[映画]ミッション:8ミニッツ

 今夜のU-NEXT は『ミッション:8ミニッツ』。2011年の作品。

 タイムトリップもののSFサスペンスなのだけれど、脳は死後8分間は活動を続けている、という設定で、死者の残留意識にダイブして最期の8分を追体験する、というような設定。この技術を使い、列車爆破テロの容疑者を突き止める、というのが主軸。

 しかしこの作品、テロリストを突き止めて第二のテロを未然に防ぐ、というミッションそのものだけでなく、それに付随していくつかの要素を描いている。それが巧妙に絡みあっていてラストまで一気に引っ張られていく。

 残留意識の中にその時点での世界のすべてが入っているという状況は少々強引ではある。その中へダイブして実際に起こったのとは別の事象を生み出すということがどのようにして可能なのか、その点については説明がない。ただ、「プログラム」であるという説明はされているため、単なる残留意識ではなく、それを量子コンピュータ上のプログラムとして保存したものを用意し、そこへダイブしている、ということなのであろう。世界のすべてを記録した量子プログラム内でその世界に変更を及ぼすと、それは並行世界として分離される。未来からの主人公による干渉を受けて世界は分岐するわけだ。空撮されるいくつも分岐したシカゴの線路が、まさにその世界観を象徴しているようだ。

 タイムトラベルものにはパラドックスが付きまとうわけだけれど、近年のSFでは、これを量子的重ね合わせの並行世界として回避する。つまり未来から過去へ干渉すると、もともと自分のいた時間軸とは異なるものへと歴史が分岐し、新たな時間が流れ始める。元の世界と干渉を受けた世界は互いに関係ないものとして並行して存在する、という考え方だ。

 この設定を支える根本的な部分について説明がないため、ハードSFを愛好する人からするとご都合主義的ということになろう。しかし並行世界型タイムトリップものとしてはとても惹きこまれるし、ラストシーンの希望と絶望が絶妙にブレンドされたような後味も良い。とても好きなタイプの作品であった。

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