交換日記2(1)宝石の鍵

<2週目のお題「宝石の」>

ある国の宝石の指輪は、手に入れた人が次々に死に絶える曰く付きの指輪だった。その指輪の持ち主であった王女は、裏切りの末に血縁にあったものに殺され、無念の宿った指輪は、次々と身に付けたものに不幸を授けている。

宝石には意味があるらしい。花言葉に意味があるように、誕生石に種類があるように、石にも効能や解釈があって、その中でも特に希少な石については、この世の中でも最上位の価格に設定されている。

「宝」であるなら、公共的な希少価値だけでなく、僕らの記憶の中にある大切な石、この石は僕らにとってただ一つのものであると信じられるものがあり、それはその人にとって、価格以外での、解釈に溢れる石になるだろう。

念じることに意味があるなら、信じることには意味があって、僕らが信じるお守りや、身に付けるピアスやネックレスにだって、それぞれの記憶があり、そこに解釈が宿る。

あなたとお揃いであるこのネックレスに一つの意思があるように、僕らの手に入れ身に付けたものには、期待する価値が宿り、信じる意味を宿して、独自の価値を生んでいる。

宝石になるための鍵がある。それは誰かとの記憶である。あなたから贈られた、あなたが送ってくれた念と意思によって、僕らの石には解釈が宿る。大切にしようという意味がある。それはこの世界では「贈り物」と呼ばれる。

宝石になるための鍵は、あなたがくれたというこの記憶と、選んでくれたという石と意思と、共にあろうとする解釈によって、僕らが一緒にいるための証になる。

炭酸ソーダの雨が降る夜、あなたが隣にいたあの日。僕らは共に宇宙の意思が宿る惑星みたいなネックレスを携えて、そこに共同の意思を宿すみたいに、お互いに石を身に付けあった。

世界は滅んだみたいに人も疎らで、静かな海辺みたいな月の夜、息を潜めるみたいに歩いて、僕らは共にあるのだという意思を確かめ合うみたいに、そっと手に触れては笑った。

あなたが共にいたという記憶が、僕らにとっての宝石の鍵だった。

つまり、あなたが鍵だったのだ。

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