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90年代ガールズカルチャーからみるnewjeans

 久しぶりに韓国の女性アイドルグループであるnewjeans(ニュージーンズ)にどハマりしている!

メンバーは左からHYEIN(ヘイン)、HANNI(ハニ)、DANIEELE(ダニエル)、HAERIN(ヘリン)、ミンジ(MINJI)


newjeansというグループ名は

時代やトレンドを問わず老若男女みんなに愛されてきた"ジーンズ"というアイテムのように日常に密接し、時代のNew Genes(新しい遺伝子)”になるように

という由来だそう。


その名の通り、newjeansはこれまでのK-POPの在り方からは一線を画している。その新しさは楽曲、MV、ファッション、ダンス、グッズ関連、プロモーションなど多岐に渡る。newjeansに重要なインスピレーションを与えているであろう存在が、90年代ガールズ・カルチャーだ。

90年代ガールズ・カルチャーとは

米国ワシントン州オリンピアを発信源に登場した女性の社会的、政治的、経済的地位の向上と性差別の廃止を主張するフェミニズム運動「Riot Grrrrl(ライオット・ガール)」を背景に、一大ブームを巻き起こしたカルチャーのこと。「X-girl」を立ち上げた「Sonic Youth」メンバーのKim Gordon(キム・ゴードン)などが牽引し、フランスのファッション誌「Purple」やMike Kelley(マイク・ケリー)など音楽・映画・アートといったクリエイティブな分野で様々なカルチャーが発信された。


私自身も学生時代、このガールズ・カルチャーに多大な影響を受けていたうちの1人だ。
そしてnewjeansの活動を見ていると思い出す、この時代を牽引してきた2人の女性がいる。女性写真家ヴァレリー・フィリップスと映画監督のソフィア・コッポラである。
今回は彼女たちにフォーカスを当て、紹介していきたいと思う。



まずはニューヨーク出身の写真家ヴァレリー・フィリップスである。

ヴァレリー・フィリップス Phillips, Valerie
ニューヨーク生まれ。クラスメイトや家族など身近な人々のポートレートを撮影しながら写真家として活動を始める。女性同士の共感とともに踏み込めるティーンの奔放な日常と、健康的なセクシーさを捉えたカラースナップや、ガーリーな躍動感のあるファッション写真は、エレン・コンスタンティンなど、90年代後半の世界的な女性写真家ブームの渦中で注目を集めるようになった。

90年代、世界中で女性若手写真家が活躍した。この一大ブームは「ガーリー・フォト」と呼ばれ、彼女はその牽引者の1人である。
その時代活躍した他の女性写真家と同様に、彼女の被写体はクラスメイトや家族のポートレイトだった。


写真の中の女性たちは、ごく自然な姿を捉えられている。
体毛をありのままの状態にしていたり、裸体も写されているが、そこには異性を意識した”性的な”セクシーさは体現されていない。あくまで女性同士で、「こういうのってかわいいよね」と共感し合うような、ナチュラルな姿を提示してくれる。
newjeansの楽曲ではよくイントロ部分でメンバー同士で会話をしている。その様子からも、外側に打ち出したい強いメッセージはなく、あくまで友達同士の無邪気な会話の延長線にある世界観を表現したいのではないだろうかと思う。



もう1人は90年代ガール・カルチャーの火付け役であるソフィアコッポラである。

ソフィア・コッポラ Sofia Carmina Coppola
アメリカ合衆国の映画監督、プロデューサー、脚本家、女優、ファッションデザイナー。「ゴッドファーザーPART3」(89)でアル・パチーノの娘役を演じた。その後、写真家やデザイナーとして活躍し、自ら脚本を手がけた「ヴァージン・スーサイズ」(99)で長編映画監督デビュー。 2003年公開の『ロスト・イン・トランスレーション』でアカデミー脚本賞を受賞した。長編第3作「マリー・アントワネット」(06)を経て、「SOMEWHERE」(10)はベネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞。ハリウッドを代表する女性監督として地位を確立し、「ブリングリング」(13)などで女性主人公たちを生き生きと描いた。「The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ」(17)ではカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞。


彼女の作品の中でも、ガールズ・カルチャーの先駆けとなった「ヴァージン・スーサイズ」は、newjeansの楽曲、コンセプトをしばしば彷彿とさせる。
この作品はガーリーな世界観と、それとは対照的なショッキングなシーンが印象的で、少女たちの可憐さと儚さ、光と影の部分を繊細な映像と音楽で表現している。
物語の主人公であるリズボン家の姉妹は、その美しい容貌から少年たちと交流するが、決して入り込めない少女たちだけのミステリアスで、繊細な感性の中で生きていた。
撮影はソフトフォーカスの画調で少女たちを柔らかく映し出していて、これはnewjeansの「ASAP」への影響を伺える。


newjeans「ASAP」MVのワンシーン

newjeansのプロデューサーであるミン・ヒジンは、これら90年代ガールズ・カルチャーの影響をもろに受けた1人であろう。newjeansは、その音楽性の高さから一部の中高年男性ファンが現れ、彼らのことを「newjeansおじさん」と称することが話題になっているが、このガールズ・カルチャーの影響によって、30〜40代の女性の心をも鷲掴みにしているはずだ。


また、BLACK PINK、ITZYなど、K-POPのアイドルグループの属性として知られるガール・クラッシュは、同性である女性から見て「憧れ」の対象となるような印象をもつことであるが、newjeansのガールズ・カルチャーはあくまで「共感」に着目しているのではないかと思う。そこが現在のSNS全盛期にみられる「共感」の時代にフィットしているのはないかと思う。




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