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【Korea】どこもかしこも「本気」でカワイイ国|vol.1|torito旅しんぶん

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 初めて韓国に降り立ったのは。十年前、大学一年生の冬休み。二月の韓国は寒い。頬の感覚が無くなるほどの寒風が吹いているにもかかわらず、韓国の原宿と言われるミョンドンは、どこもかしこもきらめいていた。

 華やかなショーウィンドウ、ぎっしり詰まったアクセサリー、色鮮やかなコスメティックが並ぶ店の隣には、熱々のトッポギやホットック屋台が並ぶ。口を開けば「かわいい」と「おいしい」。ただそれだけを息をするように口にする。誰もがそんな生き物になってしまうこの街は、そこにいるだけで綺麗になれそうな気さえした。それが、わたしの初めての韓国。

とはいえ、そんなの序の口で、息をするだけで綺麗になれる、そんな甘っちょろい考えをしてた自分を呪うほど、韓国の美容は壮絶なのだった。と、ご機嫌に到着した我々は知る由もないのだが。


今回、大学のサークル仲間女子八人で申し込んだ三泊四日プライベートツアーのタイトルは、「ソウルで綺麗になりソウル」おもわず笑ってしまいそうなタイトルではあるが、綺麗になりそうる?なれるの?なれないの?どっちなの?!と、我々は大真面目に参加した。綺麗になること、それは、大学一年生女子としての至上命題であった。

 ガイドのおばちゃまは、快活な韓国人。とにかくはしゃぐ私たちを、「ソウルで綺麗になりましょね〜」とまるでオモニ(母)のような温かさで見守ってくれた。(この人のキムチはさぞ美味しかろうな、という、厚くてや柔らかくて温かい、いい手をしていた。)

 ミニバスに乗り込んだ我々は、サムギョプサルにはじまり、Duty Free Shopでパックやコスメを買い込み、ラグジュアリーなホテルに泊まり、翌日いよいよ、本命のエステへ。

 銭湯からのアカスリ、よもぎ蒸し、石膏パックの美容フルコース。しかし、韓国のそれは、イメージするエステとは訳が違う。まったり優雅とは真反対、勇み足で駆け抜ける、いわば美容版ビリーズブートキャンプ。バスローブ一枚で放り込まれ、まるでベルトコンベアに乗せられたように、次から次へとブースを回されるのだ。

 アカスリは、すっぽんぽんで台の上に乗せられ、韓国のたくましい腕をしたオモニたちに、まるで魚の鱗取りのように、がしがしと、それはもうごしごしと磨かれる。裏も表もどこもかしこも。

 唖然とする我々を、よもぎ蒸しが包みこむ。三角のサウナスーツからちょこんと顔だけ出した沢山の女子たちが輪になるシュールな画を超えたら、ようやくベッドに寝かされる。

 と思えば、顔にドロリとした液体を流し込まれ、文字通り眼を白黒させてる間に硬化する石膏。ひんやりつめたい。ボーッと意識が飛びそうになった瞬間、バコッと外された石膏には、わたしの顔がくっきり。ああ、なんとも情けない表情。 

 ジェットコースターのようなコースに、クラクラしつつ立ち上がると、満足げな顔したおばちゃまに促され、肌に触れる。「…え?…!!!」未知の次元のつるんもっちり、であった。なんてこと。

 嗚呼、いわんや美容大国 韓国!恐るべし。美は戦わずして得られない。残り期間も、チマチョゴリでの撮影スタジオやコスメショップと巡り、韓国人の綺麗になることへの本気を、まざまざと見せつけられた旅なのだった。凄かったなあ、本当に。


 あれから十年、韓国のニュースが話題になるたびに、わたしはあのツアーを思い出す。わたしが訪れたのはソウルだけで、さらに言えば、ファッション美容ごはんにまつわるスポットのみなのに、随所に見えた、あの「本気」を思い出す。KPOPアイドルの世界進出、韓国家電製品の世界的シェア、韓国コスメの圧倒的な支持…など、あのエステを思えば、深く頷いてしまう。

 と、同時に、やっぱり思い出すのは、ガイドのおばちゃまの「手の厚み」。「みんな綺麗になったねえ、またおいで」と、懐っこい笑顔で力強く握手してくれたあの手を、温かさを、私はずっと覚えている。(空港でお別れの時、みんなで泣いたなあ。。)あの頃の韓国は、至るところに、熟練の手があった。サムギョプサルを切ってくれたお姉さんの手、アカスリのおばちゃまの手、ホットック屋台のおじちゃんの手。迷いのない手の動き、その「手の厚み」を、やっぱりわたしは覚えてる。

 現在のスタイリッシュでファッショナブルな韓国。その裏に、いつも感じるのは「本気」と「手の厚み」どこまでも熱く、渋い。それがかっこいいのよ、だから可愛いのよ。時に苦しそうに見えるけど、それでもやっぱり輝いているから。今日も相変わらず可愛くいてくれてありがとう、とアイドルたちに敬意を表して、やっぱり美味しいキムチを食べる。韓国を思い、キムチを食べる。  

 また会う日まで、またね韓国。

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