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Dear Bride

高1。遠足のとき初めて言葉を交わした。
エヌは覚えてないと言ったけど、わたしは仲良くなりたいと思ってた。

2年生になって、わたしが引っ越してから毎日いっしょに学校に行った。

向かい風に逆らって必死に自転車を漕いだ、台風の日。
二人とも汗のせいでポロシャツから下着が透けてたの。
あんなにがんばって行ったのに、遅刻。
担任に必死に言い訳したの覚えてる。

西陽が窓から差し込む静かな学校で、居残り勉強したテスト前の日。
呪文のように化学式を唱えながら、廊下を歩いたよね、
あれ、意外と効果あったみたい。

エヌとわたしを含めた5人で仮装したハロウィン。
オメカシして、長い髪を結って…
ふたりで写真を撮る時の身長差、カップル並み。

深夜に自転車を走らせコンビニを梯子した体育祭前日。
エヌは慣れてたかもしれないけど、 
わたしは警察に尋問されちゃうんじゃないかと内心ヒヤヒヤしてた。
そのあとは、おなじ布団で眠りに着いた。二人とも爆睡。

そして、高校最後の体育祭。
エヌが応援団長で、わたしがダンスリーダー。
あのときのクラスの団結力はエヌのお陰。 
そのあと、閉店したショッピングセンターの駐車場で騒いで、
危うく警備員のおじさんにエレベーター停められそうになって、。それもおもいで。




距離ができたのは、たしか、冬休み前。 
エヌはオーちゃんと過ごすようになって、
わたしが話しかけるとつまらなさそうな顔。
わたしじゃダメなのかな。
エヌを遠くから眺める日々は、すごく悲しかった。

エヌがオーちゃんと笑ってる教室に入るには
勇気がいって、
だから、独りぼっちで図書館に息を潜んでた。

学校に行きたくない三学期。

「もう離れたい」
体育の授業のまえに、エヌに伝えたの、
わたしが真正面からエヌと向き合ったのは、
このときがはじめて。

わたし、ボロボロ涙を流しながら走ったんだよ。
視界もぐちゃぐちゃ。


エヌに精神的な病気があると知った卒業前。

ごめんね。
ただそのひと言を言えていたら、
少しは救われたのかも。

だけど、わたしは弱くて、
バイバイも言わないで上京した。

半歳が流れたころ、連絡くれたよね。
「あいたい」って。

それで、離れて過ごしたあの日々のことを教えてくれた。何時間も通話したよね。

それからは、帰省する度にエヌに会いに行った。
車を運転するエヌの助手席に座ってるのは、なんだか夢みたい。
1年後、2年後…。晩酌できる日も近いのかな。
50曲ぶっ通しで歌い尽くしたあの日、そんな事を考えていた

ただ、
わたしたちの関係は、
近づきすぎても遠すぎても崩れてしまう。
それは再遇してからも、心の隅で感じていた。
惹かれ合う事もあれば、歩幅がズレると何方かが
我慢してしまう。

この難しい距離。


エヌにはね。なにがあっても幸せでいてほしいんだ。
いつか歌ってくれたウエディング。
いまでも、この唄を聴くとエヌの姿が過ぎる。

ぶつかり合う日もあったね
些細なことで傷つけた
失くして、また向き合って 愛を見つけて
もしも君に出会わなければ
流れていく時の中で
嬉しいこと、悲しいこと
それすら感じられなかった
答えが見えず泣いてた日も
手を取ってくれたこと
溢れる想い、ありがとうを 君に伝え続ける

音田雅則 ウエディング

音沙汰なくなって数ヶ月…。
距離を置いたのは、わたしの方だから
エヌに大切なひとができて
花嫁になる日、
呼んでもらえなくても仕方ないね。

Dear Brideを聴きながら蘇る思い出。

いつも真っ直ぐな言葉でぶつかってくるエヌと
いつまでも不器用で、傷つけちゃうわたし。
これ以上辛い過去は増やしたくない。


声が出ないくらい泣いた日も
膝がガクってなるくらい大笑いした日も
全部ぜんぶ、わたしの心の中に終っておくね。

大切な友だち。
だからこそ。ここでピリオドを打とうと思う。

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