【詩】壁の烏

あの日私は
烏になるしかなかった

誰もが誰もを監視しながら
町は少しずつ錆びていった
かわいい動物たちは捕まえられて
家の中に閉じ込められた
優しさ柔らかさ甘さ誠実さ
それらはすべて記号化された
逃げ出そうとするものは追い詰められ
記号で縛られて晒された

あなたは町の外にいた
烏になって飛び出すしかなかった
監視されないもの
かわいくもないもの
あきらめてもらえるもの
それは烏だった

烏は監視されなかった
鉄のにおいから飛び立って
壁を越えていく
あなたのところへたどり着き
見てしまった
あなたは誰かを監視して
誰かを晒していた
私には気づかずに黙々と
そうやって世界とかかわっていた

あなたには会わなかった
私は飛び立てるし
私は沈黙できる
私は忘れ去られて
私ではなくなるだろう

私は今壁の上にいる
戻るでもなく
進むでもなく
錆びていくものたちから離れて
烏として微睡んでいる
そして今
他の烏たちが
私を監視している

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