【感情について】

 「感情」には、明確な大きさ、重さ、位置がないため、歴史上長い間考えられてきているにもかかわらず、明らかになって事がそれほど多くないと言える。
 
まず「表情」は、「顔面表出」と言われて、「感情心理学」が扱うものの一つである。研究から、表情とは基本的にヒトという生物に生まれつき備わっているものであり、その表出と認知のパターンは、文化によらず普遍的であるとの主張がある。P.エクマンは、幸福、怒り、悲しみ、嫌悪、恐怖の6つの感情を「基本6感情」とし、概念として確立させた。そして、その際の顔面表出を、「アクション・ユニット」という形で定義した。それは、感情ごとの表情の動きの組み合わせ表であり、この感情と表情の対応関係によって、感情がメッセージとして伝達されるというコミュニケーション論の考えが生まれた。
 
一方、それに批判的な立場として、相手からのメッセージの解読には、それまでの経緯や環境などの文脈情報を重視する立場もある。その場合、「コン・テキスト(文脈)」が重要視され、感情と表情には対応関係はない。
 
また、H.シュロスバーグは統計的な分析から、「快-不快の次元」、「覚醒-睡眠の次元」という2つの次元で表情を記述する方法を発見し、「シュロスバーグの円環」と呼ばれる図が生まれた。
 
感情の役割としては、人は、自分では気づかない「気分」や「情動」に認知が影響される。その現象の一つに「気分一致効果」がある。それは、ポジティブな気分の時には、ポジティブなものが目につきやすく、ポジティブな時に覚えたものはポジティブな時に思い出しやすい、というもの。ネガティブな場合も同様だ。それは、気分が無関係なはずのものを結びつける感情の働きである。
 
また、感情の働きとして、よい情報と悪い情報が提示された場合には、悪い情報に引っ張られる「ネガティビティ・バイアス」というものがもあることも分かっている。これは、一種の防衛機能として、害をより避けれる方向に適応している機能ではないかと言われている。
 
また、「単純接触効果」という、繰り返し接したものに対してを好ましく感じる機能も知られている。

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