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「3分で読めるレイルロオドのお話」ハチロクと稀咲とお給料&WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第10話シーン4ネーム&字コンテ

前回更新より無償公開とさせていただいております
『3分で読めるレイルロオドのお話』。

レイルロオドの、とは銘打っておりますが、実際にはレイルロオドではない、
人間のキャラクターもちょこちょこ登場してまいります。

ので、レイルロオドたちと同じく。
人間のキャラクターについても、登場の都度、簡単な紹介をしていくことにいたしたく存じます。


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■宝生稀咲■

湯医学園の学園生にして、隈元銀行御一夜支店長を務める才女。
父が頭取であるため「親の七光り」と見られがちだが、
そのレッテルを自力で剥がすだけの優秀な実績をあげ続けている。
時短のため、食事はピザなどの軽食に偏りがちだが、
最近、時間があるときにはいわゆる家庭料理の練習にも励んだりしている。

■ハチロク■ 


旧帝鉄8620形蒸気機関車トップナンバー機8620専用レイルロオド。

旧式機+事故修復機というダブルハンデを負っているため、性能面やメンタル面には不安なところを抱えるものの、
気品、立ち居振る舞いに秀でたものをもつ、日ノ本撫子なレイルロオド。
御一夜鉄道で働きはじめ、給料がもらえるようになったことに大きな戸惑いを覚えている。

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優秀な銀行家である稀咲と、
お金を持ったことがないハチロクとが繰り広げますお話は
「ハチロクと稀咲とお給料」

どうぞ、ご笑覧いただけますと幸いです。

■「ハチロクと稀咲とお給料」■

(あらすじ)

はじめてのお給料の使い道を
双鉄に託そうとして断られてしまったハチロク。
困りに困ったそのあげく、稀咲に知恵を求めます。

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「……あの……稀咲様」

「ん? どうしたいんだい」

ハチロクくんがボクに声をかけてくるとは珍しい。

「双鉄がどこにいるか、とかならわからないけれど」

「いえ、そうではなく、わたくし、稀咲様にお伺いしたいことがございまして」

「ボクに? なにかな」

「お給料を。レイルロオドであるにもかかわらず、わたくし、頂戴してしまったのです」

「ああ、御一夜鉄道はそういう仕組みだっていう話だよね」

「はい。わたくしがかつて所属していた旧帝鉄ではありえないことです。
ですのでわたくし、わたくしの所有者である双鉄様にお給料をそのまま進呈しようとしたのですけれど」

「――断られた?」

「で、ございます。『それはハチロクの労働の対価であり、ゆえ、ハチロクのみが受け取るべきものである』とおっしゃって」

「なるほどね」

……実に双鉄らしい答えだ。
好ましい。

けど――

「それでわたくし、お給料の使い道に困ってしまって」

「……ボクの話をしてもいいかな。厳密には、ボクと父との思い出話を」

「稀咲様と……元忠様の?」

「うん。本当に小さかった頃のボクは、欲しいものをなんでも買い与えてもらえた。
その代わり、お小遣いというものをもらったことがなかったんだ」

「お小遣い……人間の子供さんなどが親御様などから与えられる、金銭――でございましょうか」

「そう。それ。少等部にあがるころになると、まわりにちらほらお小遣いをもらってる子が出始めてね。
『自分で自由に使えるお金――』その魅力に、ボクは取り憑かれてしまったんだ」

「まぁ」

「で。父にせがんでみたところ、こう諭された。
『金銭とは常に労働の対価であるべきだ。ゆえ、自由にできる金銭がほしいのであれば、小遣いではなく仕事をせがめ』と」

「お仕事を、でございますか」

「父は実際、いくつかの仕事を提案してくれた。その中から、ボクは父の車のワックスがけを選んだ――
これがなかなか……小さな子供にはたいへんな重労働でね」

「で、ございましょうね。罐磨きの大変さなら、わたくしも骨身に染みてしっております」

「たっぷり4~5時間をかけて、なんとか父の合格点をもらえる完成度までもっていった。
そうしたら父は、当時の隈元県最低賃金にあたる時給に、そのまま労働時間をかけた額を、
ボクに給与としてくれたんだ」

「最低賃金……でございますか」

「いや、小さな子供のボロボロの仕事に対しては破格の評価さ。
公正すぎて、公正さを欠いてしまっているだろうと今のボクには思えるほどにね」

「そういうものでございますか」

「実際、まわりの子がもらってるお小遣いの何ヶ月分もの額になった。
なのに――あれだけ恋い焦がれた『自由に使えるお金』をボクは、
どうにも使いたく無くなったんだ」

「!!!」

ハチロクの、ただでさえ大きな瞳が見開かれる。
うんうんと、何度も頷きが繰り返される。

「父に相談すると、
『使い道が見つかるまでは、大事にしまっておけばいい』と教えてくれた」

「使い道が見つかるまで……」

「お金はいつか必ず必要になるものだからね。
ハチロクくん自身のためか、双鉄のためか、他の誰か、何かのためかはわからないけれど――」

「はい」

「そうして父は、こうも教えてくれたんだ」
『ただし、ただしまい込んでしまっていてはもったいない。お金にも仕事をさせるべきだ』と」

「お金が……仕事をするのですか?」

「うん。利子を生む、配当を生む、差益あるいは差損を出すなど、プラスにもマイナスにも、お金は仕事をしてくれる」

「なんだかとても……とても、難しそうなお話ですね」

「そうでもないよ? ハチロクくんの理解力と、ボクの説明とがあわさればね」

無論、ボクとしては隈銀に定期、ないしは普通預金口座を作ってもらいたい。
けれどもあの日、父がボクにしてくれたのと、おんなじように――

「まずは『資産』という言葉。そして『安全性』『流動性』『収益性』という3つの視点を学んで行こう」

;おしまい

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ハチロクや稀咲、そして劇中に名前が登場した「宝生元忠」も登場してきますWEBTOON作品
『レヱル・ロマネスク0』は、ただいま好評ネーム掲載中です。

現在は第10話のネームを掲載中で、先日公開のシーン3

につづき、本日はシーン4のネーム&字コンテを公開します。

これらはメンバーシップ特典となってしまうのですが、
0~7話までのネームの方はどなたにも無償で公開しておりますので、
よければどうぞ、あわせご確認いただけますと幸いです。

(それ以降のまとめはメンバーシップ特典です)

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【メンバーシップ限定記事のご案内】

『レヱル・ロマネスクnote』メンバーシップ『御一夜鉄道サポーターズクラブ』

にご参加いただきますと、レイルロオドたちにかかわる詳細な内部設定資料や掲示板機能などをお楽しみいただくことができます。

『レヱル・ロマネスク0』の字コンテ掲載時には、その字コンテがネーム化されたもの、および推敲過程でボツになった未公開ネーム画像などがあるときには、そうしたものも公開していきたく思っております。

どうぞご参加ご検討いただけますと幸いです。

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