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WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第36話 シーン3 ネーム&3分で読めるレイルロオドのお話「雨の合間のハチロク」

気温の上下が激しすぎて、一昨日先日と、寒暖差アレルギー持ちのわたくしには軽い地獄でございました。

家から一歩も出たくないし、出ざるを得ないとしても車から一歩も出たくなかったのですが、
うちにあかちゃんがいる関係でそういうわけにもいかず。

結果、なかなかにしんどい思いをしてしまいました。

幸いにして本日気温が大幅に上がって安定してくれましたので、体調の方ももちなおし、いまこの文章をしたためております次第です。

さて、WEBTOON作品『レヱル・ロマネスクゼロ』のネーム&字コンテは先日公開の
36話「くまがわくるん1号」のシーン2

に引き続きましての、シーン3の公開となります


ハチロクが8620と双鉄とともに、いよいよ――というところでございますね。
果たしていかなる初走行になるものか、どうぞご期待たまわれますと幸いです。

で。本日のの短いお話は「寒暖差」をテーマに書いてみたいところなのですが、恨み節ばかりになってしまいそうにも感じますので、「長雨」をテーマにしてみようかと思います。

登場するレイルロオドはハチロク。
タイトルは「雨の合間のハチロク」でございます。
どなたにも無償でお読みいただけるものとなりますので、どうぞご笑覧いただけますと幸いです。

■ハチロク■

旧帝鉄8620形蒸気機関車トップナンバー機、8620専用レイルロオド。
帝鉄時代は東峡道本線でぶいぶいいわせてた。
雨はもちろん、好きではない。

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『雨の合間のハチロク』

「安全点検待ち、か……」

窓を打つ雨粒を眺めながら、双鉄様が退屈そうにつぶやかれます。

「なぁ、ハチロク」

「なんでございましょう、双鉄様」

「安全点検というのは――具体的には何をしているのだ?」

「!!!?」

――胸からタブレットが飛び出してしまうかと思いました。が――
落ち着いて考えれば、双鉄様はなりたてほやほや、まだお尻に卵の殻がついているような機関士でしかないのです。

この機に鉄路の安全を守る仕組みを、学んでいただくのも悪くはないでしょう。

「雨は、大変に危険なものです」

「随分と苦々しい口調だな」

「それはもう、雨が好きなレイルロオド――いえ、鉄道員はいたとしても稀有なのではないでしょうか?」

「それほどか。雨三本は、確かに気を使うことと感じるが」

雨三本。雨の日は、レヱルの継ぎ目3本分、早くブレエキをかけはじめるようにという教え。
そこをきっちり意識してくださっているだけでも、指導の甲斐を感じます。

「雨三本――レヱルが滑りやすくなることなどは、雨の悪影響の一番軽微なものにすぎません」

「なんと」

「御一夜鉄道は乗客数も列車本数も少ないですので、雨の影響を軽微と感じるかもしれませんが――
これが東峡道本線の、例えば横濱駅などでの、豪雨時の乗客扱いを想像してみてください」

「ふむ? ……ああ、そうか大人数ともなると単純に、乗降にかかる時間が増大してしまうのか」

「はい、ことに屋根の無いホオムなどですと、晴天時の二倍三倍かかってしまうことも珍しくはありませんでした」

「慎重な運転を強いられる上、駅でも時間をとられるとなると……ダイヤが乱れるか」

「左様です。ダイヤ乱れは駅の列車待ち人数を増加させ、更に乗降時間が伸びて――と、簡単に悪循環が生じるのです」

「ふぅむ。そうなると確かに雨は迷惑か」

「迷惑程度で済めばまだよろしいお話なのですが――その雨が数日続いたり、あるいは豪雨となってしまうと、今度は危険が生じてきます」

「ああ――」

双鉄様のお顔がさっと青ざめられます。
……東峡道本線を例に出したのは、わたくし、いかにも軽率でございました。

「――土砂崩れなどが発生するのか」

「で、ございます」

「故に、安全点検か」

「左様です」

御一夜鉄道湯医線なら、ほとんど土砂崩れの心配はありません。
が――

「そこまでいかずとも、水が線路上に土砂を流入させてしまうこともございますし、
線路や橋梁に思いもよらぬ異常が発生することもございますので」

「道理だ。なるほど――ゆえに、雨が好きな鉄道員は稀有とまでいわれるのだな」

「まさしく左様でございます」

「が、だ。ハチロク」

「!!?」

ぽんっ、と。双鉄様の大きなてのひらがわたくしの帽子の上に乗せられて、
そのまま頭を――ゆっくり撫ぜてくださいます。

……いやです、わたくし、表情がこわばってしまってでもいたのでしょうか。

「どうやら僕は、その稀有の部類に入ようだ」

「そう……なのですか?」

「うむ、なぜならば」

「あっ!」

双鉄様がずっと見ていた窓の外。
いつの間に雨があがって――

「虹は、雨が降らねば見れぬものゆえ」

大きな大きな半円を描く、鮮やかな虹。
雨が降り、あがったからこそ見ることができた光景……

「双鉄様のおかげで、これから雨に降られたときにも」

雨は、どうしたって怖くて辛くて苦手です。
わたくしの心の隅で降る雨は、あの日からずっと止まずにおります。

けれど、いつか――
いつか、双鉄様とご一緒でしたら――

「虹をわたくし、楽しみに待てそうな気がします」

;おしまい

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いかがでしょうか?

虹を見ると反射的にスマホで撮るんですけど、
わたくしのスマホでだとなかなか綺麗には収められないんですよね。

そんなこんななWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』。の過去話。

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