ドイツ版緊急事態条項に学ぶ

今晩は!

今回は緊急事態条項についてお話しします。

何らかの理由(国内で大規模な混乱が発生、または外国軍が自国を攻撃するなど)で政府がより強い権限を手にして迅速に対処する事が必要だという考え方があります。

こうした『国家緊急権』ですが、これは一定の歯止めがなければなりません。


そこで、ドイツのボン基本法を見てみたいと思います。


この法律において“緊急事態”は『国内の反乱や災害等の内部的緊急事態』と『外国からの侵略等の外部的緊急事態』に分類されます。

『外部的緊急事態』については更に『防衛事態』と『緊迫事態』に分けられます。

この『防衛事態』の確認については連邦議会が連邦参議院の同意を得て行う必要があります。

但し、緊急を要し連邦議会の集会や議決が不能の場合には合同委員会が設けられます。


この合同委員会は連邦議会・連邦参議院の議員で構成され、『連邦議会・連邦参議院の機能を代替する』ことになります。


その場合は合同委員会に法律を制定する権限が認められます。ただし、合同委員会による立法権の行使には一定の制限が課せられます。

こうした制限のひとつとして、合同委員会は基本法を改正する事は出来ないと定められています。


また、基本法の全部又は一部を失効状態にする事は出来ません。当然、基本法の適用を停止する事も出来ません。

これは、ナチスの再誕を防ぐための措置と言えましょう。

他にも防衛事態の期間中は連邦議会を解散出来ないようにするという制限があります。

また、連邦憲法裁判所とその裁判官については防衛事態であっても憲法上の地位と職務の遂行を阻む事は認められません。

こうした『権力に対する制限』は、“人権を制限する力”に対しても行われています。

先ずはドイツにおける防衛事態において人権がどのような制限を受けるかを見ていきたいと思います。

【防衛事態の際に制限される基本権】

・職業の自由等
・移転の自由や住居の不可侵
・通信の秘密
・移動の自由

防衛事態だから止むを得ないとはいえ、平時では考えられない事です。

しかし、こうした人権の制限にも歯止めがあり労働者のストライキに対して軍を投入する事は禁じられています。

更に『防衛事態』を利用して権力を思うままに使おうとする独裁者が現れた場合を想定して“市民の武器”が準備されているのです。


その武器とは『抵抗権』です。

ドイツ国民には、憲法に基づいた秩序を破壊し権力を好きなままに振るう独裁者に対して抵抗する権利があり、それが憲法で明記されています。

『すべてのドイツ人は、この秩序を除去しようと企てる何人に対しても、他の救済手段が存在しないときは、抵抗権を有する。』

国家権力が暴走し、それを穏便に(無血で)阻止する手段が無い時は政府に従わない道を取ることが出来ます。

クーデターを起こしてもいい。

それは何故か?

近代国家とは、人々が支え合う社会システムであって一握りの権力者の為にあるのではありません。


権力者が不当に人々を抑圧する事は『市民が人間らしく生きられる社会を築き、維持し、発展させる』という当たり前の使命に背くことだからです。

権力を与えられた人間が上記の使命を放棄し私欲の為に力を振るうようなら権力を取り上げていい。

だからこそ他に救済手段が無い場合は抵抗権を行使するのです。

我が国はドイツの基本法や緊急事態条項に学ぶべきだと思います。

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