第91期フューリック杯棋聖戦第2局

【驚きの一手その1】

6月28日に指された第91期フューリック杯棋聖戦第2局をあらためて並べてみた(参考:棋聖戦中継サイト)。矢倉戦。後手の5筋不突きに対し、先手は米長流急戦矢倉の構えから31手目に▲45歩と仕掛ける。その後、42手目に藤井七段は5筋不突きを活かし、なんと歩越しに△54金!と出た。

控室でも予想されなかった一手。先手が45に跳ねた桂馬を取り切ってしまおうという大胆な手である。藤井七段は局後の感想で「この局面になればやってみたかった手だった」と言っており、5筋不突き矢倉の研究のひとつだったようだ。

【驚きの一手その2】

角交換となり、先手から▲66角と金取りに放たれた手に対して、藤井七段は△31銀!またもや意表の一手である。一見受け一方に見えて控室でも検討されていなかった(ひとり窪田七段は棋譜解説で△31銀を予想していたようだが)。

驚くことにこの手以降、形勢は後手に傾いたようで、先手はなし崩しに寄せ切られてしまい、90手で藤井七段が勝ち、2連勝。史上最年少タイトルまであと1勝と迫った。

現役トップクラスの渡辺三冠相手の鮮やかすぎる勝ち方に、今まさに藤井七段が将棋界の頂点に立つ瞬間を見ているのではないか、という思いを強く持った。

【藤井七段の強さの源泉】

藤井七段は46手目の△73桂に50分、続く48手目△65桂に58分とこの2手に1時間48分と持ち時間4時間の半分近くを割いている。次の50手目△45銀にも29分使って残り時間は1時間を切り、あの「△31銀」には23分の考慮をようしている。この中盤の難所と思える時点で残り時間は27分しか残っていない。

しかしその後は(優勢になったこともあってか)あまり時間を使わずに最後は5分の持ち時間を残して勝ち切っている。

この1局だけではなく、最近では王位戦の挑戦者決定戦の対永瀬二冠戦や順位戦B級2組の対佐々木勇気七段戦においても、藤井七段は中盤に惜しみなく時間を投じて読みを入れ、そして残り時間が少なくなった終盤を危なげなく乗り切って勝っている。

これは(詰将棋の実力からもわかるように)終盤に絶対の自信があることもあろうが、それ以上に中盤でその後の主要な変化を読み切っているから、終盤にあまり時間を使わなくとも済んでいる、のではないだろうか。あくまで仮説だが。

【棋界の頂点に立てるか】

先に書いたように史上最年少タイトルまであと1勝であり、内容の充実度や次局が先手番であることも考えると、奪取の可能性が高くなってきたと世間が騒ぐのは当然だろう。

しかし、相手は戦略家の渡辺三冠である。常に合理的に勝負をとらえて結果を残してきている彼がこのまま終わるとも思えない。かつて竜王戦ではあの羽生さん相手に3連敗から4連勝の大逆転で防衛したこともある。今までの2局で藤井七段のデータ収集は完了し距離感はわかったものと思われる。

第3局で渡辺三冠が、藤井七段を攻略するための作戦をどう繰り出していくのか、それをかいくぐって藤井七段が史上史上最年少タイトルを獲得し、その後の伝説の序章とするのか、注目の第3局が行われる7月9日が待ち遠しい。



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