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チームにスキルマップを導入した話

はじめに

こんにちは。ラクスフロントエンドチームの松本です。
私たちのチームでは今年度(2022年)スキルマップを導入し、約1年に渡ってスキルマップの運用をしてきました。
この記事では、スキルマップを導入するに至った経緯や、実際に導入した際のポイント、そして導入後の効果や問題について、具体的な実例を交えて紹介します。

スキルマップとは
スキルマップとは、チームメンバーが持つスキルや経験を可視化し、共有を図るための手法です。一般的には、スキルや経験値を見える化することで、チーム全体の生産性向上・スキルアップが期待できると言われています。

スキルマップの導入背景

私たちのチームは自社で展開する複数のプロダクトに、チームメンバーが分散する形でそれぞれ参画しています。開発状況によっては、普段担当しているプロダクトとは、別のプロダクトへスポットで参画することも求められます。また、新規に参画するプロダクトではどのメンバーを参画させるべきか判断が必要です。そのため、

  • メンバーがどのプロダクトに適したスキルを有しているか把握したい

といった課題が昨年度の時点で挙がっていました。
また、1つのプロダクトにのみ参画しているチームメンバーからは、

  • ある程度業務が固定化されているため、自身が習得したいスキルや経験を積む機会が少ない

といったモチベーションの低下に繋がる問題も挙がりました。

そこで、私たちのチームはこれらの問題解決のため、参画するプロダクト開発にフィットしたスキルマップを作成・導入することにしました。

スキルマップの導入方法

1. 必要スキルの洗い出しと整理

実際に作成したスキルマップを抜粋した一例です。

洗い出したスキル

まずは私たちのチームが会社やプロダクトに求められている素養を「大分類」「中分類」として抽出し、「等級」毎の必要スキルを洗い出しています。
「スキル」には具体的な状態を設定することで、目指すゴールのイメージが湧きやすくなります。また、所属するチームメンバーの1つ上の等級のスキルを用意しておくこともオススメです。

2. 達成条件の設定

何を以って達成したと言えるかを「達成条件」として設定しています。

達成条件の設定と習得のためのヒント

達成条件には何かしらのアウトプット/業務経験(入社前含む)があることを原則としています。(例:「個人的に家でやっています」はNG)
※「ある程度の業務経験を有している」のように、抽象的なので評価し辛く感じますが、後述の「4. 運用ルールの作成と運用開始」で補足します。

また、必要に応じて「習得のためのヒント」を用意して、達成までの過程で役立ちそうな書籍やURLを共有しています。

3. チームメンバーの現状スキルの把握

スキルの洗い出しが完了したら、チームメンバーの現状スキルを把握するために、最初の自己評価を入力します。

スキルマップに自己評価を入力

自己評価は各スキルに対し「〇」「△」「×」を付けています。評価記号毎の評価内容は以下の通りです。

評価内容の詳細

評価記号毎に「評価点」を割り振っています。この評価点は、チームやチームメンバーのウィークポイントの分析や、目標値を設定する際の指標として活用しています。
例:○○分類の総評価点は比較的チーム平均が低い⇒3カ月後にチームで+10点取れるように施策を入れる

4. 運用ルールの作成と運用開始

これまでの工程でスキルマップは完成したので、運用方法やルールを作成します。私たちのチームでは、以下の要領で毎月の運用をしています。

運用計画のイメージ
  • 当月の自己評価

    • 月末時点の当月の自己評価を入力

    • スキル毎の自己評価の入力と、評価の根拠の記載

  • 来月の目標設定

    • 月末時点の来月の目標を入力

      • 来月末時点の目標値を「〇」「△」「×」で設定する

    • スキル毎の目標の入力と、目標を実現するための具体的なアクションを記載

  • チームでの振り返り会

    • 当月の自己評価/根拠を報告する

      • 自己評価と他者からの評価にギャップがある場合は、自己評価を上方修正 or 下方修正する
        ※達成条件が抽象的なスキルの場合、この工程を経てfixする

    • 来月の目標/アクションを報告する

      • アクションにさらなる助言が必要であれば、チームメンバーからフィードバックする

スキルマップによる効果

運用ルールに沿って約1年間運用し、私たちのチームは以下の効果を得ることができました。

1. プロダクトへのリソース投入の最適化が可能になった

スキルマップへ毎月自己評価を入力してもらうことで、チームメンバーの得意/不得意や、対象スキルのレベル感が常に最新化された状態で見える化できています。結果として、「プロダクトに急遽1人追加してほしい」みたいなニーズに対しても、スキルマップベースで適したメンバーを選定することができるようになりました。

例:EOLの対応が得意なのはAさん

また、「現状プロダクトを担当するためのスキルが不足している」ケースでも、習得する必要のあるスキルが明確になっているため、参画を見据えた準備がしやすくなりました。

2. チームメンバーのスキルアップの促進

運用ルールで「毎月目標設定、振り返り実施」を原則としていたため、比較的短いスパンでスキルアップを実感することができましたし、他メンバーに対して競争意識が芽生え相乗効果にも繋がっていると感じています。
また、自身のレベルよりも上位レベルのスキルを確認できるので、「達成したら終わり」ではなく、さらに上位を狙うようなモチベーション向上に寄与していると考えます。

3. キャリアアップのフォロー

ラクスの開発エンジニアのキャリアパスは、大きく分けて「マネジメント」「スペシャリスト」の2つのコースに分かれます。(チームメンバーが将来的にどういうキャリアパスを望んでいるかを尊重したうえで)「スペシャリスト志望なら○○のスキルアップが期待できる業務にチャレンジしてみよう」など、キャリアパス/スキルマップ/業務を紐づけて、チームメンバーをフォローすることができます。

4. 関わりの少ないメンバー同士のコミュニケーション改善

スキルマップ導入以前は、前述したようにチームメンバーそれぞれが担当プロダクトが異なるので、各人がどのようなスキルを保有しているか明確には分かっていませんでした。スキルマップを通して保有スキルを共有し合うことで、「○○さんはこのスキルを習得するためにどんな工夫をされました?」とアドバイスを求めるなど、関わりの少ないメンバー同士のコミュニケーションが生まれています。

スキルマップ導入による問題と対策

約1年間の運用を経て、遭遇した問題、また今直面している問題がいくつかあります。

1. チーム全体のスキルアップの滞り

最初の半期はどうにもこうにもスキルが伸びない月がありました。原因は各々が伸ばしたいスキルを目標値に設定し、業務の中でスキル習得する機会がなかったことです。伸ばしたいスキルを向上させるのももちろん大事ですが、与えられた役割・業務の中で必要なスキルを向上させることも大事です。

対策
半期または四半期ごとに自分が携わる凡その業務の見通しが立つので、その業務の中で習得可能なスキルを目標値に設定することで着実にスキルアップに繋がります。下半期にこの対策を導入し、実際に大幅なスキルポイントが上昇したメンバーがいます。

※伸ばしたいスキルを向上させることも大事なので、別途フォローは必要です。

2. スキルマップに不足しているスキル

業務を進める中で、「この観点のスキルがスキルマップに不足しているよね」という話が度々挙がりました。導入当初に作成したスキルマップは当然完成系ではないので、継続的にメンテナンスしていく必要があります。

対策
半期または四半期ごとにスキルマップに不足しているスキルを追加し、実態に即したスキルマップを目指します。

3. 毎月の目標設定の壁

時期によっては繁忙期でスキルマップの更新や振り返りが滞ったり、目標のスキルレベルが上がると到底1ヶ月では達成できないため、毎月の目標設定が難しいケースがありました。この状況で無理して取り組んでも、却ってチームメンバーのモチベーション低下に繋がる懸念もあります。

対策
目標設定と振り返りのスパンを状況に応じて見直します。チームメンバーの負担にならないかつ、前向きにスキルアップに取り組める適正間隔を今後設定していこうと考えています。

まとめ

特に今年度は導入期でしたので、気合を入れて運用をしてきて、上記で挙げた効果をしっかりと得ることができました。当然、次年度以降もスキルマップ運用は継続していくので、業務との折り合いを付けつつ、業務の中でスキルアップできる仕組みを継続的に整えていきます。


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