[映画]ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋

 今夜のU-NEXT は『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』。2019年の作品。

 立場がかけ離れた二人の恋。ロミオとジュリエットの時代から定番とも言える超えがたきをを超えようとする恋の物語。ロミオとジュリエットももちろん、タイタニックも、プリティ・ウーマンも、本作も。どれも上流階級の女性に下賤の男性が想いを寄せる、という図式。逆の設定の物語があまり無いという事実が、逆説的になんらかの固定観念を浮き彫りにしている。

 もちろん本作はそのようなことを訴える作品ではなく、実は幼馴染だったかけ離れた二人の恋愛模様を面白おかしく描いたコメディである。次期大統領候補で国務長官の女性と、情熱を持って体制に反発するジャーナリストの男性。幼馴染でありながらかけ離れた世界に生きる二人が再会して、そこから急転直下、ドタバタに発展するというコミカルなラブ・ストーリーだ。二人の距離が縮まるにつれ、引き起こされるドタバタもエスカレートしていく。その速度は斜面を転がり落ちるように指数的な加速を見せる。

 二人の周囲に配置された人物もそれぞれに魅力的で、エピソードの一つ一つはみんなむちゃくちゃなのにどこかほっこりと楽しい。序盤はまだ現実味があるが、中盤以降はもはやリアリティはどこかへかなぐり捨て、際限なく突き抜けていく。不思議と、リアリティが損なわれることはまったくマイナスではなく、どんなにオゲレツな展開になってもカラッと笑える楽しさがある。

 クライマックスの演説シーンは見もので、デタラメの果てに辿り着く物語の顛末がじんわりと体の中に沁み込んでいくような感覚だった。あったかい優しさとオゲレツが共存し、それでいてまっすぐなラブストーリー。なんとも上質なコメディ映画なのであった。

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