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3分で読めるレイルロオドのお話「ハチロクの仕事納め」&メンバーシップ特典記事「ハチロクの仕事納め(ハチロク視点)」

年の瀬ですね、みなさまはもうお仕事納められましたでしょうか?

2023年のわたくしはライフイベントが多すぎて、もろもろが遅れに遅れてしまって、仕事納めが12/31。仕事始めが1/1となることが確定してしまっております。

とはいえ、ギリギリ年内に、「どうしても片付けておきたかった案件」だけは片付けられそうなので、そこを遅らせることがないよう、ラストスパートかけていきたい感じです。

レヱル・ロマネスク的にも2023年は、サミットあり、レヱル・ロマネスク2あり、Originあり、WEBTOON版の連載開始あり――
と、盛りだくさんだったように思います。

2024年はどうなっていくものかさっぱりわたくしにはわかりませんが――
ともかくもいま進捗しておりますWEBTOON版。さらに面白い作品にしあげていけますように、ベスト尽くします所存です。

そんな感じでまだ積み残しもある&年末ムードの影響もあり、
新しいものを立ち上げるものなんとなく……みたいなモードに、わたくし入ってしまっております。

より具体的にいまの心境を説明しますと
「レイルロオド・マニアックスXX」を書き起こすのは、ちょっとしんどい――みたいな気持ちです。

しかしながら、同時に、「メンバーシップ特典記事」をどうしても書きたい、という気持ちもございます。

一年間継続でであれ、断続的にであれ。
メンバーシップにご参加くださり、メンバーシップ特典記事をお読みくださったり、掲示板やリクエストをご利用くださった方がいてくださった、ということは、このnoteを継続執筆するうえで、大変に大きな励みであり。

そこに対する感謝を、一年の最後の記事でもやはり示したい――とも思うからです。

「新しいことをはじめるのはしんどい」

「けど、メンバーシップ特典記事は書きたい」

――このふたつの気持ちがこころのうちでせめぎ合ううち、ひとつのアイディアが結実しました。

『なら、新しい形式のメンバーシップ特典記事を書けばいいのでは?』というのが、それです。

どなたにでも無償でお楽しみいただけます、そして本日これからも執筆いたします記事――3分で読めるレイルロオドのお話。

それのアペンド的な短いお話を、メンバーシップ特典で書く、というものです。

これですと、

・無償でどなたにも短いお話をお楽しみいただくことができ

・そこに追加されるエピソードを書くことで、お話をさらに深く切り込んで書くことができ

・メンバーシップ会員のみなさまには、上記の両方をお楽しみいただける――

という、いわば三方一両得的なことができるのではないかなぁ、と。

ので、本日は実験的に、上記構成で記事を執筆してみます。

まずは、無償でどなたにもお読みいただける「3分で読めるレイルロオドのお話」

これは「仕事納め」をテーマに、ハチロク双鉄で書いてみましょう。

タイトルは「ハチロクの仕事納め」。

――ぜひお読みいただけますと幸いです。

■ハチロク■




旧帝鉄8620専用レイルロオド。
現所属は御一夜鉄道。マスターは右田双鉄。
製造後100年を越え、いつ動けなくなってもおかしくはないという自覚とともに日々を大事に過ごしている。

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■ ハチロクの仕事納め ■

「……まこと、嬉しいことです」

「だな」

ハチロクの声が小さく震える。
感情を抑えようとして――それでもあふれる喜びが、僕にもひしひしと伝わってくる。

「わたくし、『仕事納め』なるものは、都市伝説の一種だと確信しておりましたのに」

「お前ほど長く鉄道の現業職を務め続ければ、まこと無理からぬことだよな」

年末年始は繁忙期。休みを取れる余裕などない。
機関士としてほんの数年しか――しかも御一夜鉄道という、閑散ダイヤのローカル鉄道で働いてしかいない僕でさえつくづく思うことだから。

「日々姫の成長のおかげですね」

「みくろも、凪もだ。僕らが完全に外れても、もはや何の支障も生じない」

「それはそれで、さみしいこととも感じますけれど――」

けれど。声が弾んでる。

「明日を。十二月三十一日を、丸々一日おやすみできる。今日で仕事納めができる。わたくし、まだ夢でも見ている心持ちです」

「ならばほっぺをつねってやろうか?」

「いえいえ、遠慮申し上げます。もしも本当にこれが夢でも、そんなことでおしまいにしたくはありませ――」

急に、ハチロクの言葉が止まる。
”え”の形に開かれたまま止まった口が、ゆるゆると、”お”の形へと変化していく。

「”納める”と”仕舞う”と、おなじような意味の言葉ですのに」

「ふむ? ああ――なるほど、似て非なるというか、互換性が無いというか……仕事仕舞い、とは、少なくとも僕らはいわんよな」

こくこくこく、ハチロクの頷きが、思考を加速させてくれる。

「納める……仕事納め、稽古納め、書き納め、読み納め、聞き納め――あとは……ああ、年貢の納め時、などという言葉もあるか」

「仕舞いの方は――手仕舞い、店仕舞い、早仕舞い……あたりでございましょうか」

「墓仕舞いという言葉もある」

「!」

ふと口をついた一言が、ハチロクをぎょっとさせてしまう。

「それは……いったいどのような」

「ああ、うむ」

永代供養だなんだをハチロクに説明しても、なかなか理解が難しかろう――ゆえ――

「お寺に借りていたお墓を、更地にしてお寺に返すこと。それが墓仕舞いだ」

「それは……つまりええと――」

なかなかイメージしづらいのだろうか、ハチロクの手がまごまご動く。

「お墓をおしまいにするから、墓じまい、なのですか?」

「だな。いや、そうか……”仕舞う”の方には、お終いにする、というニュアンスが含まれるのかもしれん」

「ああ!」

ハチロクもすぐさまうなずいてくれる。

「対して、納めるは、一時的な終了なわけでございますね? 一年のお仕事を納めて、また新しい年にそれを取り出す」

箱に納めて取り出すような手振りがイメージを強めてくれる。

「かもしれん。年貢などはまさにだな。せっかく納めても次の年にまた取り上げられてしまう」

「まぁ」

くすっと笑って、ハチロクの目がまっすぐまっすぐ僕を見る。

「納めて取り出してまた納めて。その繰り返しを繰り返しながら、わたくしたちは、少しずつお終いに向かっていっているのですね」

さみしげで、嬉しげな瞳。
ハチロクが”終わり”を口にするときに、しばしばみせる眼差しだ。

「――うむ」

それは摂理だ。
否定をできる筈もない――が。

「しかし、たとえお終いが来たとして。お前が仕舞った仕事なりなんなりは、別の誰かに取り出され、受け継いでいくものでもあろう」

「あ」

それは僕であるかもしれんし、みくろや日々姫であるかもしれん。
受け継ぐのが誰であろうとも――

「そうして、レールは繋がってきたのだろうし」

「……左様ですね。そうして、レールは繋がっていく」

ほっと、小さな小さな吐息。
僕の言葉は、ハチロクを納得……あるいは安心させたのかもしれんと、ふっと感じる。

「でしたら、ね? 双鉄様」

ブローチを、帽子を手早く整え直し、ハチロクがその背筋を伸ばす。

「いつか、気持ちよく引き継いでいただけますように。今日の、今年の最後の乗務も」

「うむ、見事に納め、仕舞うとしよう!」

汽笛一声。

そうして僕らは、ゆっくり動輪を回しはじめる。

;おしまい

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いかがでしょうか?

で、今回はこのお話の「ハチロク視点」のものを、メンバーシップ特典記事として書いてみます。

リンクはこちらです

よろしければどうぞ、あわせお読みいただけますと幸いです。

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【メンバーシップ限定記事のご案内】

『レヱル・ロマネスクnote』メンバーシップ『御一夜鉄道サポーターズクラブ』

にご参加いただきますと、レイルロオドたちにかかわる詳細な内部設定資料や掲示板機能などをお楽しみいただくことができます。

掲示板では「3分で読めるレイルロオドのお話」の主役レイルロオドのリクエストなども可能です。

また『レイルロオド・マニアックス』の掲載時には、紹介されているレイルロオドの設定画や三面図などの資料で存在するものを公開していきたく思っております。

どうぞご参加ご検討いただけますと幸いです。

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