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才能の手紙

「才能なんて有るのだろうか。その切符が無ければ、これ以上書いていいのか分からない、無いならそれでやめておきたい、だけれどどうせ諦められないなら才能があって欲しい。才能分析をしなければ、性格テストを受けなければ、占いで運勢を見なければ、向いている? 才能は? 本当に? それでもまだ信じられない。そして例え才能が、性格が、資質が、もしも本当にないのだとしても、占い的に紙類はNGとか言われても、そんなことで諦められない」

「10年書き続けているそこの君、そう君だ、木星人は紙がNGだし言葉を扱う文筆業もタブーとか言われてしまったそこの君、それでも諦められずネットなら良いのではと未だに言葉の世界にしがみ付いているそこの君さ。僕は10年後の未来から来た。10年前というと、まだ米津玄師がハチという活動名でこれからネット上を騒がせる前、ボーカロイドが発明されてニコニコ動画が盛り上がる途上、カラオケのランキングやJOYSOUNDにネット発の音楽が踊り始める前夜、森見登美彦はまだ病まずに文章を書いていて、逆に君は病んでもはや生きる意味とかこの先どんな仕事をしたら良いのかとかよく分からなくなる前かな? いつかハチさんが米津玄師という本名でPVで踊り出すとか言っても君は信じないだろうし、ボカロ発のn-bunaヨルシカが若者たちに人気と言われてもまだ名も知らぬだろうし、エルレが復活するとか古川本舗が活動休止とか言われても半信半疑だろうし、軽音サークルに入り浸っていた君が最近音楽が無くても歩けるようになったと言っても疑うだろうし、SNSの読者が100人を超えているとか言ってもよく分からないだろうし、新海誠の新作がジブリに並ぶとか言われても本当かよと思うだろうし、君が異性と修羅場になるとか言われてもそんな勇気はないと思うだろうし、いつか君に大切な人ができて花火を見に行ったりするよと言われても、まだ誰とも付き合ったこともないやとか言うかも知れないけれど。

君はどうやら、それなりに働き、それなりに文章を書いているよ。たぶんギターもそこそこの腕になっているよ。相変わらず友だちは少ないけれど、誰かに何かを伝える勇気はできたよ。

君がいつか才能や運勢に悩んだ時の、何周も廻って確証が欲しくて延々と才能分析や性格テストや占星術を調べ続けた毎日と、きっと君の毎日書き続けて弾き続けた努力は確かに小さな芽を出して、誰かに褒められる日が来るよ。

だから君は、いつか、何かを作りたいんだと思ったその気持ちを、どうか捨てないでいて」

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