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資格は必要か 資格大国日本

通訳ガイドのぶんちょうです。12月12日の日曜日は国家試験、全国通訳案内士試験の最終選考日でした。日本は資格大国と言われ、国家試験の数だけで300近くあります。

民間の試験も盛んで、英検とTOEICは例年受験者数のトップになっています。調べると、その他で受験者の多いのは、運転免許、情報処理、宅建、簿記、ファイナンシャルプランナーなどがありました。

私の周りにいる同業のガイド達は、コロナで仕事がなくなったことで生まれた時間を勉強に充て、第二、第三の外国語の試験に挑戦したり、仕事関連の資格を取った人がかなりいました。

ところが、今年の通訳案内士試験の受験者数は減少しました。長引くコロナの状況から観光業、特に外国からの観光客頼みとなるインバウンド関連の職業が敬遠されたのではないかと私は推測しています。

この「資格」というものを取る動機は何なのか。と言うことについて考えてみたいと思います。資格の種類によって動機は全く違うと思いますが、まずガイド試験についてです。

ガイド試験で、よく言われているのは語学系での唯一の国家試験だということです。この国家試験に通らないとガイド、すなわち有償で訪日外国人を案内すること、ができないのかと言うと、そうではなく、実はできるのです。

数年前に法改正があり、無資格でもガイド業を堂々とできるようになりました。これにより、今まで違法だとメディアでよく騒がれていた一部の中国人のガイドも合法になりました。

誰でも外国語でホームページを作ったり、何らかのプラットフォームでフリーランスのガイドとして登録をするなどをして集客すればガイドをする方法はいくらでもあります。

となると資格はいらないと言うことになりますが、日本人ガイドの場合は圧倒的に資格持ちが多いのです。これはガイドのほとんどが大小のエイジェント経由で一件一件、仕事をもらっているケースがほとんどだからです。

エイジェントは基本的に有資格ガイドを雇用します。つまりエイジェントがガイドを雇う時のふるいになっているのがガイド資格なのです。

次に語学試験で人気の英検やTOEICはどうでしょうか。英検は、ほとんどの中高生が学校で取らせられると言っていいと思います。大学生以上になるとこれが急にTOEICになります。

中高生の英検は試験勉強そのものが目的です。英検を受けるために単語を覚えたりすることで学力の増強を図るものです。

現在は、高校生が英検を取得するメリットは、大学受験の際に点数加算されることもあります。これは必要に迫られるパターンで、大学生のTOEICと同じです。履歴書の資格欄をさみしくしないために少しでも高得点を取って就職の際のアピールポイントとすることがねらいです。

つまり、これもガイド試験同様、企業側が求めていることに応じる結果です。他の資格試験については詳しくはわかりませんが、資格が絶対に必要な職業以外は、企業が求める理想像に近づくために資格を取る人が多いはずです。

ガイド試験の話に戻すと、この試験が採用側の求めるものである他に、自己鍛錬の意味合いもあります。高校卒業した段階では平均して英検2級程度の保持である場合が多いのですが、その後、準1級や1級は英語の実力を試したり、伸ばしたりしようという積極的な姿勢を持っている人が多いです。

ガイド試験を英検やTOEICの先に位置づけている人はかなりいます。つまり職業としてガイドはするつもりはないけれど、自分の語学の向上のために、試験合格という新たな目標を設定するケースです。それが同時に、英検やTOEICと同じように語学の証明となるので、モチベーションとなり得るわけです。

同じような語学方面でも通訳者、翻訳者になるための国家資格はありません。エイジェントが独自に試験をして合否を決めます。資格と、多くの場合、実績があれば採用となる通訳案内士とはずいぶん違うと感じます。

本来、実力があれば資格は必要ないのでは?とも思うこともあります。普通の企業では資格を色々持っている人よりも現場で優れた仕事をバリバリこなすケースは多くありますよね。

それでも、資格を持つことで資格に恥じない知識を身につけ、自己研鑽の手段となっている資格試験は、努力型の日本人の気質に、実は合っているのかもしれません。



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