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3分で読めるレイルロオドのお話「オリヴィ先生のまくら木教室」&レイルロオドの学習について

被造物であるレイルロオドに、仮に「魂」が宿っているとするのであれば。

その魂は、レイルロオドの起動キーであると同時にOS(オペレーティングシステム)の基幹部分でもあると目されている、「タブレット」に宿っていると考えるのが一番無理の無い解釈となるように存じます。

レイルロオドのOSはタブレットを挿入されることにより立ち上がります。

OSが立ち上がることによりレイルロオドの身体各部やセンサ類の全ても立ち上がり、
それらが得た感覚や知覚情報は脳であるCPUで処理されて、処理に応じた命令が身体各部やセンサ類に送り返され――

かくてレイルロオドは「行動する」わけです。

得られた情報は一時的に短期記憶媒体に集積され。
タブレットレベルでの取捨選択により、あるいは長期記憶となり、あるいは潜在記憶として圧縮され、あるいは忘却――消去されます。

レイルロオドの長期記憶媒体の容量には物理的限界があり。
レイルロオドたちが製造された理由=鉄道車両の運転・制御の補助、関連だけに絞っても、学び得る有用なことがらは無尽蔵にあります。

そして本務を果たすために必要十分な知識は、ロールアウト前の研修――
旧帝鉄であれば、レイルロオド工機部における基礎、および習熟訓練により長期記憶に叩き込まれ。

そのレイルロオドのスペックにもよりますが、長期記憶域の少なからぬパーセンテージが、そこだけで専有されてしまいます。

ですので、レイルロオドにとって「趣味」は有害でしかありえません。

職務と関係の全くない――例えば”虫”に関する知識に有限な記憶媒体の容量を割き続けるようなレイルロオドは、
間違いなく変わり者であり欠陥品であり任務への不適格者であるので――

大抵の場合、廃棄・処分という結末を迎えるのみとなってしまうからです。

しかしながら。

所属する鉄道事業者やオーナー、あるいは運用上の都合等々により、
「関連業務」に関する知識を学習するレイルロオドは、決して珍しくありません。

旧南薩鉄道の紅の「調理」。
肥颯みかん鉄道のオリヴィの「保線」。
高嵜鉄道のランの「無線」

等々。

そうした「学習」は、有限である記憶域を長期的に専有させていくことに他ならず。
現役であるレイルロオドたちにとっては、なかなかにリスキーな行為であるともいえます。

なんとなれば、現役である以上「本務において必須で記憶しなければいけない事項」はいくらでも出てきてしまう可能性があり。

容量の限界に達してしまった長期記憶媒体は――必要性が薄いと思われる≒アクセス頻度の少ない――長期記憶を、自動的に消去処理してしまうと言われているからです。
”言われている”という曖昧な記述しかできないのは、「どのデータが失われたかを、データ消去されたレイルロオドは思い出せない」からに他なりません。

ですので、特に型式が古かったり低スペックだったりするレイルロオドにとって。

関連業務の学習をすることや、大切な思い出を作ることなどは、
「本業上でとんでもないやらかしをしてしまう可能性を引き上げてしまう」リスクを孕んでいるのです。

ゆえ”本業以外は何もしない”レイルロオドが、本当のところはレイルロオドの理想形であり。
けれど、そうしたレイルロオドもやはり、ごく少数派にすぎません。

レイルロオドたちは――特にマスター・レイルロオドたちは、それが本能ででもあるかのように、経験を・学習を重ねていきます。

仮にそれが、製造目的を果たすことよりもレイルロオドにとって重要であるというのなら。

レイルロオドはすでに、物であり被造物であることを超えた何者かに、なっているのかもしれなせん。

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そんな感じで、#11ネーム本日もまだ公開できませんので(すみません)
本日はレイルロオドに関する設定的ななにものかを書いてみました。

以前にも何度か書いたことがあるのですが
「設定」は、本編で適用され世に出てはじめて「設定」で。

上記のものはまだ、内部メモ的ななにものかでしかないのです。

その辺ふまえたうえでどうぞ、ご笑覧いただけましたら幸いです。

と、いうことで短いお話も「学習」をテーマにしてみましょう。

登場レイルロオドは、オリヴィとハチロク。

タイトルは「オリヴィ先生のまくら木教室」でございます。

■オリヴィ■


冥国産のジェネリック・レイルロオド。
ジェネリックではあるものの、オールドウィン社製の旧実延鉄道Ⅸ号機関車とずっとコンビを組んでいる。
現所属である肥颯みかん鉄道において保線知識の学習を開始し、
近年ではレイルロオド屈指の保線通として知られるまでに至っている。

■ハチロク■ 


旧帝鉄8620形蒸気機関車トップナンバー機8620専用レイルロオド。

旧式機+事故修復機というダブルハンデを負っているため、性能面やメンタル面には不安なところを抱えるものの、
気品、立ち居振る舞いに秀でたものをもつ、日ノ本撫子なレイルロオド。
保線にそもそも関わった経験に乏しく、当然ながら保線知識は貧弱。

■「オリヴィ先生のまくら木教室」■

(あらすじ)

ふとしたことから御一夜鉄道のまくら木の総本数を気にし始めたハチロク。
見当もつかず、遊びに来ていたオリヴィに尋ねると、
オリヴィはふふん、と自信に満ちた笑みをみせます。

///

「……まくら木の総本数」

「What?」

「ああ、いえ。このTraitterで」

「万岡鉄道? すずしろちゃんとこのアカウントかー」

ふむふむ? あー、Quizね、なるほどー。

「これがどしたの?」

「万岡鉄道万岡線の総まくら木本数が6万本であるのなら。
はたして御一夜鉄道湯医線のそれは、何本になるのかしらん、と」

「んーーーっと」

「わかるのですか!?」

ありゃま、ハチロクわからないのかな?
冷静に計算すれば、カンタンなことって思うんだけど。

「湯医線の路線総延長って確か」

「24.8 km でございます」

「そしたら――ってか、そか!」

I see! わかった!

「ハチロク、まくら木間の適正距離ってわかってないんだ」

「適正距離」

パチクリ、ハチロクの目がまばたく。

「そのようなものが定められているのですか?」

「サダメラレテル――ってか、サダマッタんだよ。
鉄道界がずーっと積み重ねてきた経験による学習から」

「ん……」

わかってない顔。
だから説明、足したげる!

「ハチロク、まくら木ってなんのためにあると思ってる?」

「ええと、それは――」

ハチロクは少し考え込んで、すぐにぱっ、て顔あげる。

「列車が通過するときの振動をやわらげるため、でございましょうか」

「Thta's right! ダイセーカイ!」

バラストが砕けるのとおんなじように
木まくら木も少しずつこわれながら、列車の振動を減らすためのshock absorberになってくれてる。

「ってことはさ? まくら木とまくら木の間、長すぎちゃったらショック大きくなっちゃうのわかるよね?」

「あ! 左様ですね、はい」

「逆に短すぎても、costがかさんでく一方で――」

「……吸収効果はさほどかわらない、そうした閾値がありそう――ああ!」

「そそ、それがまくら木適正距離。これは大体、50から60cmっていわれてる」

「でしたら! 間を取った55cmで路線総延長を割れば」

「そ! ガイサンチならさくっとそれで出せちゃうんだー」

「……さすがはオリヴィ先生です」

むずって!
そんな真顔で感心されると、体がなんかむずってしちゃう!!

「まくら木は、まこと列車のまくらなのですね。
わたくし、改めて勉強させていただきました」

「だねー、詠語でもまくら木、sleeperって言うし」

「スリイパア――眠らせるもの、でございますか」

「わ! 意外っ!? ハチロク詠語苦手だっていってなかったっけ?」

「はい。けれどこの言葉は、わたくし、仲国で学んでまいりましたのです」

「チューゴクで? エイゴを? ドユコト?」

「Z49列車、軟臥車を避け、あえて硬臥車での旅をいたしましたとき、西瓜さんから」

「ナンガシャ? コーガシャ?」

「はい、つまり一等寝台車と二等寝台車」

「シンダイシャ!」

I see! オリヴィ理解した!

「そっか! それもおんなじ sleeperだもんね!」

;おしまい

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