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ヨルシカ前世2023 ライブレポート

概要
ヨルシカライブと言えば背景スクリーンに映されるイメージ映像に加えて
数曲毎に挟まるn-bunaさんのpoetryにより物語形式で進行するのが特徴だが
今回のライブでは短いpoetryではなくわりと長めの物語朗読が挿入される
いやもう合間に挟まれるってレベルじゃなく長い、通算時間の1/4~1/3くらい朗読
それもあってか今回のライブ公演時間はとても長く、両日とも2時間半くらいだった
 
おことわり
このレポートでの朗読の内容は実際に読まれたものの文体とはまったく異なります
話のあらすじを私なりにまとめなおしただけのものです、何卒ご了承下さい
朗読内容を正確に把握したくて読もうとしてくれた人はごめんなさい
あと2回見たとはいえうろ覚えです、物語けっこう違うかもしれません(超絶予防線)
 
開演前
真っ暗な舞台、向かって右側にぽつんと百日紅の木が一本、その下にベンチ
舞台上で一人、百日紅のベンチに座るn-bunaさん、彼の朗読からライブが始まる
 
 
 
朗読① 導入部
物語の登場人物は1組の男女
文面は女の語り口調で描写されており男のセリフにだけは「」がついている
朗読中の背景スクリーン映像は絵本のように淡いパステルカラーで描かれている
物語の主な舞台は街の外れにある緑道
そこにある赤い花の咲く百日紅、そしてその木陰にあるベンチ
始まりは女が緑道をゆっくり歩いてゆくシーン
男とのかつての思い出、いつも持って来たサンドウィッチを今は持ってきていない
道の先にある赤い百日紅のベンチで男は坐って本を読んでいる
「今日も来たのか」と呆れる男に、女は迷惑だったかと問うが否定も肯定もない
男の座るベンチの隣に男の手を借りて腰掛ける
男が独り言のように話す内容に女が静かに相槌をうつ
話の内容は男が最近よく見る夢のこと、鳥だったり魚だったり獣だったり虫だったり
夢なのだけれどもまるで実際の経験のように思い出される不思議な記憶
「こういうのをなんて言うのだったか、そう、あれはまるで俺の…」
 
「前世」
 
 
1.負け犬にアンコールはいらない
開幕からトップギアのロックナンバー!
前世2023で絶対やるはずの曲ランキング2位(らかん偏見)
ド派手なライトアップで露わになるヨルシカメンバー
今回のsuisさんは水色のショートボブに白いブラウスの上から赤いワンピース?ケープ?みたいなの着ている?キービジュアルの女性に近い服装か?
背景スクリーンの映像は前衛アート的なポップで色彩豊かなアニメ
遠吠えする負け犬が間抜け面でかわいい
サビ前の「ジャッジャッジャジャッジャン…(間)…」からの
「もう1回!!」で始まるサビの圧倒的な声量にビビる
あっ、遠吠えはアルバムと同じ音源ですn-bunaさんがやったりはしません
 
2.言って。
負け犬と同じようなポップなアニメーションにとにかく色んな動物・
鳥・爬虫類・魚・虫などが登場する
今回の物語で男が語る様々な生き物だった頃の前世の記憶に合わせて
こういった色んな生き物が登場する映像が今回は本当に多い
サビのところのトカゲちゃんがかわいかった(頭の悪い感想)
 
 
朗読② 鳥だった頃の話
舞い散る百日紅の花に「きれいだな」と呟く男
男の話を静かに聞く女はかつて2人で暮らしていた事、
そして今はそうではないことを改めて自覚する
男の髪に百日紅の花でもついているのか、奇妙そうな目を向ける通行人
男の夢の話はかつて鳥だった頃の記憶へと進む
背景には緑豊かな渓谷の川に沿って鳥のように飛び回るドローン撮影の映像
空を飛び回り、虫を食べ、水を浴びる、鳥だった頃の生活をとても克明に語る男
水たまりに写る自分の鳥の姿になぜか違和感を覚える
ある日、記憶の中の鳥は奇妙な行動へと移る、映像は大海原へ
大海原に浮かぶ太陽の光に焦がれ、それに向かってひたすら飛び進む鳥
自分がなぜこんなにもあの光に焦がれるのかはわからない
そしてある時ふと気づく
「もしかして俺がずっと焦がれていたもの、あれは太陽の光ではなく…」
 
「月光」
 
「…だったんじゃないだろうか」
その後、その鳥がそのまま死んだのか、元の生活に戻ったのかはわからない
 
 
3.靴の花火
この曲のモチーフは「よだかの星」、鳥の話を始めた時点でまぁ絶対来ると思うよね
小さな鳥の群れが様々な場所の空を飛んでいく淡いタッチのアニメーション
青少年向けの健全なアニメのエンディングにありそうな感じ
最後にサビに合わせて夜空に咲く花火へ向かって飛んでいくシーンが印象的
 
4.ヒッチコック
ヒッチコックと言えば「鳥」なのでこれも来るような気はしていました
これも典型定なポップな動物系アニメーション映像
歌詞の文字が画面上を縦横無尽に飛び回り、それが動物を象っていくのが面白い
 
5.ただ君に晴れ
はい来ました、絶対やる曲ランキング堂々1位(らかん偏見)の大ヒット曲
圧倒的再生回数なのに今まで一度も生のライブで歌われた事のない幻の名曲
MVはがっつり実写のしかもヨルシカには珍しくがっつり演者が顔を出している映像
先ほどの鳥の記憶の時に上空から見下ろしていたような森の中の川辺
そこで青いワンピースを着てバレエのようなダンスをゆっくりと踊る女
まぁ爽健美茶のCMにありそうな感じのやつよ(言い方)
「パンパンッ!(clap! clap! )」はしたくでも出来ないので胸元で小さくやった
みんなもやったよね?
 
 
朗読③ 散歩に誘う話
男の夢の話はまだ続く、獣・鳥・魚・虫・そして花…様々な生き物だった頃の記憶
そしてそれだけではなく、かつて光だったり風だったり波だったりした事もあるという
その語りの気まぐれさに女は男の前世が猫だったんじゃないうかと思いをはせる
ひとしきり話を終えた男は女を散歩へと誘う「散歩でもしようか、まぁ…」
 
「リードはできないけどね」
 
ダンスにでも誘うようなキザな言い回しが可笑しくて微笑む女
 
 
そして次曲がはじまる
くせの強いアレンジが少なくイントロからどの曲かわかることが多い今回のライブ
そんな中で突然、聴いたことがあるような無いような不思議なイントロが始まる
テンポはゆっくりしているが、リズミカルで軽妙な曲…完全新曲か?なんだろう?
「ねぇ考えなくてもいいよ♪」
6.ブレーメン
おぉ!ブレーメン!やっぱり過去曲だけじゃなくて幻燈系の最新曲もやるのか!
ブレーメンMVのまるで公式パロディのように色んな歩く足元を横から移した映像
オリジナルと違うところはそれがすべて動物の足であること
古代の恐竜やマンモス、獣や鳥、果ては海底のタコや未来のロボット猫まで
最終的には人間の、青年の足元の映像に
電車のホームを歩くスニーカーの青年の足
白いワンピースの女と革靴の男の2人組とすれ違ったのは見間違いか?
パドドゥ♪のコーラスはメンバーみんなで仲良く、かわいい
キタニの声が圧倒的に目立っていたってみんな言っていたわねw
 
7.雨とカプチーノ
来ましたライブ常連曲
後半曲に多くなる幾何学模様系の不思議な映像だったはず
最初と最後にカプチーノが映っていたのは覚えている
 
8.チノカテ
ブレーメンに続いてまたしても幻燈系の新曲が来た!
夕日の橙色をベースにした、めくられ続ける日めくりカレンダー?の映像
“もう戻らない日々”を示唆しているのだろうか?
指パッチンもさすがに音源よね?あれは
 
 
舞台全体を隠すように巨大な白い暗幕が下りる
背景スクリーンではなく暗幕全体に大きく次の朗読用の映像が映し出される
いつもの緑道を進む女の目線、ただし空は暗く曇り、土砂降りの雨が降る
朗読④ 雨の街路灯の話
大雨の中、女は傘もささずにいつものベンチへと向かう
百日紅の木の下で雨宿りをしながら男を待つずぶ濡れの女
遅れてやって来た男はその姿に呆れ、自分の傘にそっと女を入れる
街のほうへと並んで歩みを進める2人
あまりにもずぶ濡れのせいか、まるで素足の様に奇妙な水音を立てる女の足
道の先に見える高架橋、夜と見紛うような薄暗さに勘違いした街路灯が灯っている
まるで月光のような街路灯の光を大雨の中で見る男は、ある夢の記憶を思い出す
魚だった頃の記憶、いつものように克明に語られるその生活
魚の頭では難しいことは考えられなかったが、その生活は悪いものではなかった
そしてその頃の記憶でとくに印象的だった光景があった
夜の深い深い海の底から見上げた、水面の向こうに浮かぶ丸く大きな月光
魚だった頃の男はそれを見てなにかを思い出していた
「俺はかつて、人間だった事があるような気がする」
 
 
ゆっくりと上がる白い大きな暗幕、露わになる舞台
そこにはヴァイオリンなどの弦楽器を携えた多数のサポートメンバー
舞台左右にはまるでアトリエのような部屋の中であるように思わせるオブジェ
9.嘘月
背景には大都会の大きな夜空に浮かぶ巨大で美しい満月
弦楽器の演奏による伴奏の圧倒的な重厚さと美しさが心に残る
 
10.花に亡霊
夜空き咲き誇る多数の打ち上げ花火(実写)を映し出すスクリーン
そして時々差し込まれる夏の思い出の風景(実写)
弦楽器用にアレンジの効いた夏を思わせる旋律が切なくも力強い
 
 
スクリーンにはとある部屋の中の実写映像が映し出される
チノカテや左右盲のMVで最近よく見る、アトリエ風のあの部屋の風景
朗読⑤ 狂い咲きの桜の話
雨の中、男の部屋にたどり着く二人、かつて一緒に暮らした懐かしい部屋
ずぶ濡れの女にバスタオルを貸し与え、男は台所へと消える
かつてそうしてくれたように、暖かいホットミルクを用意いてくれるという
女は部屋の中を眺める、あの頃と何も変わっていない風景
二人で使うには大きすぎるテーブル、アップライトピアノ、姿見、
ずいぶん前からめくられていない日めくりカレンダー、
そんな中にただ一つ、見慣れない小さな戸棚が目に付く
戸棚にぶつかってしまった女の頭上に1つの写真立てが落ちてくる
床に落ちたままのそれを眺める女、写っていたのは1組の男女
幸せそうに微笑むかつての2人、背後には満開には程遠い疎らな桜
両手にコップと皿をもって戻った男、床に落ちた写真立てを拾い上げ呟く
「これ、楽しかったなぁ」
男が語る二人の思い出、秋の狂い咲きの桜を見に行った日のこと
ある年の秋の陽気にて、春と勘違いした桜が狂い咲きをしたというニュース
映し出される一凛の桜の花の映像、ぜひそれを見に行こうと話し合う
いつものサンドウィッチも用意して、花見の準備万端で出かける二人
向かった先にあったのは、枯れ木のような枝に疎らに咲くだけの桜
ニュースで映し出されていたのは一凛の花のアップだけ
それを見て勘違いした二人、自分たちの姿が滑稽で思わず笑いだす
 
人生なんて勘違いの連続、一部だけを見て大切なことには気づかないばかり
 
 
11.思想犯
盗作ライブやアルバムのキービジュアルのようなコラージュアートで描かれる映像
顔や目を切り抜かれた人間や動物、そしてその髑髏、枯れる花や落ちる虫
生き物の死を連想させ不気味さも孕んでいながら明るい色彩の不思議な映像
 
12.冬眠
ノイズや砂嵐のような静かで不思議な描写で始まる映像
後半の曲の盛り上がりにつれて徐々に美しい自然の風景へ切り替わっていく
この時間帯に静かな曲に静かな映像で少し眠くなったのは内緒だぞ?
映像の最後に「THE END」って出るから「えっライブ終わり!?」ってなるよね
だって前世2021のラスト曲が冬眠だったからさ…
 
弦楽器チームはこの2曲の後あたりでひそかに退場していたかも?
 
 
朗読⑥ 前世で人間だった頃の話
沈黙が訪れ、静かな部屋に雨音だけが響く
女はふと、懐かしい部屋に散乱する本や資料の存在に気付く
男は前世の記憶のなかで、かつて人間だった頃のことを調べているという
思い出されるのは異国の風景、ヨーロッパの街並み
海外になど一度も行ったことのないはずの男の、奇妙に鮮明な記憶
記憶の中の景色と写真を比較する
ドイツ?リトアニア?ポーランド?いや、もっと北欧の国のように思われる
ノルウェー、フィンランド、あるいは…
 
スウェーデン
 
記憶の中の男は年若い青年だった
ギターとカバンひとつで、異国の街をひとり旅している、楽しくも苦しい旅
“自分探しの旅”といった気楽な雰囲気ではなく、なにかにひどく焦っている
旅の果てに静かな森の中で立派な雄鹿に出会う青年
導かれるようにその後を追い、やがて森を抜けた先でたどり着く小さな浜辺
そこで彼は夜の海に浮かぶ静かな月明かりを目にする
 
 
13.詩書きとコーヒー
静かな朗読からのロックナンバー、ライブ初披露を待たれていた曲の1つ
アップテンポなメロディとは裏腹に、歌詞は“青年”の葛藤と苦悩を歌っている名曲
映像は”彼"のいつもの部屋です、田の字の窓、小さな文机とインク
窓の外には異国の街並みが見え、時間とともに夕暮れになっていく
 
14.声
イントロの雰囲気からエイミーやパレードと間違えられやすい曲
しかし映像の冒頭に大きく「KOE」って出ていたのでこの曲だとすぐにわかる
これも不思議な幾何学模様系の映像だが、色々仕込みがありそうな雰囲気
最初に写る点々の配置が点字で「声」を意味するって噂マジ???
ラスサビ前の伴奏時にn-bunaさんの「ア~♪」というコーラスが入るのが印象的
声には出せれどもうまく伝えられない、そのもどかしさを抽象しているように感じた
そしてラスサビ開始と同時に暗転、
ヨルシカライブ名物、suisさんへの鳥かごビーム(勝手に命名)
鳥かごビーム(勝手にry)中のsuisさんはいつ見ても綺麗だよね
 
15.だから僕は音楽を辞めた
出ました、言わずと知れたヨルシカの代表曲中の代表曲
聴衆に媚びずに自分の為に音楽を創ることを貫く、硬派な創作者n-bunaさん
でもこうやってしっかり代表曲を入れてくれるあたりに優しさが隠せてなくて好き
海面からの光で透き通る水色の海底を、小魚の群れが泳いでいく映像
この曲が来ると今度こそ終わりのような気がするけどまだ終わりません
 
 
朗読⑦ 真実の話
男の前世の長い話を聴くうちに雨は止んでいた
作ってくれたホットミルクも器の底にこびりつくばかりとなっている
キッチンから顔を出した男が女のほうに向きなおす
男が次になにを言うのか女には予想がつく、あの頃にいつも言っていた台詞
かつてそうしていたように女の名前を呼んで男は問う
 
「XXX、おかわりはいるかい?」 ※XXXは原文まま
 
言ってしまった後に、なにか酷い過ちを犯してしまったように顔を顰める男
しばらくの沈黙のあとにゆっくりと口を開く
 
「本当に、大事だったんだ」
 
もうあの頃には戻れない、二度と取り返しはつかない
男の部屋の日めくりカレンダーは女が居なくなった日のままで止まっている
そんな男の姿を見るうちに、女は強い思いを抱く
もう一度二人でやり直せないか
思わず伝えたくなる女、だがそれは出来ない
男に声をかけようとするも、そうして響くのはなぜか奇妙な音ばかり
女は声を伝えることができない、物理的な妨げによって
そして苦しみの言葉を吐き終えた男は呟く
 
「俺は、犬相手に何を言っているんだ」
 
女は姿見を見る
そこに写っているのは
 
一匹の犬
 
※スクリーン映像には鏡に映るコーギー犬
思えば違和感はいくつもあった
散歩に誘おうとしたとき、男は「リードは出来ないけど」と言った
ダンスに誘うようなキザな言い回しをしたのではない
鏡に映る犬には首輪がない、だからリードが付けられないのだ
犬は気づく、二人で暮らしていた頃の記憶、これは私の
 
前世
 
 
16.左右盲
このタイミングでこれを聞かされたら心に刺さるにきまっている、ずるい
朗読のときと同じく、チノカテや左右盲のあのアトリエ風の部屋の実写映像
曲の終盤あたりから部屋のなかをのそのそ動き回るコーギーの姿が
か わ い い
 
17.春泥棒
というわけで今回の大トリは春泥棒でした
映像は言わずもがな満開の花をモチーフにした、軽やかな疾走感のある描写
そして「愛を歌えば言葉足らず…」のところから舞台は急に暗転
そこから最後に大きく盛り上がるラスサビの歌い始めで…
 
ドパーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!
 
ド派手な破裂音とともにアリーナ前方に飛び散る大量の花吹雪と銀テ!!!!
舞台全体も過去イチじゃないかってくらい明るく照らされる
最前列ふつーーにメンバー見えたのでは???シランケド
この花吹雪と銀テはふつうにアリーナ前方30列目あたりまで大量に降り注ぎます
なので皆拾い集めてるんですが、手に取ってから重大なことに気付きます
 
これ桜やない!!!!百日紅や!!!!!!
 
 
春泥棒の歌唱が終わるとサポートメンバーの皆さんは静かに舞台を去る
それによって最後の朗読が始まるのだとわかってしまう
暗転した舞台中央に静かにライトアップされた百日紅の木、その下に佇むsuisさん
そこから離れた位置、舞台端のn-bunaさんが最後の朗読を開始する
朗読⑧ 結末
百日紅のベンチに座って本を読む男、そこにいつも通りやってきたのは、一匹の犬
男はなにか思いつめたような暗く厳しい顔をしている
犬はいつものように吠えて男を急かす
最初は黙っていた男も、観念して笑って犬をベンチに上げてあげる
 
男の隣で眠ってしまった犬が目を覚ますと、かつて暮らしていた部屋のソファの上
かけてくれた毛布から出て男をさがすと、その姿はベランダに見えた
男のいつもの定位置、ベランダに置かれた椅子に座ってなにかを見つめ続ける男
犬はベランダに出てやっぱりここに居たのかと声をかける
「起きたのかい?」
あまりにも自然に話しかける男に、犬も思わず問いかけてみる
あなたはなにをしていたの?と、やはり男からの応えはない
ただ男は犬を膝に抱え上げ自分の見ていたものを見せる
「見てごらん」
男の膝の上で一緒に見たのは、とろりとした光を放つ大きな月
※スクリーン一面に大きな月
男は犬にささやく
「君さえよければ、一緒に暮らさないか」
そして男と犬は月を見つめる
満月ではない不完全な月ではあれども、女の心には鮮烈に映る月光
二人で再びあの月を見つめることが出来ているこの時に喜びを感じる女
女にとってこの一瞬がどれほどかけがえのないものか
それを男にわかってほしいと切望する
犬の声は男には届かないし、共に居ることすら伝える術がない
 
最後に女は思い出す、かつて2人が魚だった時のことを
深い深い夜の海の底で、今のように2人で月光を見上げたことを
 
 
終演
n-bunaさんの朗読が終わると、ヨルシカの2人にスポットライトがあたり
それぞれ離れた場所に立ったまま客席のほうへ深々と一礼
suisさんは向かって左側へ、n-bunaさんは右側へとそれぞれ去っていく
舞台に残されるのは中央の1本の百日紅の木だけ
静かにライトアップされた木とスクリーンの「前世」の文字を残して公演は終わる
 
 
最後の仕掛け
余韻にひたったまま規制退場に従ってロビーに出ると、最後の仕掛けが待っている
ロビーのあちこちに貼られている前世2023の全てのポスター
中央の女性の上半身、ページが破られたようになっている部分
 
そこに写る姿がコーギー犬に変わっていました
 
その後出口で渡される記念品のカードにもこの仕掛けがあります
表面は通常のキービジュアルで、裏面がコーギー版になっています
さらに入口のフォトブースにある撮影用パネルにも同じ仕掛けがされていたらしい
※混んでいたので見に行けなかった
 
つまり女の正体がコーギーだというのが最大のネタバレポイントな訳ですね
ですが、実は物語をよく読めば途中で違和感に気付けるようになっていましたね
そういった気づきポイントはレポートの文面の中で太字にしています
例えば、なぜベンチに座るだけで手を借りる必要があるのか?とか
女の問いかけには男からは一切の具体的回答がなかったりとか
小さな戸棚にぶつかったのになぜその上のものが頭上から落ちるのかとか
ホットミルクをつくりに行ったのになぜコップと皿を持ってきたのかとか
個人的には冒頭で男女が今は共に暮らしていないって言った時点で
「あ、この女性のほうは既に死んでいて動物に転生しているな」って気づきました、そもそもタイトルが「前世」ですし
n-bunaさんの物語で男女両方生存なんてありえないから(偏見)
 
そして今回ついに、音楽泥棒とその妻の物語と、エルマエイミーの物語との
明確な関連性が公式によって示唆されましたね、考察勢が捗りそうです

(編集協力:るる)


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