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無の境地。

当業界人が言うのもなんだが、どう考えてもこの夏期講習という輩は、効率が悪い。
カンキツが、呟いた。
四日サイクルがベストなのだ。
そこを、一日、多いことによって、すべてのサイクルがおかしくなり、そこら中に脱落的残骸兵が点々と転がりはじめていた。
ただ、ただ、教室の天井を仰ぎみる者。
へらへらと笑い続ける者。
ひたすら、しゃべり続ける者。
トイレに駆け込む者。
塾から遠ざかる者。
あらゆる、策を講じたが、最終的に十七日めにして、辿りついたものがある。
一日三枚というハードルを設け、
そこを突破するまでは、私語厳禁というものだった。その間、カンキツもお手本の作文を綴る。四百字を九分という尋常ではない速度。
完全に、素人ではなかった。
勿論、塾業界としても、そんな人間、他にはいなかった。
自認している異端児。
その後、無の状態で、生徒たちの作文が仕上がるのを待つ。
すべての質問を、無視した。

終わった者から、添削し、その間に、自らの作文を読ませ、感想とともにそこから湧き出たideaを元に次の課題作を与える。
できる者しか、前に進めない。
一気に教室内の空気が締まりはじめていた。

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