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『初心者向けのコンテンツ』を作るために意識すべきこと

『初心者向けコンテンツを作る』

一見言葉にすると簡単そうですが、ある一定のジャンルに深くのめり込んでる人ほど、うまくまとまらず挫折することが多いです。

これを読んでくれてる方の中にも、ゲームを始めようとしてくれてるカジュアル層向けの解説をしようとした時に「あれ?上手く伝わらんな??」と疑問に思ったことが結構あるんじゃないでしょうか。


僕は普段、スマブラに関わるお仕事やコンテンツ発信を生業として生計を立てていますが、活動の一環でもあるYoutube動画テーマの一つに初心者向けの解説というものがあります。

今でこそ一定の評価をいただけるようになりましたが、スマブラ攻略サイト『Smashlog』向けに初心者用の記事を書こうと乗り出した時は

「初心者ってどこからどこまでが初心者なんだ・・・?」

とひたすらに悩んだことを覚えています。

SPから新たに参入した新規勢の心情をうまく捉えることができず、初心者のためにどんな内容でまとめれば良いのか分からない、フワフワとした状態が続いていました。


switch発売以降、新作ゲームは凄まじい勢いで発売され、スマブラ以外でも前作をプレイ済の上級者、もしくはゲームが得意なプレイヤーが作る「初心者向け」と名の付いたコンテンツが数多く展開されてきています。

しかし中には、明らかに初見には理解が難しい内容を含んだ、所謂ガチ勢向けな内容のコンテンツも多く、入ってきたばかりのライトユーザーにとっては専門用語が多すぎてゲームの敷居自体が高く思えてしまうでしょう。オートキャンセル?ベクトル変更?何それ??みたいな。


そこで今回の記事では、自分なりにスマブラSP界隈を調べ仮定した初心者を含めたプレイヤー層の定義と、その初心者向けのコンテンツ作りに適した要素の決め方について解説していきます。

スマブラSPの経験元に解説するため別界隈の方には少し伝わりづらいかもしれませんが、なるべく専門用語を使わずに話していくつもりです。


『初心者』はどういったプレイヤーなのか

そのジャンルのゲームに触れたことない人=初心者。これは揺るぎない事実でしょう。

しかしどのラインまでを初心者と捉えるのかは人の解釈によって分かれるので線引きが非常に難しくなってきます。

大体の場合「初心者・中級者・上級者」の3つに分類することが多いと思いますが、スマブラの『世界戦闘力』を元にこの3分類を平均化すると…。

✔初心者=世界戦闘力10,000(逆VIP)〜400万
✔中級者=世界戦闘力400〜800万
✔上級者=世界戦闘力800〜1220万

となります。

世界戦闘力とはスマブラ独自のシステムで、自分の実力が他のユーザーを何人上回っているのかというものを数値化したものです。

しかしこのゲームは400万〜VIP到達手前の1000万までの実力に大きな差はありません。一方で最上位の1200万代は数万単位で実力が大きく変わります。そのため数字を均等に割って実力を判断するのは不可能です。


またそれ以前に、スマブラ始めたての初心者戦闘力200万付近(逆VIP)で普段から対戦しているプレイヤーとの間にも操作面において非常に大きな差が発生しています。

僕は以前チャンネルクロスという番組で『始めたばかりの初心者にスマブラを楽しく覚えてもらおう!』という企画に抜擢されたことがあります。

その時は「とりあえず楽しんで勝ってもらうために、クラウドの強いワザの組み合わせを中心に教えよう!」と気楽に考えていました。

しかし始めたばかりのプレイヤーは、そもそも画面外に出された時の復帰がままならないという状態に直面していました。


考えてみれば、僕も小学生時代神殿で4人乱闘をするのが当たり前だったので、終点化&アイテムなし環境にいきなり放り込まれたら復帰が出来ないのは当然なんです。

ダメージを溜めて相手を吹っ飛ばす。そのゲームのシステム自体は簡単ですが、攻撃(A)と必殺技(B)の違いがそもそも分からず、外に出された後に安全に復帰する方法も知らない。なんならシールドや回避を使うタイミングすら理解できない。それが本来の意味での初心者だったのです。

こういった理由で、対戦を普段からしっかりやっているプレイヤーと始めたてのプレイヤーを同列に扱うことはできません。


そこで僕は、スマブラプレイヤー像を分かりやすく捉えるため、3つではなく5つに分類することしました。

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この表では大体初心者下位のプレイヤーが一般的な『初心者』上位最上位『上級者』に該当するのかなと思っています。

各項目にはそれぞれ大きな差があると思っていて、次のステップに進むためには一定の課題をクリアする必要があります。初心者から下位に行くにはある程度キャラの動かし方を知る必要があり、下位から中位に行くには強い行動パターンを覚えなければなりません。

人にスマブラを教える時は、相手のレベル帯毎にどこに属しているのかを大まかに把握し、そこから課題解決のための糸口を探るようにしていました。


解説動画で『下位&中位』をターゲットにした理由

人にスマブラを教える時は、相手のレベル帯に合わせて調整する必要があります。初心者に対して「クラウドは空後先端がノーリスクだから振りましょう」と言っても、そもそも空中技をまともに当てられないので全く成長に繋がりません。

同様に、動画や解説記事において全体をターゲットにバランス良く構成するようなことはあまり推奨できません。クラウドの凶斬りを擦れ!って動画を出した後にニュートラルの読み合いの解説をしても、視聴者はどちらを頼れば良いのか分からず混乱してしまうでしょう。

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僕は主にYoutubeで解説動画を投稿していますが、動画コンテンツを作る際は、ある程度視聴者層を絞った上でコンテンツ作りすることを考えました。具体的には、下位と中位の方に向けた内容です。

スマブラはVIPに到達しているプレイヤーの割合が全体プレイヤーの8%と言われています。

現在のVIP到達のボーダーラインが1112万、つまり約9割の1110万人程のプレイヤーが勝率が安定しない未VIP層ということになります。

この中には既にスマブラをプレイしていないor友人と楽しくアイテム戦をするプレイヤーも含まれていますが、それでいてもアクティブユーザーの大半は未VIP層と言う事になります。

一方でスマメイトをプレイしている上位、最上位の割合(レート1500以上)は20期のものでも約1万人。オフライン中心なプレイヤー等、実際に利用していない人もいるでしょうが、未VIP層と比べても圧倒的に少ない人数です。

※スマメイト運営者、のちょうさんのツイートを参考にしました。


このことから多くの方に観てもらうためにはVIP到達~VIP安定を目指す構成にするのがベストだと考え、初心者向けとはいいつつ下位、中位のプレイヤーをそれぞれターゲット層としています。

このままだとゲームを購入したばかりのガチ初心者の方は置いてけぼりになるように見えますが、スマブラで強くなりたいという発想を持つ人は大体の場合競技シーンを見て憧れから入るか、普段から友人等と対戦をしているor逆VIPに既に到達しているかのいずれかであることが多いです。

そういった境遇から『解説動画』を探している時点で下位プレイヤー層に到達しているものと考え、ガチ初心者は対象からは外すことにしました。

※一応動画内ではガチ初心者の方も楽しめる要素を盛り込むようには工夫していますが、それはまた別の記事で解説できたらと思います。


解説するときは必要以上に教えすぎない

ターゲット層に関わらず、人にスマブラを解説するときは必要以上に教えすぎないことを重要視しています。

直接指導する時は「まず〇〇からできるようになりましょう」と軽めに説明し、Youtubeの解説動画もベースは8~10分構成。15分以上のものは基本的に投稿していません。

これは教わる側の立場になると分かるのですが、今直面している問題解決に対して必要以上に情報が入ると大体の場合頭がパンクしてしまいます

あくまでも教わってる立場なので情報が多くて混乱してることも言えず、例えメモを取ったとしても見返した時にどの状況のことだったかを完璧に思い出すことが出来ない状態に陥りがちです。


動画に関しても同様のことが言えます。キャラの解説で30分近くの内容になってしまうと初心者は欲しい情報を抽出することが難しく、観る段階から挫折してしまうでしょう。

例えばホムラ&ヒカリに困ってる初心者のために動画を作ったとします。全部の要素を盛り込んで構成を作ろうとしたら・・・

【ヒカリ】
攻撃に引っかからないようにする方法、空Nのリスクの付け方、正しいベクトル変更、復帰阻止のルートについて、掴みに弱いという弱点、因果律予測に引っかからないコンボの選択…etc

【ホムラ】
ブレイズエンドの避け方、下り空下/上り空後への対処、着地狩り、汎用セットプレー、相手が崖を捕まってる時、自分が崖を背負ってる時…etc

という感じになるでしょう。もしかしたらもっと多くなるかも。

上級者からしたらどれも重要そうに見えるかもしれませんが、いきなりこれだけ並べられても初心者はどれが自身にとって重要なのか理解できません


なので実際に初心者向けに構成を練ろうとした場合

【ヒカリ】
ステップしてるところにダッシュ掴みをしよう!
【ホムラ】
ブレイズエンドの対処法3選!

ぐらいにギュギュっと凝縮した内容にします。解説を3~4分で終わらせて、その後試合で実演してる様子も加えられるとなお良いでしょう。

実際逆VIPの層を観てると、ホムラのブレイズエンドを避けられず苦戦するプレイヤーがとにかく多いです。対策を語る際はキャラの最も強い技や行動に絞り、対処法のパターンを提示(可能なら複数)できると動画の汎用性も高くなります。


ヒトカゲが低いレベルから『かえんほうしゃ』を覚えないように、要素の習得には段階があります。初心者の方が正しく、かつ早く成長できるようにするためには、手順を踏みつつ要素を限定してあげることがとても重要です。


『勝つため』ではなく『楽しむため』の指導を

僕の解説する初心者向けの講習や動画は、多くの上位/最上位プレイヤーの方にとってあまり参考にならない内容になっています。

例え一つの対策を提示したとしても、それはあくまで対策の一つでしかないので相手の対応力次第ではその対策は簡単に攻略されてしまう。これではスマメイトや競技シーンにおいて使うことが難しいので、上位プレイヤーが求める攻略内容としては不十分かもしれません。

しかし初心者がその段階に入るのは非常に好ましいことで、用意した対策を攻略されたら、そこからどのように対処するかの駆け引きが開始します

駆け引きは対戦ゲームにおいて最も面白い要素のひとつで、相手の思考が手に取るように分かる状態で自身の行動が選択できた時、例えがたいような高揚感を得ることができます。


対戦に向き合った初心者は、どういう立場であれ、共通してゲームにおける読み合いや駆け引きを楽しもうとしている。

これはときどさんが執筆されてる本、世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0という本の引用(要約文)でもあります。

初心者は初心者なりに上手いプレイヤーの動画を観て考え、自分もコンボやテクニックを活用して勝てるようになりたい!と思ってくれてる方が多いのです。

しかし自分が使用するファイターの強みが何かを正しく理解できず、相手のキャラに分からん殺しされまくる状態ではストレスが非常に溜まりやすく、駆け引き以前にゲームのことが嫌いになってしまうでしょう。

ある程度読み合いや駆け引きができる状況に初心者が自然に向かえるようにするのは、プレイヤーが一人でも増えてほしいと願う自分からしたらまず先に目指すべき到達点であり、そのための構成をする必要があります。

なので初心者の方にキャラを教える時は最も汎用性の高い行動を、相手のキャラ対策を教える時は状況再現が最も簡単なものをそれぞれ重視して解説するようにしています。

これらの行動を覚えれば勝率は上がり、対策された場合そこから対応幅を広げていく。読み合いを楽しむためのスタートラインとなるのです。

読み合いを楽しめるようになった時、初めて下位プレイヤーは中位プレイヤーに到達し、そこからスマブラの沼にズブズブとハマっていくのです。


おわりに

長くなってしまいました。smashlog時代の約2倍の文量です。

まとめになりますが、初心者向けの解説を行う際に重要なのは

〇『初心者』がどの位置にいるのかを正しく理解する
 (必要であればプレイヤー層の分類もする)
〇課題に対し必要以上に教えすぎない
〇読み合いや駆け引きが面白くなる状態に導いてあげる

の3つです。基本この考えをベースにすれば初心者向けの構成はまとまりやすくなるハズです。


話は変わりますが、ありがたいことにnoteの記事が好評だったのでこれからも定期的に記事の更新は続けて行こうと思います。内容は動画内で扱えないスマブラのコアなテクニック読み合いや駆け引きの解説だったり、Youtubeを育てるために必要なスキルのことを中心にやっていくつもりです。

それではまた次の記事でお会いしましょう~。

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