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3分で読めるレイルロオドのお話「真闇の符丁、ハチロクの符丁」&WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第12話シーン3ネーム

先日公開開始いたしました
『レヱル・ロマネスク0』の第12話「経営資源」
シーン2のネーム&字コンテがこちらです。

続きましてのシーン3は

となります。

完全に日々姫ちゃん百面相回でございますね。

双鉄のひとことひとことに、
言葉よりもよほど正直に表情でリアクションしてしまう日々姫ちゃんを、
どうぞお楽しみいただけましたらと思います。

で。

わたくし勉強のために昨今のWEBTOON作品やマンガ作品を意識的に見ておりますのですが、
昨今の作品は、めちゃくちゃ「漫符」を使わなくなっておりますね。

漫符というのは

💢

とか

💦

とか――

いまではマンガ表現よりもむしろ、
いわゆるおじさん構文のメールの中で見かけることの方が多くなってしまっている、コレのことでございます。

WEBTOONにおける漫符表現が減ったのは、WEBTOONが基本的には分業制であり、作画の方の画力が高く。
漫符に頼らずとも、表情や仕草で豊かな感情表現ができるようになっているから――
なのかなとか、わたくしは思ったりいたしました。

とはいえ、全ては使い方かと思うので、漫符等も演出的に上手に使っていけるよう、
ひきつづき勉強重ねていきたく存じます。

そんなこんなで、本日の短いお話は「符丁」をテーマに書いてみたいと思います。

タイトルは
「真闇の符丁、ハチロクの符丁」

どなたにも無償でご覧いただけますので、よろしければどうぞお読みいただけましたら幸いです。

■ハチロク■

旧帝鉄8620形蒸気機関車トップナンバー機、8620専用レイルロオド。
現所属は御一夜鉄道。
マグロやグモという符丁のことはあまり解説したくない。

■右田真闇■

ハチロクのマスター・双鉄の養家である右田家の実質的な当主にして、
右田一酒造元の杜氏。
ヤマネコやオニという符丁についてはあまり解説したくない。

■「真闇の符丁、ハチロクの符丁」■

(あらすじ)
ぶつぶつとハチロクがひとりごちている謎の言葉たち。
それを符丁と気づいた真闇との間に、
ささやかな符丁談義が繰り広げられます。

///

「……この大崩れが続くようなら、明日はウキにするよう提言したほうがよろしい気がしますね」

「?」

「とは申せ、双鉄様は一人前のキシになるまであと一歩。少しでも習熟されたいところでしょうが」

「ありゃま、ハーちゃんロマンチスト」

「ひえっ!? あ、え? 真闇様?」

「双ちゃんのこと、ナイトと思うとるんねぇ」

「ナイト? ナイトと申されますと」

「言うとったでしょ? 双ちゃんを一人前の騎士にするとかどうとか」

「…………ああ!」

ようやく話がつながったように思います。
と、申しますか……お恥ずかしい。
わたくし、独り言を口にしてしまっておりましたのですね。

「双鉄さまがいずれ一人前になられるキシは、馬に乗り槍を構える騎士ではなくて――」

「ではのーて?」

「――機関士のことでございます。機関士の符丁、略号がキシというだけのお話で」

「あああ! 符丁! 業界用語の専門用語」

真闇様がぽん、と軽やかに手を打たれます。

「ほーたらさっきの『ウキ』やらゆーとったんも」

「運転禁止、でございますね。ちなみに、運休はウヤでございます」

「ああ、ウンテン・ヤスミね」

さすがは真闇様。
理解がとてもお早い――ああ、いいえ――

「あるのでしょうか? 酒造業界にもいわゆる符丁が」

「あるにはあるばってん、独自~ってものはあんまりなかかも」

「? 逆に独自ではない符丁とは」

「お酒はほら、昔からひろーに親しまれとるものやけん
……業界用語がすぐに一般化されてしまう感じゆーたらわかると?
たとえば、酒呑みを表す『左党』とか」

「あ、わたくしでも聞き覚えのある言葉です」

「昔の職人さんは右手にツチ、左手にノミを持ってお仕事しとったけん、
左手がノミ手。そこから酒呑み――飲み手はヒダリキキとかサトウとかいわれるようになったとよ」

「……随分と凝った符丁なのですね」

ウンテンヤスミでウヤの単純さとは、随分と違うように思えます。

「大酒飲みをザルいうんも一般化された符丁よね?
どぎゃん注いでも少しも残らんけん、ザル」

「なるほど」

「酔っぱらいを、トラいうんも一般化された符丁。
お酒をむかしは ”おささ” ゆーとったけん、
笹にまみれて暮らしているのは、虎ゆーて」

「うふふっ! でしたら幸せそうな大酒飲みさんはパンダちゃんでございますね」

「あはっ! 確かに」

クツクツと、おかしそうに真闇様が笑ってくださいます。

なんだか嬉しく、不思議です。
真闇様とお話するとき、双鉄様はいつも緊張されている――

ですのでわたくしもなんとなく、真闇様と打ち解けてお話するのは難しいことなのかと思いこんでしまっておりましたので。

「逆に、ハーちゃんの方にはなかと?
なにかこう、一捻りある感じの符丁」

「一捻り、でございますか――」

レッシャチョウでレチ
ウンテンシでウテシ
ハライモドシでハモ

……どれもこれも、ひねるどころか直球で――ああ!

「無札乗車のことを、『薩摩守』というのはいかがでしょうか?」

「サツマノカミ? ――ああ! タダノリ」

「で、ございます」

なるほどねぇと、真闇様が頷いてくださってます。
この調子でよろしいのでしたら――

「中抜き乗車――いわゆるキセルも、一般化された符丁ではございますけれど」

「あー! 言われたらキセル、キセル乗車。
どぎゃん語源か……うーん、ちょっとようわからんとねぇ」

「これはですね。中抜き乗車を意味する言葉でございます」

帝旺駅から逢坂駅まで全区間の切符を買わず。
例えば、帝旺-新箸と粋田-逢坂間だけの切符を予め買って用意しておく――

「中抜き乗車は、タバコを吸う道具のキセルと、構造がよく似ているそうで」

キセルは、竹製や木製の胴の両端に、火口と吸口がついている。

「つまり――『両端だけ金を使う』のでございます」

;おしまい

///

いかがでしょうか?

あまり絡みを描写できなかったキャラ同士も今後関わらせていきたいWEBTOON作品
『レヱル・ロマネスク』0。

無償でご確認いただける0~7話ののネームはこちらとなります。

よろしければどうぞご笑覧ください。

(それ以降のまとめはメンバーシップ特典です)

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