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3分で読めるレイルロオドのお話「みくろの動物飼育心得」&WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第19話シーン2ネーム&字コンテ

まだまだ残暑は続きますが、夕方ともなればだいぶ秋めいてまいりました。

TVアニメ『レヱル・ロマネスク2』の
10/5 25:00~ 東京MX様での放送開始も、じわじわと近づいて来ております。

フィールドレコーディングがテーマ、というところにご反応くださる専門家の方もちらほらいらっしゃるようで

非常に嬉しく感じると同時に、緊張もまた覚えております。

視聴者のみなさんに楽しんでいただけ、その上で、専門家の方のチェックにも耐えうる台本を書けておりますこと、いまはひたすら願うばかりでございます。

わたくしが現在進行系でこつこつと台本&ネームを書いておりますWEBTOON作品「レヱル・ロマネスク0」の方は、
先日公開の第19話「動物園のレイルロオド」のシーン1

に続きまして、本日はシーン2を公開させていただきます。


みくろ登場、でございますね。

ハチロクとみくろの初対面が、8620走行前に発生。
これが果たしていかなる物語を引き起こしていくものなのか、どうぞご期待いただけましたら幸いです。

ということで、本日の短いお話は、飼育員としてのみくろにスポットをあてたものにしてみたいかと思います。
タイトルは「みくろの動物飼育心得」。

どなたにも無料でお楽しみいただけるお話となりますので、よろしければどうぞご笑覧いただけますと幸いです。

■みくろ■


雄武田市動物園で働くレイルロオド。
旧帝鉄時代の相棒8620形38696号蒸気機関車は、
同園で保存機となりながら、みくろを見守っている。

■ハチロク■


御一夜鉄道8620専用レイルロオド。
一番ご近所にいる妹機であるみくろを気に入り、
会いにいけそうな機会があるときには必ず会いに行くようにしている。

■「みくろの動物飼育心得」■

(あらすじ)
鉄道のお仕事と全く違うであろう、動物園のお仕事。
それがいかなるものなのか、
ハチロクはみくろに尋ねます。

///

「案外似てるところも多いんです」

「そうなのですか?」

「はい、例えば早起きがマストなところとか」

言われてみれば、なるほどとすぐに思います。
動物園のお仕事は、生き物と直に触れ合うお仕事。

動物たちの目覚めは夜明けと連動していそうな気がしますし……
朝は確かに、相当早くなるでしょう。

「あと、4Kなとこもおんなじです」

「よんけえ?――とはいったい」

「はい。キツイ、キタナイ、キケン、クサイ」

「まぁ、そのような言葉があるのですか」

キツイ、キタナイ、キケンまでは完全に同意です。
しかし――蒸気機関車乗務にクサイ部分などまったく無い気がいたしますが。

「あははっ! ハチロクおねえさまの場合は、『ケムイ』ですね。最後の1K」

共感がふんわりつたわったのでしょう。
ケムイ――なるほど。石炭の燃える煙の匂いは、感じ方によっては確かに、クサイのかもしれません。

「……動物園の『キケン』は、やはり動物絡みなのですか?」

「です! 大動物とかは近くにいくだけでも命がけになっちゃいますもの。
潰されてでもしたら、よくて骨折、下手すると命にかかわるってみくろ、知ってます」

「ああ……」

知っている、というのなら、きっと身近にそのような痛ましい事故があったのでしょう。
……鉄道の現業職も、常にキケンと隣り合わせ。
見聞きしあるいは経験してきたいくつもの痛ましい事例が頭をよぎり、暗い気持ちに――ああ、いけません。

「よんけえと早起き以外はどうなのですか? 鉄道と動物園で似ているところ」

「人間さんたちとの関係が、すっごくすっごく大事なところも鉄道のお仕事と似てるっ」

勢いこんでそういって、パチパチ、みくろは瞬きします。

「――ううん、鉄道よりもっと大事になってます。そこのところは」

「もっと大事――」

対人関係、周囲との調和。
それが大事なのは、どの職業でも共通そうに――ああいえ。

人間の方たちとの関係でときにうまくいかないことがあっても、
鉄道業なら他のレイルロオドに助けてもらうこともできますが――

「…… 一人だけ、だからですか? みくろの周囲には頼れるレイルロオドがいないから」

「あ、そうじゃなくって、真似されちゃうんです」

「真似? ……誰に、何をです?」

「ええと、みくろはお猿さんたちをメインに担当してるんですけど――」

ひょこ、ひょこ。
足をかすかに引きずりながら、みくろは小さな猿たちが暮らしている空間の中へと入っていきます。

「例えばですね? みくろがこうして――」

(カンカンカン!)

なにを思ったかみくろがいきなり小枝を拾い、木の幹を叩きはじめ――っ!!?

(カンカンカン!)
(カンカンカン!)
(カンカンカン!)

――なるほど、真似です。
みくろに続きでもするかのように、あちこちで、小さな猿が小枝を拾い、木の幹を叩き始めます。

「おーしまい!」

騒ぎを終わらせるためでしょう。
聞こえよがしにそういって、みくろは小枝を投げ捨てます。

「人間関係とかも、そういう感じになっちゃうんです」

「……人間関係がギスギスすると、猿たちも喧嘩を始めるのですか?」

「そんな感じです。だからいつでも、少なくともお猿さんたちが見てるとこでは、絶対にみんな仲良くしてなきゃダメですし」

ふっと、みくろが笑います。
そうしてゆっくり歩きだします。

(ひょこ ひょこ)

「そうして仲良くしていると、素敵なことも起きるんです」

「素敵なこと――まぁ!」

(がしっ)

黒いお顔の、みくろより少し身長が低いくらいのお猿さん。
そのこがみくろに、肩を貸します。
みくろの足が不自由なのを、支えてくれます。

「……それも、どなたかの真似なのですね」

「はい、職員さんたちに助けてもらってたらいつの間に、このこもやってくれるようになって」

大きな段差。
それを、みくろは、肩を貸されて越えていきます。

「……周囲に誰もレイルロオドがいなくても、みくろ、あなたは一人ではないのですね」

「はい! あ! もう一個ありました、同じとこ」

弾ける笑顔でうなずいて。
みくろはわたくしに――大きな声で伝えてくれます。

「鉄道のお仕事も動物園のお仕事も、とってもとっても、楽しいです!!」

;おしまい

///

――TVアニメ『レヱル・ロマネスク2』にも新規のレイルロオドたち、
続々登場してまいりますが、それぞれの背景までは本編中にとても描写しきれません。
ので、短いお話でそのへん適宜、フォローしていけたらいいなと思います。

もちろんWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』でも、
そう展開できる機会では、目にみえる形でキャラクターたちを
積極的に、掘り下げていければと存じます。

そんな『レヱル・ロマネスク0』の過去話。

無償でご確認いただける0~7話のネームはこちらとなります。

よろしければどうぞご笑覧ください。

(それ以降のまとめはメンバーシップ特典です)

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【メンバーシップ限定記事のご案内】

『レヱル・ロマネスクnote』メンバーシップ『御一夜鉄道サポーターズクラブ』

にご参加いただきますと、レイルロオドたちにかかわる詳細な内部設定資料や掲示板機能などをお楽しみいただくことができます。

『レヱル・ロマネスクゼロ』の字コンテ掲載時には、その字コンテがネーム化されたもの、および推敲過程でボツになった未公開ネーム画像などがあるときには、そうしたものも公開していきたく思っております。

どうぞご参加ご検討いただけますと幸いです。

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