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録音ことはじめ

長めの前置き

 先日、3000字に込めた変態ということで、違う、偏愛ということで、こんなnoteを書いた。

 ここではとにかく録音が楽しいのである、ということを書いたわけだが、おそらくこのnoteを読んでしまった人の中に、そんなに面白いなら自分もやってみたい、と思ってしまった人もあろうかと思う。わたしとしたことが罪なことであるよ…。

 というわけで音声配信楽しそうじゃないの、 って簡単にできるみたいじゃんか、Twitter のSpaces で話してみんべ、などいろいろなことになった人に向けて、少しでも良い音で録音するにはどうしたらいいのか、という話をしてみようと思う。

 実はこのnoteを書くまでに紆余曲折ありまくり、大変な熱量の原稿が3本書かれた。録音の歴史みたいな話になった大長編どざえもん、マニアックな録音技術と知識の話になったディープインサイド沼、実用的な内容にしようとしたらマイク選びだけで数万字になった散財三昧。それらをボツにしてのこれが4本目である。

 細かいことはいい。ひとまずちょっとやってみた人の次のステップになりそうな話を書いてみようと思う。実際にいろいろな方法でサンプル音源を録音したものを埋めておくので参考にしてほしい。ここでは愛用しているStand.fm を使用してサンプル音源を公開している。 Stand.fm はアップロードした音を自動処理して配信するため、録音された音そのままではなく、 Stand.fm にアップするとこうなる、というサンプルになっている。

 そんな具合に今回はスタエフを中心に話を進めるけれど、ここでの話はその他の録音にも使える話なのでぜひ楽しんでほしい。より本格的に録音してPodcast を配信したい、というような内容はまた稿を改めてお話しようと思う。

 ではヒアウィーゴー。

始めたばかりの人がやりがちな録音

 さあ、スマホ一台で録音から配信まで全部できちゃうぞ。なんて手軽なんだStand.fm。早速始めよう。

 そう思ったあなたはどんなふうに録音するだろうか。

広瀬すずちゃんの写真に見とれているわけではない

 おっす、オラ悟空。

 どうだろう。こんな風になりがちではないだろうか。これじゃダメですか? いや、ダメではない。このようにして録音したら次のような音になる。

 どうだろう。「すっげぇ、音がいいなぁ」とはならないものの、「聞けたもんじゃない」というほどひどくもない。必要十分だという話もある。が、ちょっとだけ改善してみよう。

マイクの位置を意識してみる

 スマートフォンのマイクは、当然ながら画面に付いているわけではない。各自自分の使っているスマホのマイクがどこについているのか確認してほしい。そして、そのマイクに向かって話してみてほしい。

 わたしが使っているのはもう型落ちも型落ち、iPhone X であるが、この機種は本体の下側にマイクが付いている。そのため、そのマイクに向かって話すと次のようなスタイルになる。

食べようとしているわけではない

 このようなフォームはいささか美しさに欠けるような気がしないでもないが、このように録音すると次のような音になる。

 どうだ、驚いたか。あれ? 驚いてね。たったこれだけ。スマホの向きを少し変えるだけで、こんなに音が聞きやすくなる。マイクをどんな向きに向けるか、というのはかなり大きく音質を左右する。どんなマイクを使うかで、マイクに対してどんな向きで話せばよいか、というのも変わるのだ。奥が深すぎてアブナイだろう。これを話し始めると大長編ディープスペースにロケットダイブするので踏み込まないが、スマホ一台で録音するにしても向きをちゃんと考えるだけで音は良くなるということは覚えておいてほしい。

マイクを買おう

 やっぱ音声配信するんだからマイク欲しいよね。

 いや待て。ぶっちゃけて言えば、マイクを買う必要はない。上記のように、スマホ内蔵マイクでも向きを気にするだけで充分まともな音になる。マイクを買うべきなのは、スマホ本体であれこれ工夫しても音に満足できない人と、とにかくマイクを買いたい人である。スマホ単体で事足りると感じている人はわざわざ買わなくて良いだろう。

 さて、マイクを買おうと思うがなにを買っていいかわからない。どうすればいいのか。

 いくつかの理由で、お勧めはピンマイク、ラべリアマイクなどと呼ばれるタイプだ。例えばこれ。

 ちなみにわたしが使っているのはこちら。

 この二つの違いは、上のものはモノラル、下のはステレオ、という点。しかし今回のようにスマホに接続して使う場合、いずれにしてもモノラル録音しかできないので上の方で問題ない。わたしは別の用途にも使うので下のものを買った。

 ではこのマイクを使って録音してみよう。次のようなスタイルになる。

寝起きではない

 わかりにくいかもしれないがTシャツの襟のところにクリップで止めてあるのがマイク。そのマイクが変換ケーブルを2つ介してiPhone に繋がっている。忌むべきライトニング端子によりiPhone は外部機器の接続に関して利便性が死んでいる。この瞬間がApple だね(怒)

iPhone→ライトニングから4極ミニ変換→4極ミニを3極ミニx2に分岐するやつ→やっとマイク

 このような冗長な接続を経てやっとマイクがつながるわけだが、前述のようにステレオのマイクでもモノラル録音しかできない状態になる。率直な感想は「もー」

 これで録音すると次のような音になる。

 わたしのスタエフで、朝のあいさつ雑談としてやっているものはこのセッティングで録音している。ピンマイクタイプをお勧めする最大の理由は、マイクの位置を気にせずに話せる、という点。襟元に付けておけばどっちを向いて話してもまともな音で録音できる。

 わたしのスタエフで、昼休み雑談としてやっているものはこのマイクを装備したまま昼ご飯を作ったり食べたり、時には洗濯物を干したりしながら話しているけれど、それによって声の音量が揺れたりすることもない。

 ピンマイクをお勧めするもう一つの理由は、値段が安いこと。このあたりの機種は3000円前後で買える。(ピンマイクタイプには数万円するような高いものもある)

 ちなみにこのマイクでステレオ録音をするとASMR 動画でも十分使える音が録音できる。

 申し分ない音質と言って良いのではないか。

もっと良いマイクは?

 ピンマイクでも飽き足らず、もっとより良い音を追いかけたい。あるいはとにかくマイクが欲しい、という人が次に検討するべきは、オーディオインターフェースである。

 オーディオインターフェースというのはコンピュータやスマホなどの端末に音を入出力するための機器のことで、オーディオインターフェースを介せば幅広くいろんなマイクを使えるようになる。

 が。iPhone で使えるかどうか、さらにAndroid端末で使えるかどうかということになるとけっこう機種が限定されてくる。

 そこで今回は、比較的いろいろなタイプを選べる、オーディオインターフェース内蔵型マイク、あるいはPCMレコーダといったタイプのものを紹介する。

 オーディオインターフェース内蔵型マイクというとなんだか難しいもののように聞こえるかもしれないが、USB接続のマイクは全部このタイプであると思うとわかりやすい。USB接続のマイクは実にいろいろなタイプが販売されているので、スマホで使いたい場合は自分のスマホにも使えるかどうか、よく調べてから買ってほしい。

 ここではTASCAM のDR-05X というオーディオインターフェース兼PCMレコーダというタイプを紹介する。

 これはWindowsやMacのパソコン、iOSのデバイスで使えるオーディオインターフェース兼PCMレコーダである。これ単体で本体についているマイクで録音ができる他、パソコンやiOS端末につなぐとこれに搭載されているマイクや、この機種に接続した他のマイク等を使って録音を行うこともできる。

 これを使うと次のようなスタイルになる。

呼気のアルコールを調べているわけではない

 これを使用して録音すると次のような音になる。

 どうだ。各段に良いだろう。この機種はちょっと高音成分が強く出やすいので、少々ざらつきを感じる人もいるかもしれない。だがこの音質であればASMR的囁きなんかも録音できる。実際TASCAM のDRシリーズはASMR で使っている人も多い。

 ちなみにこのタイプを使う場合は次のような接続になる。

iPhone→ライトニングをUSBに変換するやつ→USB接続のマイクとかレコーダ

 ライトニング→USBの変換は、Apple純正のはアホンダラ級にエクスペンシブなのでもっと安いやつで良さげ。わたしのこれはメーカー忘れた

マイクが良ければ良いってもんでもない

 ここまで読んできて、そうかやはりある程度金をかけないと良くならないのか、と思った人もいるかもしれないが、良い機材を買っても使い方がダメだとポテンシャルを発揮できない。その例をお見せしよう。

 これは一つ前と同じDR-05X を使用しているが、DR-05X を机の上に置いた状態でテキトーにしゃべって録音した。このように、同じ機材でもマイクと口の位置関係や向きなどによってまったく違った音になる。

良い音とは何か

 ここまで「音質を改善する」という方向で話をしてきていきなりそもそも論になるが、そもそも良い音とはどんな音なのだろうか。まずはそのイメージを持つことが重要である。

 一般に音声配信で求められる「良い音」とは、ノイズが少なく、聞きやすい、ということだろう。ノイズを少なくするコツは2つある。

  • なるべく大きい音で録音する

  • ノイズになりそうな音の少ないところで録音する

 前者は録音レベルの話で、音割れしない程度に大きい音で録音する、というのが基本だ。これにはS/N比という考え方が関連してきて詳しく説明すると大長編になるので今回は割愛するが、とりあえずある程度大きな声で話し、その声で録音して音割れしない程度に録音レベルを上げよう、ということだ。使う機材やアプリによって録音レベルの設定方法は異なるが、この基本方針は環境が違っても共通である。

 この辺の話はまた稿を改めて詳しく話す機会を設けようと思う。

 後者は見落としがちな話だが、たとえばスマホでStand.fm  を録音するとき、すぐそばでパソコンが動いているとそのファンノイズなどが入ってしまうことになる。また、録音する部屋のすぐ近くで道路工事が行われていたりするともはやノイズを避けるのは難しい。どんな環境で録音するか、というのがかなり重要になる。

 余談だが宇多田ヒカルはアマチュア時代、デモテープを録音するのに押し入れの中で布団をかぶって録音していたそうだ。これは主に自分の声が周りの迷惑にならないように、という配慮だが、自分の声が外に出ない=外の音も入ってこない、ということで一石二鳥なのである。

後処理について

 今回はStand.fm  に特化して話をしたので、録音した音の後処理、ポストプロセスに関しては詳しくは触れない。が、Podcast を収録する、Youtube の動画を収録する、といった用途の場合、録音した音を後処理することで音質を改善することもできる。

 この後処理に関してはノウハウが多岐に渡り、さらにできることも非常に多いので本稿では割愛する。これもどこかで稿を改めて話す機会を設けたい。

 一つ、基本としてあるのは、後処理はなるべくしないのがベストである、ということ。処理をしない状態でなるべく良い音を目指して録音し、後処理ではわずかな補正をかけるぐらいにしておく。たとえば後処理でノイズを除去することはある程度可能だが、そもそもノイズが少なくなるように録音する方が先だ、という話である。この辺もまた追い追い、話してみたいと思う。

 さあ、皆さんもぜひ始めましょう、録音。楽しいよ!

 最後にわたしのスタエフとPodcast、そしてYoutube を張っておくのでフォロー、チャンネル登録、よろしく!


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