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嵯峨野の宝筐院の墓前で感じたこと

 昨日訪れた宝筐院。実は今月2回目のご案内だった。もちろん、紅葉目当てでこの時期は訪れるんだけど、このお寺の一番の見所は、敵同士であった楠木正行と足利義詮が並んで眠っていることだ。これは生前に楠木正行を慕った義詮が、自分が亡くなったら正行の横で眠りたいと遺言したからだという。

 1回目と違ったのは、その数日後に、四條畷駅から飯盛城を攻城するツアーを実施しており、楠木正行のお墓をお参りしていたこと。祭神となっている四條畷神社へ参拝していたこと。もちろん四条畷の戦いについても現地で語っていた。だから2回目のご案内は、1回目とはまた質が違うものになった。

 具体的には楠木正行の戦いぶりを現地にいっているので、よりリアルに伝えられたこと。5万の軍勢を率いてきた北朝の高師直に対して、南朝の正行は2千の兵で立ち向かった。それだけを見ると玉砕に近いが、本当にそうだったのかという話。それまで無敗で破竹の勢いであった正行が、最後にそんな無謀な戦いをする必要があったのかどうか。このような現地で感じた空気を、別のタイミングでまたガイドに生かせるのはとても大きいと感じた。

 もうひとつ、話していて気が付いたけど、楠木正行にはカリスマ性のある「正成」という父がいて、義詮には圧倒的人望を持つ「尊氏」という父がいた。つまりお互い、偉大な父親をもつ二世だということだ。義詮が敵である正行を慕ったのは、もちろんその人格や戦いぶりに共感したのもあるだろうが、二世がもつ悩みや焦り、苦しみなどにも想いを馳せていたからではないだろうか。わかりあえる心友ともいうべき絆を感じたのでは。そんな風に想像してみた。それをお客様にもそのまま自分の言葉で伝えた。その日のガイドで一番お客様を引き込んだ瞬間だった。

 これはガイドをしている時にふと感じたことであって、あらかじめ用意していった話ではない。このように、語る中で発見すること、自分の内なる声を拾えたり、事実と事実が意外な形で繋がったり、アウトプットすることは、思わぬ学びになることが多い。ガイドを続けている一つの大きな楽しみといっていい。日々発見があり、それはやっぱり現場で得られる。今回のガイドでも改めてそれを感じた。宝筐院、ぜひ行ってみてほしい。

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