫
曲後の暗転から明かりがつくと舞台上に並べられている10枚の連作画(第一夜~第十夜)
どうやら場面はビルの一室を改装した小さな個展会場のようで、そこで男は来客に向けての挨拶を述べる
※その口上はライブ入場時に配られたカードに書かれたものと同じ内容(=このカードは個展の招待状?)
客足は疎らだが無事に個展を開催できたことに男は久しく感じていなかった充足感を得る
そこに見本絵を1枚欲しいという声が掛かり、男が顔を上げると目の前には元恋人の姿が
久々の再開に気分の浮き立った男は「変わらないね」と声を掛けようとし、そしてあるものに気付いてその言葉を飲み込む
変わっていないようで世界はゆっくりと確実に変わっている、女の左手の薬指には指輪が輝いていた
感情が顔に出ないようごまかしながら個展開催への彼女の尽力に礼を言う
思い出話として、かつて頭の中にある景色を絵にしたものを女につまらないと言われたことを語る男
それを否定する女、自分は男の絵の価値を否定していたわけではなかった、と
女がかつて言いたかったのは男の絵に面白みがないということだけであり、それは売れる絵を描くための純粋なアドバイスのつもりであった
そしてどれだけ他人がつまらないと感じる作品であっても、そこに込められた思いには必ず誰かにとって価値があると
その言葉にも感銘を受ける男、これに対して女はいつかのように「あなたの言葉よ」呆れ、少し哀しげにそして少し嬉しそうに「変わらないのね」と笑う

個展が終わり会場を後にしようとする2人
別れ際にあの奇妙な踊りを踊る動物たちは男に似ている気がすると告げる女
どこが似ているのか理解できず首をかしげる男に、特にあのネコの絵などがピアノを弾いている時の彼の姿にそっくりであることを説明する
その言葉に衝撃を受けた男は、一人残った会場で並べられた絵を前にして動物たちの姿に思いを馳せる

その後、アトリエにて男の最後の独白
結局絵はネコを描いた1枚だけを残してあとは売ることに決めた
そして女の最後の言葉を思い出して男は考える
彼らは奇妙な踊りを踊っていたのではなくて、男がピアノを弾く姿を模倣していた?
彼らはピアノを聴きたかったのではなくて、本当はピアノを弾きたかったのではないのか?
男はいつものようにゆっくりと大仰に両手を振り上げて月光を演奏し、その姿勢のまま手を止める
その自分の姿を見つめて男は暗く静かに呟く
「…奇妙な踊り、か」
踊るように演奏を再開した男の姿が闇に消えて物語は終わる


舞台が暗転したあと左右に1つずつスポットライトが照り、その下でn-bunaさんとsuisさんが深々と礼をしてから立ち去る
最後に中央に1つだけスポットライトが照り、主演役者が礼をして公演は終了する

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