青いブラックホール
こんにちは。
どくのうまみと申します。
気付くとガソリンのメーターが1目盛りしかない。職場の近くのセルフスタンドで給油しようとしたら、店員さんがぬるりと顔を出した。
「もしよかったらなんですけど、
アプリを入れていただくと1円/L安くなるんですよ〜」
「じゃあアプリ入れます」とスマホを取り出すと、
「え、あ、ありがとうございます…」
断られる前提で話しかけたのだろう。
動揺した様子を見せた店員さんとそこで初めて目が合った。
彼女はあまりにも澄んだ青色の瞳をしていた。
小説なんかでは、「吸い込まれそうな」と表現されそうだな、と思った。
「車はこのままで大丈夫なので、詳しくは事務所の方で…」
なんだか全てを失いそうな恐ろしさすらある物言いだったが、ここは名の知れたガソリンスタンドチェーン。そんな悪いことは起こらないだろうと高を括り、彼女について行った。
「足下気を付けてください」
ひとつ段を上り事務所に入る。
「少しお待ちください」
彼女はそう言い残し事務所から出て、奥から大柄の男性店員が現れた。
「お待たせしました。それでは手続きの方、進めさせていただきます。」
しまった、罠だ!
いや、別に手続きなんて誰にしてもらってもいいんだけど、青い瞳のお姉さんは事務所まで案内する係なのか。
目の前の彼の「もしよかったらなんですけど、」だったら、私は「じゃあ」と言っていただろうか。
彼女の瞳が青くなかったら、「時間かかりそうなんでまた今度にします」と断っていただろうか。
そんな考えが、夜勤明けの脳を渦巻いていた。
「ご登録が完了しました。ありがとうございました。」
事務所を出て車まで歩く途中、青い瞳のお姉さんと目が合った。
「ありがとうございました」
彼女は駆け寄ってそう言った。
私はまた、このガソリンスタンドを利用するだろう。
理由はあくまで、職場に一番近いからだ。
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