いのちのうた 第3話 「君は天然色」(大瀧詠一)

この曲が世にでて、もう40年以上が経ちます。

音楽評論家50人が選ぶ日本のロック、ポップスの名盤第一位を獲得したアルバム「ア ロング バケイション(通称 ロンバケ)」。

オープニング曲が「君は天然色」です。

世界的なブーム、ジャパニーズシティポップスを代表する一曲でもあります。

私は、このブログ第0話「ごあいさつ」で、

長らく死の半歩手前にいた、と書きました。

治癒までの約20年間は日本のロック、ポップスを

聴きまくりました。

中でも、4万回近く聴いたのが「君は天然色」です。


「君は天然色」は

ロンバケのアルバムジャケットの風景から、

夏真っ盛り、というイメージ。

ところが、この曲は

「帰らない命にささげる鎮魂歌」です。

「君は天然色」を作詞したのは、

大瀧詠一さんの盟友、松本隆さん。

松本さんには先天性の心臓病を患う妹さんがおられました。

小学生時代、松本さんは学校に続く長い坂道を

妹さんのランドセルまで背負って登校したそうです。

その妹さんは享年26で帰らぬ人に。

妹さんにとって最後の入院となった頃

松本さんには、大瀧さんのニューアルバムでの作詞が決まっていました。

妹の命はおそらく残り僅か。

一秒でも妹のそばに居たい…


松本さんは大瀧さんとの仕事を断りました。

大瀧さんは「オレはいつまでも待つよ…」


妹さんを喪った松本さん。

目の前に現れる風景は

どこまでもモノクローム。


今いる東京の街も、

妹さんと過ごした日々も…。


私たちが大切な人を喪った時の「虚無感」です。

残された松本さんを癒すのは、

この虚無感や妹さんとの日々を言葉にする営みでした。

こうして大瀧さんに提供した作品のひとつが「君は天然色」です…


♪想い出はモノクローム

色を点(つ)けてくれ

もう一度そばに来て

華やいで麗しのCOLORgirl


私が初めてこの曲に出会ったのは

中学3年生になる春休みでした。

理由がわからないまま、ただただ号泣しました。

「ナイアガラサウンド」と呼ばれる

壮大な音に乗った

松本さんの言霊がそうさせたのでしょう。


かけがえのない命はどこまでも美しい

「君は天然色」は九死に一生を得た私にとって

今日も絶賛ヘビーローテーション中です。

この曲は大瀧さんの故郷と東北新幹線水沢江刺駅の発車メロディーとにも使われています。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?