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猛暑の日本に来てしまった超暑がりなゲスト

通訳ガイドのぶんちょうです。
外歩きが仕事のガイドにとって、厳しいを超える危険な状況のこの頃です。

帽子、日傘、小型扇風機、ネッククーラー、凍らせたペットボトル、アイスパック……。それらの合わせ技。

ありとあらゆる対策を毎年試みますが、正直なところ、焼け石に水状態です。夏場は毎日のように軽い熱中症です。頭痛程度で済んでいますが、今年の暑さはこわいなと感じます。連日の35度超えは、身体に休憩の余地を与えてくれない……。

コンクリートからの放熱もあるので、発表されている温度よりも実際は高いのではないでしょうか。車が表示する外気温は40度になりますから。

また、暑さに対する耐性は個人差が大きいので、自分の基準で人を行動させるのも危険です。

通訳案内士のお相手であるゲストは日本の気候に慣れていないので特にそうです。気温の問題よりも、むしろ湿度でやられる人が多いです。

おまけに彼らは時差ボケによる寝不足を抱えていることが多いです。

日本に来るためには船客以外、ほぼ全員、長時間フライトの洗礼を受けます。長旅の疲れを癒すのに必要な睡眠は、時差のせいで上手く取れない。

しかも、初めての日本!となれば身体は休みを欲しても、気持ちは高ぶっていて、ますます眠れないのはあるあるです。

そんな感じで初日のツアーを迎えることが多いのです。

先日のLAからのゲストは、そんな状態に輪をかけて、特に暑さに弱いタイプの方でした。午前中の気温が上がりきる前の時間帯に15分も歩いたところ、もう無理と涼しい車の中に駆け込みました。

なるべく地下を通り、屋内の観光を選ぶのですが、毎晩のように、今日は暑くて死にそうに疲れたよ。ホテルに帰ったら、そのままソファで3時間眠っちゃった。などとメッセージがきます。

長く歩くような場所は極力避けているので、私にとっては、ほとんど汗をかかない、歩かない、の超快適ツアーなんだけど……。ツアー全体の時間も2時間位短縮して、休憩も1か所観光したら小1時間、涼しいカフェで休憩して位のゆるゆるペース。

その方たち、決して虚弱な方などではなく、筋肉質の引き締まった身体の40代後半の人なのです。でも、見た目ではわからないですからね。

ツアーはめちゃくちゃ楽しんでいて、行く先々ですごい、きれい、素晴らしいの連発なのだけれど、スイーツを買うための5分も日なたでは待てない。

あわてて車に戻り「あー涼しい!ここが1番好きだわー」と。そ、そんなこと言われても。いっそのこと、車窓オンリーにするか。いやいや、それでは何のために日本にその足で降り立ったのか。

挙げ句の果てには、「あのさ、ここ行かなきゃだめ?」と聞かれました。いやいや、それじゃまるで私は嫌がる観光客を無理矢理、連れ回す鬼ガイドみたいじゃないのさ!……とは口にはしなかったけど。

3日間そんな状態で、日陰求めてさまよいました。翌日から箱根へ移動となった前日の夜、アメリカ人のボスから電話がありました。

何の件かの察しはすぐつき、既に練ってあった対策を伝えました。とりあえずロープウェイはエアコンないので中止、歩くような場所は全てカット。早めの旅館入り。

それでいいとボス。それより、この先の京都が心配だと伝えると、「うん、わかってる」と言ったきり無言。頭抱えてる様子が電話越しに伝わってきます。とりあえず京都は私の担当外なので、それで会話は終わりましたが。

箱根は、標高の高い大涌谷辺りは東京よりは涼しく、ご機嫌で過ごしたもらえました。私もホッ。大涌谷名物、黒たまごを2個も食したゆえのパワーか!

でも箱根湯本の街の炎天下で、かき氷ができるのを待たなければならない時は、ヒヤヒヤものでした。初かき氷は気に入ってくれて、食べた直後に車にダイブ!セーフ!

毎日、大幅にカットされた旅程でしたが、「今までの人生で一番暑くて疲れた旅行だった。でも、人生でいちばん面白かった」そう。日々の会話はこんな感じだった。

ゲスト「明日は何時から?」
私  「9時だけど、大丈夫?」
ゲスト「うーん。9時半がいいな」
私  「いいよ。じゃあ、9時半ね」

帰宅後、メッセージがゲストから来る。
  「やっぱり10時にしたいな」

って、魚市場のセリじゃあるまいし、じわじわ数字上げていかないでよ!

無事ツアーは終わり、なるべく歩かせないようにと、全面的に協力してくれたドライバーさんにめちゃくちゃ感謝して、一緒に帰路につきました。

こんなゲストだったから、暑さの面では私も救われましたが、暑さどんとこいタイプのゲストが来たら……。「ねえ、ここ行かなきゃだめ?」って私がゲストに聞きたくなりそう。身の安全確保のためにも休憩を多めに入れるしかないですね。おーい、太陽くん。そんなにがんばらなくていいよ!




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