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次女ちゃんと伝説の夜


2021年からの育児休暇を経て、2023年になっても僕は朝5時に起きて、自分の時間を過ごしたり朝ご飯の支度に取り掛かる生活をしている。

我が家には子どもは3人いて、たまに同じくらいの5時くらいの時間に起きてくることがある。特に長女ちゃんと三女ちゃんはわりと朝方の生活をしている。次女ちゃんは何かない限りは早く起きてくることはなく、むしろ朝ご飯ができてから起こしにいくということもままある。

次女ちゃんは朝弱いタイプみたいだ。


朝5時。それはまだ家族は誰も起きていない時間だ。しかしすでに太陽は上り始めていてやんわりと明るくなっている。まだ暑さもそれほどでもなく、過ごしやすい気温とまでは言えないが「暑いなー」と言ってなんとかごまして過ごせる程度。

そんな時間では当然、生活音などは出さないようにしている。起きちゃうもんねぇ。
だから読もうと思って買った本を読んでみたりブログを書いたり、ネットサーフィンしたり、家族に気を遣いながら自分のやりたいことを気ままにしている。

そう。
音を出さないようにしている。


その日も4時半くらいに目が覚めただろうか。カーテン越しにも外が明るくなり始めているのが感じられる。
そんな、まだ誰も起きていない自分だけの時間だ。贅沢な時間だが潤沢にあるわけでもない、貴重な時間。何をして過ごそうか。そんなことを考えていたところ、近くから次女ちゃんの声が聞こえた気がした。

「とうちゃん。とうちゃーん。」


ああ起きたか。

今日も子どもの声が聞こえるというのはとても幸せなことだ。

と思いたいが、残念ながらそんな感覚で満たされるような素敵な人間でも親でもない。もうちょい自分の時間欲しかったのにな、くらいの気持ちが最初にあった。
もっと言えば、「ちっ、聞き間違えであれ。あるいは、起きたけどすぐ寝ろ」と思った。


「とうちゃん。とうちゃーん。」
「おはよう。次女ちゃんも起きてるんだよー」


ああ、これは寝ないパターンのやつやな、と分かる。なかったことには出来ない。おはよう、と返す。
ちなみにこれら一連のやりとりは寝ている家族も同席の部屋で行われているため、僕も次女ちゃんも小声での発言だ。


「なんか外がすっごい、キラキラしてるよ…!」
小声のまま、次女ちゃんの興奮が伝わる。本当は大きな声出したいんだろうなぁ、って思ったらなんか邪な気持ちになった。というのは、なんか伝わらないと思うけど、”ワイワイしている性格の人の小声”ってなんか腹立つんすよね。※次女ちゃんは父親から見たらワイワイしてます。


だるいなぁめんどくさいなぁ、と思いながらも”ああ、そうなんだ”とか返してたら次女ちゃんが続けて

「えー!すっごいいろんな色がある!これ、”伝説の夜”なんじゃない!?」※小声。


我が家の寝室は3階にあり、外の景色がよく見える窓がある。その窓から見て次女ちゃんはそのように発言した。僕も見たけど、僕はその景色を「朝焼けやな…」くらいに平坦な感情で捉えてしまった。


「これさぁ、”伝説の夜”なんじゃない!?」

2回目の発言である。もういいだろ。
小声ではあるが、他の家族も起きそうなくらい興奮した声量になっている。


そして、すまんけども・・・”朝”だ。早朝であって、夜ではない。
おまえが早朝に起きたことがないだけだろ。
朝早いとだいたいこんなもんよ。こんなもんよ、というか、天気が良いとけっこう綺麗なのよ。

そして、伝説というほどでも、ない。そこまで綺麗じゃない。
そんなことを思っている間に


「とうちゃん、良いこと思いついた」
「伝説の夜を一緒に描いてみようよ」


いやだよ。とうちゃん的には”伝説”でも、”夜”でもないのよ。そして、一緒に描くってなんだよ。
※これを書いていて、「さもしい人間だな」って自分のことを思っていっそう自分のことが好きになっちゃうね。

そして、とうちゃんの反応を待つまでもなく次女ちゃんは一人で「伝説の夜」を描きあげた。写真取ろうかなと思ったけど、その時はそんな余裕ももてなかった。

みんなが起きてきてから、「伝説の夜」について次女ちゃんはよく喋った。
「空が赤くて、オレンジで、青っぽいところもあって・・・」と。

のりが悪い父で、すまん。
母や姉妹はちゃんとリアクションしていて良かったよ。

でもこうやって記事にしようと思うくらいには「伝説の夜」だったのかもね。


そんなこんな。

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